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第18章 それぞれの覚悟5

「お前達……何してる! 私の部隊は退却しろと命じたはずだ!」


そう言われた部下の1人が口を開いた。


「自分は大佐が間違った判断をしたとは思えません。我々の任務は違反者の処刑ですから、違反者を処刑まで護らなければなりません! 命令違反ではありません」


レインは険しい顔のまま言った。


「馬鹿者め。逆賊になるどころか、このままでは殺されるぞ」


「自分は任務中仲間とはぐれ、死を覚悟しました。そんな自分を助けに来てくれたのはレイン大佐でした。だから自分が命をかけるのはレイン大佐のためがいいのです」


「大佐は自分が病気になったとき、励ますだけでなく、戦地へ赴き、私の病に効く薬草を採ってきてくださいました。それがなければ私は死んでいたかもしれないと後に軍医から聞きました。その時からこの上官に私は絶対についていこうと決意したのです。大佐の選択が仮に私情であったとしても私は大佐の力になりたいです!」


次々にレインへの想いが告げられた。それは、本当に些細なことまで気を配る、仲間想いで優しい上官の姿を思わせた。


「部下のためにここまでする上官などいません」


「部下のことを何より1番に考え、信じてくれた大佐に私達はついていきたいのです」


「大佐に、恩を返させてください」


彼らは口々にそう言って羅剛神の剣と刀を交えた。


「お前達は、本当に馬鹿だ……」


僕はレインのことをほとんど知らないし、弟さえも殺そうとするという冷酷なイメージを持っていた。彼らの言葉に嘘はない。本当は仲間を何より大切にする優しい女性だったのだ。イアンを手にかけるという選択をどれほどの苦しみを抱えながら下したのだろう。きっと僕には想像もできないほどに苦しい決断だったのだろう。


 部下達は確固たる意思を持って剣を受けていた。レインを見捨てて逃げることもできるのに、彼らは自分の意思で留まったのだ。


「バカ者め。だが、そんなバカの力が今の私には必要だ。とにかく今お前達は時間を稼げ! 倒そうとはするな」


部下達は咆哮のような声をあげ、一丸となって羅剛神を押し返した。


「イアン! 早く行って!」


僕はイアンの元まで駆け寄ると、羅剛神の元から蔓を引っ張ってイアンと共にその場を離れた。僕らは目の前に伸びる道の先にいるであろう麒麟目指して駆け出した。


「おぉ、増えたぞ! なんと喜ばしいことか!」


「これから死ぬというのに、バカな連中だ」


「喜の羅剛神よ、もうよいだろう」


口々に喋る羅剛神から妙な気配がして、僕は少し首を傾けて後方を確認して見た。そこには信じ難いことに、それぞれの体を得た四体の羅剛神が立っていたのだ。


「イアン、羅剛神が四体に増えてる!」


「分裂したんだ。僕らが急いで麒麟を連れてこないと皆が危ない!」


僕は後方から響いてくる剣と刀がぶつかる音を聞きながら、湖に浮かぶ道を駆け抜けた。


 道の先にあったのは、オレンジに光る岩の壁に囲まれただけの小さな陸地。そこはただの空間でしかなく、何も無い。ただ光っているだけだ。イアンは背から飛び降りて周りを見回す。


「麒麟は? 麒麟はどこ?」


「早く麒麟を見つけないと、皆死んでしまう!」


辺りを見回してみるものの、麒麟の姿はどこにも見当たらない。


「出てきてよ! 皆の命がかかってるのに!」


麒麟がいる気配がないが僕達はここで諦めるわけには行かない。手掛かりがあるかもしれない。誰もいないその場所で僕らが次に聞いたのは、響き渡るレイン達の悲鳴だった。

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