第18章 それぞれの覚悟4
「やめろぉっ!」
武器がぶつかり合う音と同時にレインの声が辺りに響き渡った。イアンに振り下ろされた羅剛神の剣をレインが刀で受け止めた。火花が散り、レインは歯を食い縛る。今まで殺そうとしていたのになぜ、という僕の心の声が聞こえているかのようにレインが言った。
「イアン! もしかしたらウンディーネから聞かされたかもしれないけど、私はあなたの姉なの! 私は姉として何もしてあげられなかった。辛い想いばかりさせた。でもイアン、あなたが大好きだったの。だから、あなたは生きて!」
イアンを守ったのは屈強な指揮官ではなく、この世にただ1人のイアンの姉だった。目の前で羅剛神の剣を受けたレインの背中をイアンは見た。
「あなたは私を嫌いかもしれない。恨んでるかもしれない。1度も姉として寄り添ってあげられなかった。でもせめて一度だけでもイアンの姉としていさせて! 麒麟に会って、許しをもらって、あなた達2人笑顔で生きて!」
羅剛神は握っていた蔓を放し、足元に落ちていた剣を拾い上げると、2本の腕でレインの刃に力を加える。早くもレインの刀は押し負け始めていた。腕1本でレインと互角か、それ以上だったのに、2本に増えてしまったらとてもじゃないが敵わない。
「早く行きなさい! あとどれぐらい時間を稼げるか分からない!」
そう言うレインの背中にイアンは言葉をぶつけた。
「そんなわけないじゃないか!」
レインの刀を正面の喜の羅剛神がじわじわと押していく。
「姉さんは僕の大切な姉さんだよ! 僕が不自由なく生きるために心を殺して頑張ってくれたんじゃないか! 教えてくれた読み書きのおかげで本を読めたんだ。それだけで世界が広がったんだ。姉さんのおかげで僕はここにいるんだ!」
その声はたった一言さえもレインには届くことはない。踏ん張っているにも関わらず徐々にレインは滑っていく。刀を持つ手も押し返され始め、レインは眉間にしわを寄せた。
「あぁ、お前が妾に愛をくれるのかい? 自分から望んで来てくれるとは感激だ」
レインはさらに力を入れるがどんどん押されていく。羅剛神が一気に力を入れ、レインが押し負けかけたその時、もう一本の刀が止めた。レインの隣で共に羅剛神の剣を受けるのは、クランだった。
「クラン何してる! 早く撤退しろ。お前も命令違反になるんだぞ!」
そう追い払おうとするレインに、クランは動じることなく言った。
「俺は軍のためじゃなくレインのためだけにここにいる。俺はどんな選択をくだそうが、何があろうがレインの味方だ!」
羅剛神は笑いながら剣を持つ残りの腕を振り上げ、レインの表情が険しさを増した。イアンがそこにいては、レインは動けない。
「イアン! そこから離れて!」
「でも!」
羅剛神の剣が振り下ろされ、火花が散った。レインとクランに襲いかかった全ての剣がレインの傍に駆けつけた部下達の刀によって防がれ、羅剛神の手からレインを護っていた。




