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第19章 死闘2

 レインは何度も斬りこむ。負傷しているが、その痛みなどレインは全く感じておらず、刀の速さはさらに増していた。その中でレインは何度も仲間達の方に目線をやる。クランもまた喜の羅剛神との斬り合いに苦戦していた。圧倒的な腕力の差は同じ人間なら大差はないものの、ギリギリ目で追えるほどの速度を持った化け物相手にする今回ばかりは人間が不利なのは明確だった。


 部下達は防戦一方といったところで、互いに助け合い、何とか持ちこたえている状態だった。イアンとカラミーユが麒麟に会うことができれば二人は自由を得て羅剛神も封印できると考えていたレインは、部下の負担を減らし、確実に時間を稼ぐためにも悲の羅剛神を討たなければならなかった。レインでさえ倒せていない羅剛神を部下達が長時間相手にするのは難しいという力量を推し量った結果だった。


「せめて2体に減らせたら」


そうすれば軍内でも特に腕の立つレインとクランが部下達の加勢に回り、より時間を稼げるはずだが、目の前の敵がなかなかそうさせてはくれない。


「疲れてきたのか? 久しぶりに楽しめると思ったのに人間はこの程度か、悲しいな」


悲の羅剛神はそういって剣を交差させてレインに押しつけようとした。それを真っ向から受けたレインは、押し切られないよう踏ん張った。


「先程と同じ状況だな。学習しないとは残念だ。これで拙者の勝ちだな」


悲の羅剛神の圧倒的腕力に歯を食いしばっていたレインは、突然その場で回って悲の羅剛神の力を流して腕に斬り込んだ。


「この私が同じ轍を踏むと思ったか!」


刀が腕に当たった瞬間、悲の羅剛神の腕は砕け、破片が周囲に散った。腕からできた亀裂は体の中央まで深く刻まれ、悲の羅剛神は驚きの声を上げてレインを見た。


「残念だな。お前の腕は一部変色し、その部位だけ音も違っていた。つまり、お前の急所は心臓でも頭でもなく、体が脆くなった場所なんだ。その硬い体は強いようで脆い。少し亀裂が入れば簡単に崩壊する。私が何度もそこばかり斬り込んでいても、痛みも感じないお前は気づかなかっただろう」


立ち上がろうとした悲の羅剛神の足がもげ、顔面から地面に倒れ込んだ。


「なんと、拙者が負ける、とは」


レインはその場で刀を振り上げた。


「どれほど努力しようが、強かろうが、慢心した瞬間から刀は錆びる。そんななまくら刀では何一つ切れやしない。それに気づけなかったからお前は負けるんだ」


レインが刀を降り下ろす直前、悲の羅剛神は泣いた鬼の顔で言った。


「気づけぬとは、無念……」


レインの刃が悲の羅剛神の胸を貫き、亀裂は末端に向けて走るように広がると、やがて粉々になって崩れ去った。


 レインは刀を引き抜いてすぐに振り返った。クランもまた喜の羅剛神を倒し、残りは怒と愛の2体。レインはすぐに加勢にいこうとしたが、急に目眩と共に地面に膝をついた。そこで初めて体が異様なほどの疲労に見舞われていることに気がつく。ここで加勢に行かなければ既に創傷を受けている仲間を見殺しにすることになるのだと、刀を持つ手に力を込めるものの、先程の戦いで蓄積した疲労と衝撃の影響でその手は震え始めていた。


「頼む、もう少しもってくれ」


レインはそう言ってなんとか刀を握り直すと、部下達に追撃する愛の羅剛神に斬り込んだ。

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