第15章 ごめんなさい4
「独りぼっちで、暴力に耐えて、恐怖に耐えて、そのうち周りに頼らなくなって本心を悟られないよう笑顔でい続けた。そうだろう?」
「黙れ!」
気がつくと僕は叫んでいた。これ以上何も言わせない。僕が笑顔でいたのは僕が笑っていたかったからだ! そうなんだ。僕は強いんだ。独りが好きなんだ。
「僕はそんな単純じゃない。僕の目的はそんなことじゃない」
痛い。痛い。頭が割れる。どうしたらいい? どうしたら止まる?
すると、腰の剣に手が当たった。腰に挿してある2本の剣。
こいつを殺せば止まるのか? こいつが絶望すれば、苦しみに顔を歪めれば、頭痛は止むのか?
僕は剣を引き抜いた。額からは汗が噴き出して頬を伝っていく。次々にフラッシュバックし、頭痛はさらにひどくなって息苦しくなると自然と呼吸も荒くなる。体が何故か震えていた。今まで怖いなんて思ったこともないのに、死地に向かうのだって平気だったのに、どうしてこんなに取り乱してるんだ?
「人間つきつめてみれば単純なものだ。どんどん無駄なものをつけ足していくから複雑に見えるだけなんだよ。そうやって取り乱すのは図星だからじゃないのか? 本当は、誰かに助けて欲しかったんじゃないのか?」
助けて、お母さん。
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇ!」
蘇ってくる自分自身の声に対してなのか、マキノに対してなのかよくわからないが、声が割れる程叫んだ。うるさい。黙れ。違う。痛い。頭が割れる!
汗が垂れ、ふらつく体で何とか剣を構えた。
こんなの僕じゃない。そうだ。違う。殺せばいいんだ。こいつを殺せば戻れるはずだ。
「お前なんか殺してやる! いつも僕につっかかってきて邪魔なんだよ!」
マキノも腰の刀をゆっくりと引き抜いた。
「お前を切り刻んでレインの前に出してやる! ははは! あの女の顔が見物だな!」
絶対に殺してやる。殺せばいい。それで僕は戻れる。こんなの僕じゃないんだ。
「俺もバカだけど、お前もバカだよ、ニール」
マキノが哀れむような顔で僕を見る。やめろ。そんな顔で僕を見るな!
「お前のことは俺が止めるよ、ニール」
これ以上この男の声は聞きたくない。急に降りだした雨が体に打ちつけてきた。濡れるのも気にせず、僕は一気に飛びだし、剣を振るった。




