第15章 ごめんなさい3
不意に頭の中にフラッシュバックしてくる。邪魔者だと忌み嫌う家族の視線。血まみれの部屋。殺さないでと怯える戦隷の友達。常に聞こえる悲鳴。忘れていたはずの記憶が鮮明に呼び覚まされていく。どうして殺さなくちゃいけないの? 自分の声が頭の中に鳴り響くと同時に激しい頭痛に見舞われ、思わず頭を押さえた。痛い。痛い。なんだこの痛みは。頭が割れそうだ。
「俺と話してる時のお前はうざいとか、きもいとか言うけど明らかに自然に笑ってた。皆は良く思ってないみたいだけど、俺はニールが本当に悪いやつじゃないと思ってる。俺の弟ができたみたいに思えるんだ」
俺がマキノの弟? ふざけやがってこの男。
目眩がして何とか踏ん張ることで姿勢を維持する。
「ニール、お前はずっと殺し合いの中で生きてきたんだろう。旅に出る前、お前の生い立ちをたまたま聞いたんだ。お前は殺し合いの中で誰にも負けない強さを手に入れ、自分を買った連中全員を殺してその場所から逃げ出してきた。誰にも頼らず、ただ自分の力だけで生き抜いてきたんだろう」
毎日殺し合いで、いつ殺されるのかと思うと怖くてたまらなかったけど、ある日思った。ここにいる全員を殺せば僕は自由になれるんじゃないかって。それからは殺すことに躊躇いなんて無くなった。自由を手に入れるために強さがいる。毎日どうすればもっと強くなれるのかをいつも考えてた。連戦連勝。その内腕の立つ人間とも戦うようになり、更に強くなった。そして、周りの人間を片っ端から殺して自由を手に入れた。
辿り着いた村で僕は新しい日々を過ごそうと思っていた。僕が殺してきたのは殺さなければならない状況にいたからであって、殺したかったわけではなかったから。もう2度と殺さず、この村の人達みたいに幸せになるんだと思っていた。現実は違った。働いていた場所では毎日暴力を振るわれ、口喧嘩が絶えず聞こえ、助け合うどころか少ない食料を独占している人間もいた。思い描いていた幸せなんてどこにもなかった。無いのだ。そんなものは始めから。この世界を好きになれるかもしれないと思っていた。幸せな日々を過ごせると思っていた。そんなもの、幻でしかなかったのに。当たり前じゃないか。この世界は戦う事でしか成り立たない世界なのだから。でも、もしこの世界が戦わずに済む世界になったなら、好きになれるかもしれない。心から笑えるかもしれない。
マキノの声が頭の中で響き、否応なしに過去を呼び覚ます。




