第15章 ごめんなさい2
「あんたが止めないといけないのは羅剛神でしょ? まぁ無理だろうけど」
「はは、そうだよな。俺もそう思う。でも、俺はお前を止めに来たんだよ」
やはり理解できない。放置して歩きだそうとするがマキノは続ける。
「本当は止めて欲しいと思ってるニールを止めに来たんだ」
あまりにも見当はずれな言葉に僕は思わず吹き出した。
「マキノ、あんたって本当に悲しいほどバカだよね。だからいつまでたってもクランに追いつけないんだよ」
マキノは、間違いないと笑いだした。
「それは思うよ。俺はバカだから賢いあいつにはこれからも絶対追いつけない。まぁ、追いつこうとも思わないし。……でもなニール。複雑な感情やら考えがないってことは、逆に言えば1つの事に集中できるってことだ。邪念、邪推に惑わされることもなく、単純に前を見て純粋な自分を貫けるってことだ。それが案外難しいんだぞ」
誇らしげに開き直られてもイライラするだけだった。
「この僕が、マキノに止めて欲しいと思ってるって? はっきり言ってそれはハズレだよ。僕はそんなこと思っちゃいない。僕の事何にも分かってないよね」
マキノは迷うことなく首を横に振って笑顔で言う。
「いや、分かるよ。お前はただ誰かに愛されたかっただけなんじゃないか?」
愛? 何を言ってるんだこいつは。
「お前は俺と似てるんだ。俺の家は貿易商だったんだけど森を移動している時に動物に襲われて死んだ。俺は人買いに捕まって、売り飛ばされたのさ。朝から晩まで働かされて、ずっと独りぼっちだった。周りばかりが幸せそうに見えて、自分はずっと寂しくて辛くて、そんな弱い自分も嫌で隠すために笑って……」
マキノは遠い目をして頭上を見上げた。
「本当に辛い日々だったけど、俺はこのままは絶対に嫌だって思って、ある日飛びだしたのさ。そうしてレインやクランに出会った。レインからは最初少しは笑えって怒られたよ。俺がずっと本心隠して笑ってるのが気になってたらしい。びっくりしたけど、あの時は嬉しかったなぁ。俺にも見てくれる人間がいるんだって思ったらすごい安心した」
「長々とうっとうしいんだけど、何が言いたいんだよ」
くだらない話を聞かされて、もううんざりだった。僕にどうしろって言うんだ?
「俺は仲間がいたから苦しい日々を終わりにできた。だから、俺は今苦しんでるニールの仲間として力になりたい。こんなこと本当は望んでなかったはずだ。でもこうして問題を起こすしか誰かの目に映る方法を思いつかなくて、その一方で誰かに止めて欲しいって、思ってたんじゃないか? イアンを苦しめようとするのも本当は仲間がいるのが羨ましかったからだろう。誰にも愛されなくて辛かったからこそ、愛されて幸せになっていくイアンが妬ましくて、自分も愛されたかったって思ってたんだろう? そうでなければ、羅剛神の封印を解いて世界を壊すだけで良かったはずだ。お前の最終目標は羅剛神に世界を壊してもらい、新しい世界を作る事。それは、自分を愛してくれる平和な世界が欲しかったからじゃないのか?」
なぜか急に心臓の鼓動が速くなった。なぜ僕は焦っているんだ?
「黙れ。僕が、この僕が羅剛神復活を望んでないって? 誰かに止めて欲しくてやったって? バカじゃないの?」




