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第14章 ニールの願い2

直後、イアンは目を見開いてニールを見た。あのレインがイアンの姉? 何度もイアンを殺そうとしてくるあの人がイアンの姉だなんて、そんなのとても信じられない。


「びっくりするのも無理ないよね。だってレインはイアンと腹違いの姉だから顔も似てないんだ。レインのお父さんがウンディーネたぶらかして麒法を破って、子供が出来ちゃったから二人ともポイッて捨てちゃったんだ。そりゃウンディーネも怒るでしょ。イアンが生まれたせいで捨てられることになったわけだし。で、ウンディーネはイアンを殺そうとしたけど君はレインに助けられて何とか生き残ったってわけ。ま、結局その後のごたごたのせいでイアンも軍に正体を知られることになったんだけど。あの鬼のレイン大佐が一生懸命頭下げてイアンを助けたらしいけど、その代わり君の姉だと言うことは秘密にしなきゃいけないし自分の父親を処刑しなくちゃいけなくなったんだって」


それ以上イアンに何も聞かせたくなくて僕がニールに突進するが、ぶつかる寸前の所で難なく避けられた。ニールはそんな僕をクルクルと回りながら無視して続ける。


「イアンのために自分の父親の首をはねて、軍からの給金を村人にあげてイアンの面倒を見てもらって、休日はイアンの所に行ってこれから困らないように文字の読み書きを教えて……。すごい弟想いだよね。でも、そんな大切な弟をなんで殺そうとしてるか知ってる?」


ニールはジャンプして近くの樹に飛び移ると、木の枝を伝ってイアンの傍まで走っていった。僕は追いかけたけれど、蹄では樹に登れない。僕の頭上でニールは笑顔で言う。


「理由はね、イアンが軍に捕まって国に連行されれば、待っているのは処刑ではなく幻属の血が混ざったその体の研究と実験だって分かってるからだよ。ま、軍上層部がイアンを欲しがる気持ちもわかるよね。だってその体はベースが人間だよ? 幻属に触れずに幻属の力が手に入れば国も安泰。お国のためにするのはいいけど実験される側は苦しい苦しい日々が待ってるわけだ。自由な時間もなく毎日毎日体をいじくられる日々。考えただけでも恐ろしいよね。死ぬよりも辛い苦しみをイアンに強いるなんてできない、だっけ? レインが言ってたなぁ。本当は助けたいし、姉だって教えたいけど、殺される時に姉に殺されるんだーって思いながら死ぬなんて酷なことはしたくないから秘密にするんだってさ。大切にしてきた弟を、自分の心を殺して殺そうとしてたなんて本当に感動だよ」


ニールがわざとらしく目元に手を持っていき、泣いてるマネをする。


「レインは秘密にしたいって言ってたけど、僕個人としてはちゃんと家族を再会させてあげたいからイアンに教えてあげようと思ったんだよ。ふふ、いい報告でしょ? どうする? 殺されてあげる? 逃げ続ける? それともいっそレインを殺して楽にしてあげる? もし捕まったらもちろん僕が会いに行ってあげる。どんな実験されるか楽しみだな。だって君は新しい兵器を生みだすか、兵器そのものになる可能性を秘めてるんだから」


僕はたまらなくなって樹を蹴ったがニールは笑いながら場所を変え、笑った。


「イアン、この世界って残酷でしょ? 君は母親に憎まれ、父親に捨てられ、今度は姉に殺されようとしてる。この残酷な世界を作り直したいっていう僕の気持ち分かるでしょ?」


楽しい話でもするようにニールはイアンに話しだした。

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