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第14章 ニールの願い3

「僕は体が弱かったからいつも邪魔者でね、味方なんて1人もいなかったんだ。貧しい家で病院通いなんてただ金のかかるお荷物だからね。僕は結局親に売られ、買われた」


ニールは剣を抜くと、刃を日光に照らす。


「戦隷って知ってる? 簡単に言えば戦う奴隷のことさ。でも、買われた子供は何と戦うと思う?」


数秒空けてからニールは目で追いつけないほどの速さで剣を振った。いや、見た時には既に振っていた。近くにあった枝が切れてイアンの傍に落ちてくる。


「買われた子供同士だよ。自分達が楽しむためにたくさん子供を買ってきて、1つの部屋に閉じ込めて1人になるまで殺し合わせるんだ。そうして残った子供をまた集めてきて、また殺し合わせる。僕はそんなクズみたいな人間の元に買われた。毎日毎日、ラッパの音がしたら殺し合い。その日生きるために何人も殺して生きるのさ。僕はそうやって生きてきたからね、君ばっかり幸せになる姿なんて考えられないんだよ。何も知らずにぬくぬくと生きている人間を見ると虫唾が走る。他の人間の幸せなんか壊してやりたくなるんだ。だからね、その苦しそうな顔がたまらなく嬉しいよイアン。何をしたって立ちあがってくる姿が嫌いだった。君の希望をズタズタに引き裂いてやりたくてたまらなかった。君には幸せそうな笑顔なんて似合わない。そうだね、今みたいに絶望に歪んだ顔が一番似合ってるよ」


頭の中に蘇ってきたのは、まだベリトルが一緒にいて、ファンダラの遺跡を見に行った時の事だった。壁画に描かれていたものの中に手足を繋がれた人達がいた事を思い出す。ニールもまた、手足を鎖で繋がれていたのだろうか。幸せを憎むのも、恐ろしいほど強いのも、戦う奴隷として毎日生きるために戦ってきたから。それでも、ニールの横暴を許す事はできない。なぜなら、ニールは自分のたった1つの想いのために羅剛神の封印を解き、世界中の罪もない命を危険にさらしているのだから。


 ニールは満足そうにうっとりとした表情を浮かべた。


「この世界は皆イアンの存在を消したくてたまらないんだよ。母親も、父親も、実の姉でさえも、皆がイアンに死んで欲しいのさ」


ニールは高笑いしながら、ショックのあまり固まったままのイアンを見た。


「じゃあ、報告に来ただけだから僕はそろそろ行くね」


寝起きのように大きく伸びをしてから


「良かったねイアン。今なら大事なお姉ちゃんに殺してもらえるよ!」


と、無邪気な笑顔をイアンに向けてニールは去っていった。


イアンが膝から崩れるように座り込んだ。ようやく出会えた母親はイアンを憎んで殺そうとして、僕らを追ってきたレインがイアンを助けた姉。顔を歪めるわけでも眉間にしわを寄せるわけでもなく、イアンはただ無表情のまま涙を流していた。そして、急に言った。


「僕、なんて事を言ったんだろう」

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