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第10章 休息2 

 光の出所に辿り着いた僕は岩の中に広がる神秘的な空間に絶句した。外見からは分からなかったが、岩の中は完全に空洞になっていて、内部には青緑に光る天然の水晶のようなものが幾つも生えるようにして並んでいた。足場は平らでイアンが休むには丁度良い。


 僕は慎重に膝をつき、背中で苦しそうにしているイアンに声をかけた。


「イアン降りられる? 横になった方が楽になるよ」


イアンは返事することなくゆっくりと体を傾け、地面に転がるように落ちた。立ち上がる体力がないようで、イアンはそのまま肩で息をしている。


額からは玉のような汗が吹き出し、息も苦しそうだ。変な物でも食べたのではないか、とか、軍人達と戦った時に怪我をしていたのではないか、とか、考えられる事は順を追って思い出していった。そうして考えているうちに、ある1つの可能性に気がついた。それは、力を使った疲労だ。思い返してみれば、イアンが体調を崩したのは決まって力を使った後だった。寝込むこともあったのはイアンにとってそれだけ疲労が蓄積していたという事なんじゃないのか? もしそうだとしたら、軍人達とこれ以上戦うのはイアンにとって良くないことになる。


「大丈夫。安静にしていれば直に良くなるよ。それに私にはあんた達が言うことがわかるから遠慮せずに普通に話しておくれ」


老婆の目は焦点が合っておらず、一目で盲目なのだと分かった。それにも関わらず、老婆の動き方はまるで景色が見えているかのように自然で、僕らの声が聞こえるとも言っている。この老婆はいったい何者なのだろう。


「本当に聞こえてるの?」


半信半疑で老婆に尋ねてみると、聞こえていないにも関わらず老婆は笑った。


「まぁ、厳密には聞こえているというよりも話すことを見たと言った方が正しいだろうね」


戸惑うのは僕の方だった。相手はただの人間だというのに僕の言葉に返事をするなんて考えられない。聞こえるというより見たというのは一体どういうことなのだろうか。


「色々気になるだろうが今は休みなさい。ここには誰も来ない。来る予定がないからね」


老婆は腰を気遣いながら座り、まるで目が見えているかのように周りの壁を見回した。


「綺麗だろう。ここは光岩の中。大戦中に作られた自然に擬態できる兵士たちの寝床。この空洞になった場所は毎日絶えず光っている。もう誰も作れやしないがね」


焦ることなくゆっくりと話す老婆に僕は尋ねてみた。


「どうして僕らを助けたんです?」


「今は待ちなさい。あと5時間と19秒でその子も目を覚ますから、その時にまとめて話すよ。でないと同じ話を2度もする羽目になっちまうからね。あんたもお休み」


不思議な老婆は人の姿をしてはいるけど、今まで見てきた人とは何かが違った。あまり一緒にいるべきではないのかもしれないが、怪しんだところでイアンがこの状態ではどうしようもない。僕は静かに目を閉じた。

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