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第9章 レインの真実2

顔を歪めながら言う様子を見て、レインは力なく笑った。


「すまない。お前にそこまで心配させるなんてリーダー失格だ。お前もそう思うだろう? クラン、お前は知らないだろうが、イアンは私の弟なんだ」


クランは驚いて顔を上げた。レインは小さく息をついて目を伏せ、倒木に腰を下ろす。


「腹違いだが私の大切な家族。話せば長くなるが、少し昔話を聞いてくれるか?」


足元を遠い目で見つめながらレインは話し始めた。


「私の家族は父さんと母さんの3人家族だった。父さんは情が深くて家族を大切にしてくれた。突然旅行とか言いだして母さんと一緒によく困らされたが、幸せな日々だった。ある日、医師として各地を回っていた母さんは、大戦の影響である有毒地域に足を踏み入れて命を落とした。母さんの死に、父さんはひどく落ち込んでね、毎夜町へ行くようになった。母さんを本当に愛していたから、それこそ潰れてしまいそうだったんだろう。日を追うごとに父さんは元気を取り戻してきて、私は時間が父さんの心の傷を癒したんだと思ってたが、ある日父さんが真っ青になって帰って来た。父さんはウンディーネと毎晩会ってて、ウンディーネとの間に子供ができてしまったんだ」


「ウンディーネって、まさか――」


レインは力なく笑って頷いた。


「幻属だよ。父さんは麒法を破ったんだ。幻属ってやつは不思議な生き物で、子供を身ごもればその日に産む。父さんはウンディーネが産もうとした時に初めて自分が犯した罪に気がついた。それで、情けないことに逃げてきたんだ。麒法を破れば待つのは処刑だからな。父さんが逃げるとウンディーネはひどく怒ったらしい。その話を聞いて、私はどうしてもその子供が気になって湖を見に行った」


そこまで言ってレインは頭上を覆う枝葉の間から見える夜空を見上げた。


「あの日の事は今でも鮮明に覚えてる。立っていた女は狂ったように叫んでて、湖の縁に生まれたばかりのイアンを置いて、首を絞め殺そうとしていた。私は思わずイアンを助けて家に逃げ帰ったんだ。大丈夫。樹に石を投げて気を引いたところでイアンを抱え上げたから麒法は破っていない。ウンディーネが水辺から遠くへ行けないことを知って、私達は水辺から離れた所に引っ越して3人で暮らすことにした。父さんとウンディーネの子供なんだから私の弟なんだ。私は絶対にこの子の味方でいようって思ったんだ。小さな手で私の頬を撫でてきて、本当に可愛くてたまらなかった。私はそのうち給金がいいことと、イアンを守る力が欲しくて軍に入隊した。母さんと同じ犠牲者を生みださないためにも、2度と大戦を起こさないためにも秩序を守るんだと思ったんだ。そこでクランと出会った」


レインがちらりとクランを見ると、クランは小さく頷いた。

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