第6章 魔石の力
深い森の中、軍人達は円形に集合していた。中央でレインが、肌を刺すような鋭い殺気を放ちながら倒木に足を組んで座っている。その目つきは怒りに満ちており、全員が何も言わずにじっと待っていた。
枝が折れる音が響き、全員が体を向けた。レインの目線も既に音の方向に向けられている。暗い森の奥から歩いてきたのは、無邪気な笑顔を浮かべるニール。まるで殺気にすら気がついていないかのように平然と歩いてくる様に、軍人達は自然とレインまでの道を空けた。
「お久しぶりというか、さっきぶりですね」
「よく笑顔で帰ってこれたものだな。何をしたかわかってるのか?」
普通なら聞くだけで震えあがるような殺気に満ちた声も、ニールは笑顔のまま受け流す。
「分かってますよ。僕がイアンを逃がしました。これでいいですか?」
何の躊躇いもなくニールは笑顔で言い、鼻歌を歌いながらレインの傍まで歩く。その様子をレインはじっと睨みつけており、空気は張り詰めている。
「でも、レイン大佐もイアンを殺そうとしてましたよね? 任務は生け捕りのはずなのに」
ニールが一度斜め上に顔を上げ、もう一度レインと目があった時には笑顔を浮かべつつも目は笑っておらず、声も低くなっていた。
「ラシャルブレイヴ大将の忠実な部下だと思っていたが違うようだ。目的は何だ?」
軍上層部を牛耳る白い髭を持つ男、ラシャルブレイヴ。ニールは以前からラシャルブレイヴが信頼を置く部下だとレイン達は聞かされていたし、ニール本人もそう公言していた。にも関わらず、命令に背く行為を平然と行っている以上それは嘘である。
ニールはレインから離れるなり普段の笑顔に戻り、人差し指を口につける。
「ふふ、それは秘密です。確かに僕はラシャルブレイヴ大将を欺いた。でもそれは僕にとって必要なことだったからですよ。そうそう、僕はレイン大佐がイアンにしようとしたことは知りません。レイン大佐も、僕がしたこと知りませんよね?」
レインが顔色も変えずにニールを見たまま黙ったのを良いことに、ニールは笑った。
「じゃあ、僕は辺りを散歩でもしてきますよ」
ひらひらと手を振りながらその場を後にしようとしたレインはニールに問う。
「お前はイアンを殺したいのか助けたいのかどっちだ?」
ニールは口元に手を当て少し悩んでから、腰に挿している2本の剣を愛しそうに撫でた。
「僕の目的のためには、イアンにまだ死んでもらっても捕まってもらっても困るんですよ。まぁ、言っても分からないでしょうがね。その愛とかいう愚かな感情に溺れた頭では」
頭を数回指でつつくようにして、ニールはその場を去っていった。




