第5章 聞けなかったこと2
「ははは! 思い当たることがあるんだろう? 本当はずっと思ってたんじゃないの? イアンは自分の事使えないって思ってるんじゃないかって! どうする? 助けたい? それでもイアンを信じて助けてあげたい?」
ニールは動揺する僕を見て高笑いし、やがて指をさした。
「イアンはこの方向に真っ直ぐ行ったら見えてくる、大きな樹の根の下に隠れてる。もたもたしてると見つかっちゃうから早く行ってあげた方がいいと思うよ。助けなくてもいいけど、助けないとイアンは殺されるだろうね。ふふ、せいぜい友達ごっこ頑張ってね」
ニールは笑顔で手を振りながら去っていくが、僕はそれどころではなかった。
僕は、捨てられるの?
飛び立っていく仲間達。取り残され嗤われる僕。独りぼっちの日々。蘇るのは辛く苦しい記憶ばかりだった。僕はどれほどイアンに頼りきっていたんだろう。そんな僕を面倒だと思っていたらどうしよう。ニールの言葉に根拠が無いと頭で理解しているけれど、疑ってしまう僕がいた。
「そんなわけないよ。あのイアンが、だよ?」
そう言ってみたものの、耳に聞こえてきたのは自分の物と思えないほどに弱々しい声だった。笑って済ませたかった。堂々とそう言ってやりたかった。疑ってしまう自分に、言い聞かせるように繰り返す。
「そんなわけない。そんなわけない」
笑顔で傍にいてくれるイアン。何があっても僕を責めなかったイアン。飛べないなんて関係ないよと一蹴したイアン。
「あのイアンがそんなことするわけが――」
本人に訊いた事がある?
不意にニールの言葉が頭の中でこだました。
「訊いたことなんて、あるわけないよ……」
今にもかすれて消えてしまいそうな声だった。
「だって、僕が一番それを知りたかったんだから……」
ずっと怖くて訊けなかった事なんだから。




