↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/104

第5章 聞けなかったこと

 イアンとはぐれてしまった。あの男のせいで僕はイアンを完全に見失った。驚くほど強かったベリトルが一緒なのだからまず無事であるとは思うけど、僕はこれからどうしたらいいんだろう。イアンを探しだす方法が全く思い浮かばず途方に暮れて辺りを見回したその時、視界の隅で何かが動き、僕はすぐさま顔を上げた。


「いたいた!」


と、明るい声で言いながらこちらに向かってくるのは先ほど襲いかかってきた軍人の1人。僕が動きだす前に、その男は言った。


「イアンと一緒にいたペガサス君でしょ?」


その言葉に僕は驚きを隠せなかった。この人間は今、僕に話しかけたのだ。それは麒法違反と捉えられてもおかしくはない行為だというのに、微塵もためらいはなかった。


「イアンは生きてるよ」


この言葉を聞いた瞬間、直前の疑問など急にどうでもよくなった。その一方で、事実である証拠はないとその場を離れようとした僕の目の前に、男は既に立っていた。


「僕はニール。君の大切な友達イアンの逃亡を手助けしてあげた命の恩人だよ。イアンがどこにいるのか知りたい?」


疑わずにはいられないが、イアンの居場所を知っているという言葉はないがしろにはできなかった。もし本当だったら、イアンと合流ができるかもしれない。そんな希望を抱きそうになりながらも、頭の中は罠だと警告している。迷っている僕に、ニールは不気味な笑みを浮かべて詰め寄ってくる。


「ねぇ、知りたい?」


本能的にこのニールという男から離れるべきだと思ったが、それでもイアンに再会できるかもしれない希望を捨てきれず、僕は必死に逃げ出したい気持ちを押し殺して留まった。


「ふふ。素直だね。そんな君に僕からアドバイスをしてあげよう」


先ほどの不気味さなど嘘だったかのように、ニールは急に優しげな笑みを浮かべた。内心ほっとする僕に、ニールは人差し指を立てて言った。


「ズバリ、君はそのうち捨てられるよ」


表情と話す内容のギャップが大きく、一瞬理解できなかった。頭の中でニールの言葉を繰り返して理解するが、内容があまりにもバカバカしすぎて思わず失笑する。イアンが僕を捨てるだって? 僕らのことを何も知らないのに、よくもまぁそんなことを言えたものだ。


「あぁ、そうだよね。そんなことあるわけないって思うよね。知ってるよ。君、飛べないんでしょ? イアンもその事を知ってるし、そんな自分を受け止めてくれたんだって思ってるんだよね。でも、本当にイアンは受け入れたのかな? 飛べない事をどう思ってるかって本人に訊いたことがある? イアンは優しい子だから、もしかしたら気にしないとか言ってくるかもしれないけど、それって本心だと思う? 追われた時に一度でも飛べればよかったのにって、足手まといだって、思わなかったと思う? 人間は弱い生き物だから、いざ自分が窮地に立たされれば平気で裏切るよ。今のところ意思疎通ができるのは君だけみたいだからいいけど、イアンは文字が書ける。これから先色んな人間と出会えば、おのずと読み書きができる人間と出会う。その時、リスクを冒してでも君をとるのか、平穏な生活と人間の友達を得て楽しく過ごすのか、どっちをとると思う? まさか僕をとる、なんて思ってないよね? 理解者が現れたらきっと迷うよ。君は人間じゃないし、何より足手まといだしね。君が邪魔になるよ。いや、もしかしたら、もう迷惑だと思ってるかもしれないよ? まぁ、遅かれ早かれ健気にイアンを信じながら君は捨てられるんだろうね」


捨てられる? イアンが、僕を捨てる? 体が震えていた。心のどこかでずっと思ってたんだ。イアンは僕の事をどう思ってるんだろうって。イアンは僕が飛べない事を責めたことは無かったけど、本当は飛べない僕をどう思っていたんだろう。突然人間の友達ができたら、僕は用済みになっちゃうのかな。僕は、僕達は、友達じゃ無くなっちゃうのかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。