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第4章 レインとイアン2

レインがイアンの首めがけて刀を振り下ろした。


「イアン、逃げろ!」


悲鳴のような声でベリトルは叫んだ。レインの刀がイアンの首を切り裂くかと思われたまさにその時、金属がぶつかる音が響いた。刃は首に当たる寸前の所で止まっている。


「危ない危ない。大切な違反者を危うく殺してしまうところですよ、レイン大佐」


無邪気な子供の様な声がイアンの傍から発せられた。レインの刀を受け止めるのは交差した2本の剣。剣の持ち主へゆっくりとイアンは目線を移す。そこに立っていたのは、2本の剣を操るにはあまりにも細い、小柄な体を持つ青年だった。緊張感のない穏やかな笑みを浮かべながらも、彼が握る剣はピクリとも動かない。


「あれあれ、お2人ともどうされたんですか? 部下を待機させてから姿が見えないと思って追ってきてみれば……。違反者は生きたまま国に連れ帰るのが今回の任務でしょ?」


レインは刀に込めた力を抜くと、青年を睨みつけながら納めた。


「皆さん、突っ立ってないでさっさと縄の用意してくださいよ」


青年に言われると、樹の陰から次々に軍人達が現れた。


「やれ」


レインの一言を待っていたかのように、軍人達は縄でイアンを後ろ手に縛り始めた。青年は満足そうに頷き、両手に握っていた刃渡り50センチほどの剣を同時に鞘に納めた。


「やぁ、もう少しで殺されちゃうところだったね、違反者イアン。君はこのニールが責任もって見ていてあげるよ。君の武器は、えーっと、これかな」


ニールは地面に突き刺さっていたベリトルを引き抜くと、持ち方や角度を変えて眺めた。


「いい剣だね。一体どこで手に入れたの?」


ニールは依然笑顔のままイアンに尋ねるが、イアンにしてみればレインに殺されかけていた事もあり、答えられる状況ではなかった。未だに理解が追いつかないまま、ただすがるようにレインを見ていたが、レインはすぐに目線を逸らした。心のどこかにあった、人違いではないかという期待が裏切られ、イアンは力なく俯いた。


「イアン捕獲成功、だね」


ニールが鼻歌でも歌いだしそうに嬉しそうに言うのを聞いて、イアンはようやく自身の状況を理解した。両手は塞がり、ベリトルもニールの手の中。気づかれないように周囲を見てみるが、逃げられるような隙はない。助言を請おうとベリトルを見るが、一言も発さずにただの剣のフリをしていた。


「まぁいいや。ほら国へ帰るよ。あ、でも、この人達に任せてたら国に着くまでにイアンの首と体が離れちゃうかもしれないね」


それは大変だ、とニールはイアンに明るく提案する。


「だから僕らは隊列の最後尾を歩こうよ。いいですよね? レイン大佐」


ニールの笑顔と、レインの鋭いまなざしがぶつかり合うこと数秒、レインが不満げに目線を外した。


「全員整列しろ。これより帰還する」


軍人達が整列し始めると、ニールはイアンを立たせた。


「さぁ、国に帰ろっか」


レインは列の先頭目指して歩きながら、ニールを用心深く見ていたクランにさりげなく近づいた。


「イアンに手を出すな。タイミングを見て私が殺す。いいな」


「了解」


クランは小さく答えながらも、ニールから一切目線を外さない。


「ふふ、悔しそうだね。どうしようもないおバカさん達。さ、僕らは最後尾を歩くよ」


ニールは満足そうに部隊を見ながら言い、ベリトルを鞘に納めて笑った。

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