第6回 「乱れ舞う、赤色」
カッパ・イート・マンとハナ、2人の前に異質な存在が迎え立つ。
赤髪のカッパ。人語を話すそのバケモノは、2人を困惑させた。
周辺の木々が揺れる。
気づくとそれはカッパ・イート・マンの眼前まで移動していた。
右手が少し形状を変え、5本の指先から伸びる爪はカッパ・イート・マンの左脚に全て突き刺さっていた。
足元にボタボタと血が流れ落ちる。
「クソが…」
カッパ・イート・マンは赤髪の顔面に拳を飛ばした。
赤髪は勢いよく飛ばされ、数メートル距離をあけた先に着地する。
首の角度が歪んでいるのを音を立てて元に戻し体勢を整える。
よろめきながら立つ姿から少し余裕が見える。
「あらあら、思ったより楽しめそうねぇ」
爪に滴る血を綺麗に舐めとり不敵に笑う。
「美味しいわよ〜アナタの血❤︎」
「てめぇは喰われる側だろうが」
2人は同時に地面を蹴りぶつかり合った。
赤髪の鋭利な爪に対し、カッパ・イート・マンはステンレス定規で太刀打ちする。
もはや彼の体の一部となっていた愛用の武器は、今もその硬さを失っていない。
一帯に激しい金属音が鳴り響く。
ハナは距離を取り戦いの行末を見守っていた。
「変わった人間もいるものね〜頭はもう人間のものじゃないのかしら?アナタのそれは喰べられない部分?」
「口数が多いぜ?焦ってんのかァ」
戦闘が進むにつれて速度を上げていく両者。
ハナの動体視力では、2人の位置関係と彼らが今どんな体勢でいるかを瞬間瞬間で切り取って認識することで精いっぱいだ。
その中でもただ少しだけ、カッパ・イート・マンの方が押されているように感じてしまう。
自分の思い違いであってほしいと彼女は切に願った。
攻防の読み合いが繰り広げられる。つい先ほど会ったばかりの2人は、お互いの戦闘スタイルをまだ充分に把握しきれていない。
当然相手の攻撃を全て防ぎ切ることなど不可能に等しく、次第に体の傷は増えていく。だが互いに致命傷は避け続けていた。
カッパ・イート・マンの後方、こちらを見るハナの姿が赤髪の視界に入る。赤髪はニヤリと笑いその場を離れハナの元まで走る。
彼女を人質に取り脅す作戦だろう。あるいは殺し動揺させるか。
しかしあの女の存在など彼にとって微塵も興味のないもの。どうなろうが心底どうでもよかった。
カッパ・イート・マンの行動プログラムに『人命救助』は組み込まれていない。ただカッパを喰らうためだけに作られた兵器。
ちょこまかと着いて歩き付き纏う存在など助ける義理もない。ましてやそのおかげで自身の戦闘を不利な方向に進ませるなど以ての外。
カッパ・イート・マンの視界の外で、赤髪の爪はハナの顔面を突き刺そうとしていた。
ハナの目に触れる寸前で鋭利な爪は下へと落ちる。見ると赤髪の体から手首ごと切り離されていた。超速で移動したカッパ・イート・マンによって斬られたのだ。
「あら…❤︎」
「急に目標変えて逃げ出すたァ癪に触る野郎だなァ」
カッパ・イート・マンは少し息を切らした様子を見せながら赤髪の顔を覗き込む。
赤髪は、そんな彼を蔑みながら呟いた。
「そんな簡単に乗っかるのね」
びちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃ。
激しい音を立て、カッパ・イート・マンの足元に血が大量に流れ落ちる。
赤髪の左腕が彼の心臓の位置を的確に貫いていた。
「ここはまだ人間だったのね❤︎あったかい…❤︎」
赤髪が腕を勢いよく引き抜くと、カッパ・イート・マンの腹部から内臓が飛び出る。
その後、頭部の隙間から血が噴き出した。
「残念ね❤︎もう少し楽しませてくれるかと思ったけど」
ハナを守る救世主は、彼女の目の前で膝から崩れ落ちそのまま地面に倒れた。
「……………………カッピー!!!!!」




