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カッパ・イート・マン ~EAT AND KILL~  作者: 藤宮きな


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第5回 「喰べる、殺る、喋る」

「大漁じゃねえかァ…」



 無機質な頭部に生身の肉体を携えた生物兵器がそう呟く。

 隣に立っていた少女には、その言葉が自分の緊張をほぐすための優しさのようにも感じられた。

 少女が彼の方を見ると、その姿はもう横には無く前方目がけて突進しているところだった。

 彼の機械化された後頭部には、数字の「3」の形をした刻印が大きく刻まれている。

 その下に無地のフードが風に靡いている。


 頭部前方が開きそこからおぞましい形状をした触手のような舌が2、3枚這い出る。

 カッパ・イート・マンは一番近くの目標目がけて飛びかかり、その勢いで頭部に喰らいついた。

 彼の獲物は、こちらに気づく間もなく頭を失った。

 ゴリゴリと骨の砕ける音を立てながらカッパの死骸を喰らうカッパ・イート・マン。

 次へ、また次へと目標を変え一帯のカッパを喰い殺しながら進む。




 カッパ…現代の科学ではほぼ解明できていないその血肉は、とても食べ物とは呼べない味だ。それはカッパを喰らうため作られた生物兵器『カッパ・イート・マン』とて同じこと。

 しかし、ただ目の前にある肉塊に喰らいつくしかない。それがカッパ・イート・マンの宿命。本能。


 彼が喰い殺したカッパの群れは肉塊となり既に数えきれないほど地面に横たわっている。

 ハナは物陰から必死に追いついていくしかできなかった。






 ———しばらくして、辺りに静寂が訪れた。

 先ほどまで群がっていたカッパの姿は見当たらず、カッパ・イート・マンは道路の中央に立ち尽くしている。

 遠くから聞こえていた人間のものらしき叫び声も、もう聞こえてこない。避難したのか。それとも全員殺されたのだろうか。


「カッパ・イート・マン!」


 ハナは息を切らしながらカッパ・イート・マンの背後に近づく。


「…てか、やっぱ呼び方変えない?長ったらしいというか」

「じゃあ呼ぶな」

「…カッパ・イートさん?とか」

「変なところにさんを付けるな、■■すけ女」

「あーまた汚い言葉使ってー」


 ハナは少し頭を抱えてからまた口を開く。


「カッパ・イート…カッパイー…あ、かっ、カッピーは?カッピーはどう!?」


「…勝手にしろ」


 思ったよりすんなり受け入れられた呼び名に、少し物足りなさを感じながらもハナは少し笑う。


「わかった!じゃあカッピーね!改めてよろしく!カッピー!」


 カッピーからの返事はなかった。
















 しばらく道を歩いたところで、2人は辺りの空気が変わったことに気づく。

 正確には、カッパ・イート・マンが本能でそれに気づき、その様子にハナが同調したようだった。


 少し離れた位置から水を含んだ足音が近づいてくる。

 2人を発見した“それ”は、歩みを止め舐めるように見つめてきた。

 頭部に生えた髪は深紅に染まっており、体表も全体的に赤みがかっている。

 前例通り視覚器官は無いようだが、口元には他と比べて少し品があり、姿勢のいい立ち姿からもより人間に近く見えた。

 何より、布や金属であしらわれた装飾品を何点か身につけている。人間の服を模したのだろうか。

 しかし、それ以前に2人は、今までの個体とは違う何かを感じ取っていた。

 目の前に立ちはだかるのは確実にカッパだ。この道中で何度も目にしてきたバケモノ。だがそれらとは決定的に何かが違う。








 それは、自分の髪のサイドを指で少しいじった後、口を開いた。



「あら、もうここらの人間は全て排除したと思ったのだけれど…。アナタたち、どこから来たのかしら?」





 ハナは思わず、言葉にして口に溢す。



「しゃべ……った、?」

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