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終電で知らない駅に降りた。ホームにいた全員が「明日死ぬ人」だった。  作者: 不可思議ラボ


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6/7

第6話 僕はもう二度、同じ夜をやり直していた

「最終選択まで残り1回」

電光掲示板の文字を

僕は黙って見つめていた。

僕の名前の横には

22時09分。

一年前に死んだ少年を

この世界へ戻した代償として

僕が死ぬ時刻だった。

「選ばないでください」

少年が僕の袖をつかんだ。

「僕はもう死んでるんです」

「だから戻るだけです」

「戻るって言うな」

思わず強い声が出た。

少年の手が離れる。

「一年前に助けられなかった」

「そのために僕は

この駅まで呼んだんだ」

「でも」

少年が何か言おうとした瞬間

駅員が口を開いた。

「まだ思い出していませんね」

「何をですか」

「最初の夜のことです」

僕は駅員を見る。

「昨日じゃないんですか」

駅員は首を横に振った。

「あなたが覚えている昨日は

二度目の夜です」

意味が分からなかった。

「では今夜は?」

「三度目です」

少年が息を呑んだ。

電光掲示板が点滅する。

再試行回数

3回目

「待ってください」

「第2話では

2回目だったはずです」

「その通りです」

駅員は淡々と答える。

「一度目の結果を受けて

あなた自身が再試行しました」

「二度目も同じです」

僕自身が?

「僕にはそんな記憶がない」

「再試行すると

乗客の記憶は消去されます」

「ただし完全ではありません」

少年が呟く。

「だから僕は

少し覚えていた……」

駅員が頷いた。

僕は入場券を握った。

「最初の夜に

何があったんですか」

駅員は

ホームの時計を見上げた。

「ご自分で確認してください」

照明が消えた。

次の瞬間

ホームに僕がいた。

いや。

目の前にいるのは

過去の僕だった。

最初の夜。

五人の死亡予定者。

そして少年。

状況は今と同じだった。

過去の僕が叫んでいる。

「この子を助けてください!」

駅員が答える。

「できません」

「彼はすでに死亡しています」

「なら僕が代わりに死ぬ!」

僕は息を止めた。

最初から

同じ選択をしていた。

駅員が

過去の僕に告げる。

「死亡の引き受けは可能です」

「ただし一つ条件があります」

「何ですか」

「あなたが死亡すれば

少年は生者へ戻ります」

「しかし死亡予定者五名を

救う権利は失われます」

過去の僕が黙った。

五人を見回す。

少年一人を救えば

五人は予定どおり死ぬ。

五人の誰かを救えば

少年は死へ戻される。

過去の僕は

選べなかった。

そして時間切れになった。

五人が次々に消えていく。

最後に少年も消えた。

過去の僕だけが残った。

僕はその場に崩れ落ちた。

「もう一度」

駅員が聞き返す。

「何と?」

「もう一度やらせてくれ」

「今度は全員助ける」

駅員は首を横に振った。

「その選択肢はありません」

「だったら作ってくれ」

「何回でもやる」

「全員助かる方法を

見つけるまで」

そこで映像が途切れた。

二度目の夜が始まる。

記憶を失った僕。

それでも何かを感じて

少年を疑い始める。

少年が侵入者だと気づく。

僕は少年を

線路へ突き飛ばそうとする。

だが

今度は声が聞こえた。

過去の僕の声。

「お前が死ねば

全員助かる」

第3話で少年が覚えていた

あの言葉だった。

でも続きがあった。

「だから僕を止めろ」

少年が驚いている。

過去の僕は

少年の手に何かを握らせた。

入場券。

「次の僕に渡してくれ」

「六人目を絶対に選ぶな」

僕は息を止めた。

あの文字を書いたのは

二度目の僕だった。

少年を殺そうとしたのではない。

次の夜へ

情報を残そうとしていた。

その直後

0時42分。

最初の死亡予定者が消える。

過去の僕は

最後まで選ばなかった。

また全員が死んだ。

そして二度目の僕も

駅員に言った。

「もう一度」

映像が消えた。

僕は現在のホームへ戻った。

「僕が……」

「自分で繰り返してたのか」

駅員が頷く。

「今回が最後です」

「どうして?」

駅員が電光掲示板を指す。

22:09

数字の下に

新しい表示が現れた。

駅消去まで

残り1回

「矛盾が限界に達しました」

「次の再試行はありません」

少年が僕を見る。

「じゃあ今度失敗したら」

「全員消える?」

駅員は答えなかった。

それが答えだった。

僕は五人分の切符を見る。

00:42はすでに消えている。

残っている死亡予定者は三人。

そして少年。

僕。

僕はようやく

最初の自分が言った言葉の

意味を理解した。

全員助ける。

そんな選択肢は

最初から存在しない。

だから僕は

何度もやり直した。

存在しない選択肢を

探すために。

でも二度目の僕は

何かに気づいていた。

だから入場券に

六人目を選ぶなと残した。

「駅員さん」

「六人目って

少年じゃないですよね」

駅員の表情が変わった。

少年が僕を見る。

「何を言ってるんですか」

僕は最初の日を思い出す。

ホームには六人いた。

死亡予定者は五人。

僕には死亡予定がなかった。

だから

僕を除いた五人が

死亡予定者だと思った。

だが違った。

少年はすでに死んでいる。

なら死亡予定者ではない。

現在の死亡予定者は三人。

一人はすでに死亡。

合計四人。

少年でもない。

僕でもない。

それでも最初の掲示板には

六つの時刻があった。

00:42

03:18

07:05

11:31

16:44

22:09

最後の22:09は

駅が死ぬ時刻。

なら

残った16:44は誰だ?

僕はホームを見回した。

老人。

女性。

スーツ姿の男。

少年。

駅員。

そして僕。

ようやく気づいた。

ずっと人数に

含めていなかった人間がいる。

僕は駅員を見る。

「あなたですね」

駅員は何も言わない。

「16時44分に死ぬのは

あなたなんじゃないですか」

少年が駅員を見る。

電光掲示板が

激しく点滅した。

16:44

その横に

初めて名前が表示された。

駅員。

老人が呟く。

「駅員も……乗客なのか」

駅員は

ゆっくり帽子を取った。

「正確には違います」

「私はこの駅が

最初に取り消した死亡者です」

僕は言葉を失った。

「何年前ですか」

駅員は答えた。

「三十七年前です」

「私もあなたと同じように

誰かを救おうとしました」

その瞬間

すべてがつながった。

この駅には

僕より前にも

同じことをした人間がいる。

そして駅員は

最後に何かを選んだ。

「あなたは誰を救ったんですか」

駅員は少し笑った。

「次の時刻まで生き残れば

その答えをお話しします」

電光掲示板が切り替わる。

次の死亡予定

03:18

残り時間

2時間36分

その下に

見たことのない文字が現れた。

「最終運行を開始します」

遠くから

電車の音が聞こえた。

駅員が帽子をかぶり直す。

そして僕に言った。

「次が最後です」

「あなたは一人を選ぶのではない」

「この駅そのものを

終わらせるか選ぶのです」

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