第2話 生き残る一人を、僕が選ぶ
「あなたが
この駅を呼んだんです」
駅員は
確かにそう言った。
「僕が?」
「はい」
「そんなわけない」
僕は切符を握りしめた。
そこには
「乗客ではない」
と書かれている。
ホームには
僕を含めて六人。
だが
電光掲示板には
こう表示されていた。
死亡予定者 5名
つまり
死ぬ予定がないのは
僕だけだ。
「じゃあ僕は
何なんですか」
駅員は答えなかった。
代わりに
ホームの時計を見た。
午前0時21分。
「説明している時間は
あまりありません」
「どういう意味ですか」
「最初の死亡予定まで
あと21分です」
僕は電光掲示板を見た。
00:42
03:18
07:05
11:31
16:44
22:09
六つの時刻。
第1話で見たときと
変わっていない。
だが
おかしい。
死亡予定者は
五人のはずだ。
「時刻が六つある」
僕が言うと
ホームにいた全員が
掲示板を見上げた。
誰も気づいて
いなかったらしい。
「一つ多い……」
スーツ姿の男が呟いた。
駅員は
静かに答えた。
「一つは
死亡時刻ではありません」
「じゃあ何なんだ」
老人が聞いた。
駅員は
僕を見た。
「選択の締切です」
その瞬間
電光掲示板が切り替わった。
死亡予定者 5名
生存可能者 1名
選択者 1名
女が
小さく声を上げた。
「選択者って……」
全員の視線が
僕に集まった。
嫌な予感がした。
駅員が言った。
「あなたです」
「待ってください」
「この五人のうち
一人だけ
明日の死亡予定を
取り消すことができます」
「それは聞きました」
「その一人を選ぶのが
あなたです」
ホームが
静まり返った。
誰も動かない。
数秒後。
最初に動いたのは
若い女性だった。
僕の腕を掴んだ。
「お願い」
声が震えていた。
「私
死にたくない」
その言葉をきっかけに
全員が動いた。
「俺には子どもがいる」
スーツ姿の男が言った。
「まだ小学生なんだ」
老人は
首を横に振った。
「若い人を助けろ」
その隣にいた
高校生くらいの少年は
何も言わなかった。
ただ
床を見ていた。
もう一人の男が
突然笑った。
「こんなの嘘だろ」
乾いた笑いだった。
「駅も
死亡予定も
全部誰かの悪ふざけだ」
そう言って
線路へ向かって歩き出した。
「やめてください」
駅員が言った。
男は振り返った。
「どうせ明日死ぬなら
今ここから出てやるよ」
線路へ
足を下ろそうとした瞬間。
ホームの照明が
すべて消えた。
暗闇。
誰かの悲鳴。
数秒後
照明が戻った。
男は
ホームの中央に立っていた。
さっきと
まったく同じ場所に。
本人も
何が起きたのか
分かっていないようだった。
「この駅からは
出られません」
駅員が言った。
「選択が終わるまでは」
僕は
電光掲示板を見る。
00:42
最初の時刻。
あと十数分しかない。
「もし僕が
誰も選ばなかったら?」
駅員は
少し間を置いた。
「全員
予定通り死にます」
女性が
僕の腕を強く掴んだ。
「お願い」
僕は
何も言えなかった。
会ったばかりの
五人だ。
誰が生きるべきかなんて
決められるわけがない。
そのとき
高校生の少年が
初めて顔を上げた。
「僕はいいです」
「え?」
「僕を選ばなくていい」
妙に落ち着いた声だった。
「どうして」
少年は
僕ではなく
駅員を見た。
「だって僕
知ってるから」
駅員の表情が
初めて変わった。
「何を?」
少年は
僕を指さした。
「この人が
この駅を呼んだ理由」
僕の心臓が
大きく鳴った。
「知ってるのか?」
少年は頷いた。
「昨日
あなたを見ました」
「昨日?」
「はい」
少年は
ゆっくり続けた。
「あなた
この駅にいましたよ」
背中が冷たくなった。
「何を言ってるんだ」
昨日の夜なら
僕は普通に家にいた。
少なくとも
そのはずだ。
少年は
首を横に振った。
「違います」
そして
電光掲示板を指さした。
「昨日も
同じ五人がいました」
ホームの全員が
黙った。
僕は
少年を見る。
「同じ五人?」
「はい」
「じゃあ君は……」
少年は答えた。
「僕たち
昨日も死んだんです」
その瞬間。
電光掲示板から
一つの時刻が消えた。
00:42
が消えている。
代わりに
赤い文字が表示された。
選択まで
あと10分
そして
その下に
もう一行。
僕だけに
見覚えのある言葉が
表示された。
再試行回数
2回目




