覚悟と疑問
騒ぎがあった次の日
皇后陛下とディアス殿下のもとに集められた
ラハニス、グリーゾさん、ティルクアーズさん
フィトーさんとルルーディ、レモニーさん
セリーニさんにアステリと代表で第一軍からカフェティさん、第二軍からメガロスさん
皇后陛下は私たちを見ると眉を下げて申し訳なさそうな顔をした
「ミヤさん、昨日は大丈夫でしたか?」
「はい、グリーゾさんが守ってくださってましたし医務室に泊まらせていただきました」
「それは良かったわ
本題ですが…第二軍から昨日の件について再度、報告をお願いします」
そう言われメガロスさんが返事をしながら立ち上がる
昨日の出来事を簡潔に説明した後、聖女様と第三軍の現状を話し始めた
聖女様は部屋の中に閉じ込めているが納得していないから騒ぎまくっているらしい
第三軍の人たちも同じようで聖女様に会わせろ、と喚いているんだとか
ひとまずしばらく謹慎として閉じ込めておくつもりだと言う
皇后陛下が静かに頷くと次はカフェティさんが立ち上がり口を開いた
「今朝、幾人かの民から問い合わせがありました
聖女はミヤさんなのではないのかと民たちは信じ込み始めているようです
聖女様の性格や奇行により嫌悪感を感じていた民たちを中心に、またミヤさんのことを知る民の声もあり一気に広がっています」
「…第三の不祥事と聖女の不誠実な態度、それに加えてミヤの人柄とグリーゾとの仲の良さを見たからだろうな」
アステリが私を見ながら言った
何もしていないのに、そんな話になっている現状にスカートを握り締める
「第二のせいもあるが半分はグリーゾのせいではないかのぅ」
「そうだな、ミヤを守ると言っておきながら守れてない」
「守っただろうが! あの人間は娘に乗っていたんだぞ⁉︎」
「そうなる前に抑えておけば良かったじゃろぅ」
なぜかラハニス達が言い合いを始めてしまった
陛下と殿下、レモニーさんとメガロスさんが慌てているものの相手はドラゴンだからか止められないらしい
セリーニさん達はまたか、と苦笑いを浮かべているだけで止めようとしていない
三人と言って良いのか分からないけど少しだけ緊張が解れた気がした
小さく笑った後、長く息を吐いて発言の許可を陛下に求める
促されてお礼を言って立ち上がると全員が私を静かに見つめていた
「ここにいらっしゃる皆さんには感謝しかありません
長い間、私のワガママに付き合ってくださってありがとうございます
…覚悟ができました、皇后陛下、ディアス殿下
私が聖属性を扱える人間だと発表していただいて構いません」
そう宣言すると全員が目を丸くした
今まで逃げてきたのにここで、と疑問に思っているんだろう
メガロスさんに関しては目を白黒させている
最初に動いたのは何かに気づいたセリーニさんだった
「ミヤ、聖女ではなく聖属性を扱える人間と発表するのかい?」
「…この国の方たちがどんな聖女を思い描いているのか分かりませんが少なくとも私は聖女ではありません
私が知っている聖女は優しくて誰にでも手を差し伸べる方です
誰にでも、なんて私はできませんし怒りも怨みも持っていますから」
「それはまた極端な気がするが…」
「それに私は教会には行きません
今の、医務室で働いている現状に満足していますから
教会に属さない人間を聖女と呼べないでしょう?」
意地悪く返答するとセリーニさんは小さく吹きだした
フィトーさんやカフェティさん達も笑みを浮かべている
陛下と殿下も顔を見合わせて微笑んだ
「分かりました
ミヤさんの要求通り、聖女ではなく聖属性を扱える者と発表しましょう
引き続き医務室に居てください」
陛下がそう言ってくれて、お礼を言った
するとラハニスが腕を組みながら唸る
「前から聞きたかったんじゃが、そもそも聖女という言葉はどこから出てきたんじゃ?」
「「え?」」
全員がその問いに首を傾げた
聖属性を扱っていたのは千年くらい前に邪神を倒してくれた勇者だとラハニスが前に教えてくれた
そこから勇者が扱う魔力の属性を聖と呼ぶようになったことも
そこから派生した言葉じゃないの、と訊くと
「確かに勇者を称えて扱う魔力を聖属性と呼ぶようにはなった
じゃが女に限定しているのが分からぬ
勇者から派生したのであれば聖者で良いと思うんじゃが」
そこでセリーニさんが慌てた様子で静止をかける
見ればレモニーさんも目を丸くしていた
「勇者様は女性だったのではないのですか…⁉︎」
「…いや? あれはどう見ても男じゃった
のぅ、ティルクアーズ」
「そうだな、綺麗な顔ではあったが丁度アステリのような体躯だった」
一斉にアステリに視線が集中する
ティルクアーズさんがさすがに間違えない、とため息を吐きながら言うとセリーニさんとレモニーさんが立ち上がった
「し、資料を持ってきます、少々お待ちください!」
「私も行きます!」
ばたばたと慌てて二人は部屋を後にした
取り残された私たちはどういうことだ、と全員で首を傾げる
アステリが代表で訊くとフィトーさんが
「俺もうろ覚えではあるが…確か文献には端正な顔立ちの凛とした方が勇者として現れたって書いてあった気がする」
「…それを聞いたら別に女性だって思わないけどな?」
「あぁ、だが勇者は女性だったと親から聞いていたし周りもそう言ってたから疑問も持たずに信じていた」
「…どこかで事実が捻じ曲げられたってことでしょうか?」
不意にルルーディが呟いたことに全員が言葉を無くした
だけど、それが一番しっくりくる答えだった
誰が何のために、と私は首を傾げた




