策
セリーニの部屋でミヤと三人で、それぞれが遭遇した聖女について情報交換をする
お互いの情報を共有し合った後、セリーニと俺は盛大にため息を吐いた
「懸念していた通りミヤを邪魔者扱いしてきたか…」
聖女はミヤを地味だのオバサンだの言ったらしい
ミヤの年齢を聞いたわけでもないのに、ずいぶんと失礼だ
「…実際ミヤっていくつなんだ?」
「三十二」
訊いた直後に俺はセリーニに叩かれたがミヤは気にする様子もなく答えた
その答えに目を丸くしたのは俺だけでなくセリーニもだった
「二十代だと思ってた…」
「セリーニより上なのかよ…」
「まぁ、元居た世界でも童顔だと言われてたから若くは見えるんだと思う
それでも三十は超えてるよ、残念なことに」
首を傾げるミヤを見て不思議な気持ちになる
確かに顔は若いが彼女はしっかりしているし、その上、冷静すぎると感じる時も多い
精神的な部分が年齢相応なんだ
「でも三十なら、まだ若いと思うんだが…?」
「たぶん聖女様が十六歳くらいだからだと思います」
セリーニの言葉に、そう言ってミヤは苦笑した
確かに十五以上離れていると言えるかもしれない
だが聖女は成人しているだろうに、ずいぶんと偉そうな物言いをする
「元居た世界では十六歳はまだ子どもなんです
働くことはできても親の許可が必要で大人になる一歩手前みたいな感じなので、そこで失敗して学んで育つ子が居ます
たぶん聖女様は、そういう失敗をする前にこの世界に来てしまったんでしょう」
だから子どものままの心で成長できてないんじゃないのか、とミヤは言った
ミヤの話を聞いた後、セリーニが再度深くため息を吐いた
「……聞けば聞くほど聖女とは程遠いな」
「まだ瘴気を浄化する力は乏しいし…そもそもあの態度で国に貢献してもらえるとも思えない
すでに一部の民から反感を持たれているから広がったら面倒なことになるな」
「いや……むしろ好都合かもしれない
ミヤ、最近も暗がりの森の浄化に行ってるかい?」
「いえ、最近はあまり…
教会の人たちが落ち着いてから行こうとラハニス達が言ってくれたので」
「それで良い、そのまましばらく行かないでくれ」
何か考えがあるらしい
セリーニの言葉に首を傾げつつミヤは分かりました、と頷いた
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ミヤに暗がりの森の浄化をしばらく止めるように言ってからアステリとお祖母様たちのところへ赴いた
最近はディアスも定期報告の場に居て、次代国王の勉強のためと俺の提案でお祖母様たちの許可を得てから参加してもらっている
お祖母様も孫三人が仲良く顔を合わせられていて嬉しそうだ
「接触しましたか…」
先に医務室に聖女様が突撃した旨を伝えるとディアスとお祖母様は眉を寄せた
「教会の者たちは何をしているんでしょうか
本来なら行動を起こす前に止めなければいけないのですが」
「使用人たちが言っていましたが止めたところで止まらないらしいですよ
おそらく教会の者たちの言葉さえ聞いていないでしょう
アステリも、よく我慢しましたね?」
お祖母様の言葉にアステリは苦笑いしながら頷く
何度も暴力的な衝動に襲われたらしい
だが、それを実行したところで何も解決しないことは彼だって分かっている
聖女の立場が変わってしまうだけだと
「お祖母様、聖女について何か進展はありましたか?」
「今のところ、民たちの治療や瘴気浄化に協力的ではありますが……態度に非難の声が多くてね
このまま我が国では聖女として認めるかどうか審議中です
もちろん辞退するように言ったのですが、絶対嫌だと跳ね除けられました」
「そうだろうなとは思いました
それについてミヤにしばらく暗がりの森の浄化に行かないよう提案しました
以前、女神アシーミ様から瘴気の量が減るだけでもこの世界は助かる、と言われていたのを思い出しまして現状ミヤのお蔭でだいぶ浄化は進んでいます
浄化の役割を交代しても良いのかと思いまして」
そこまで言って、お祖母様たちは俺が何を考えているのか理解できたのか頷いた
瘴気浄化ができるのは、あの聖女とミヤだけ
アステリを好きなら聖女はその義務を果たすだろう
「聖女が本来果たさなければならないことを放棄し国民を危険に晒した時点で聖女として認めることはできませんね」
「なるほどな、俺が好きなら浄化に行くってことか」
「アステリ、お前から聖女に説明してくれるか?」
「……了解」
渋々といった様子でアステリは頷いた
聖女がどの程度納得するか分からないがアステリの言葉なら大人しく聞くだろう
「ただミヤには引き続きポーションは作り続けてもらうつもりです」
「そうですね、それならば他の場所の瘴気も浄化することはできますから
ミヤさんに頼り切りになってしまうのは申し訳ありませんが…」
「彼女も自分ができることを全力でやりたいと言ってますので大丈夫だと思いますよ」




