聖女
セリーニさんとアステリがぐったりしていた翌日
予定通り聖女様はフォティノース国に到着した
馬車で通る彼女を一目見ようと大勢の人が集まっていて何かのパレードのようだった
私も遠目から馬車の中に座る彼女を見る
確かに可愛い子で、歳は高校生くらい
あの若さで召喚されたなんて気の毒だな、と思ったが彼女自身そう思ってなさそうなので複雑な気持ちになった
無事、王城に到着すると皇后陛下が出迎えていた
「歓迎致します、聖女様
私はこのフォティノース王国を統べるイーリオ・フェンガローペトゥラと申します」
「初めましてぇ、アタシはレムって言いますっ♪」
元気に挨拶するレムさんは周囲を見渡す
ずっと探していたであろう人物を見つけたようで真っ先に飛びかかっていった
「アステリ様ぁ♡」
アステリは軍隊長ということで副軍隊長のカフェティさんと並んで立っていた
だけどアステリは華麗に彼女の突進を避けた
二回三回と繰り返されれば偶然ではないと気づく
「アステリ様、なんでぇ⁉︎」
「公衆の面前で飛びかかってこないでください
何をするか分かりませんので」
そう言ってアステリは腰にある剣に触れる
要は近づいたら斬る、と言ってるのと同じだろう
その場に居たレムさん以外の人が真っ青になっていた
「恥ずかしいの? そんなアステリ様も可愛い♡」
彼女は気づいているのかいないのか
無邪気に笑いながらアステリの腕にしがみつこうとするも彼は静かにその手を払った
「えーと…聖女様、明日から民たちに挨拶と治療をしていただきます
今日はお疲れでしょうから、お休みください
案内を付けますので何かあればお申しつけくださいね」
皇后陛下が静かにそう告げると各々動き始める
レムさんを城内に案内するため護衛と世話をするための使用人が彼女の周りを取り囲んだ
「待って待ってっ!
アタシ、まだアステリ様と話したいんだけど⁉︎」
そう言って暴れ出すと近くにいた衛兵がその身体を拘束し、彼女は連れて行かれる
去り際にアステリ様、と呼ぶ姿を見て少し不憫に思った
あれだけ拒絶されていたのに、まだ諦めないんだと
私なんかが心配するのは失礼なんだろうけど
彼女は自分の立場を理解してるんだろうか
役目を終えたアステリとカフェティさんも足早にその場から離れていった
「話に聞いてた通り、かなり強烈な人だね」
医務室に戻り、通常の業務を始めるとフィトーさんが呟いた
「ですね、アステリ様もかなり嫌そうでした」
「あの不屈の精神は見倣わないとって思いましたけど…限度がありますよね」
私の言葉にフィトーさんとルルーディはうんうん、と頷いた
するとカフェティさんが疲れた顔をして入ってきた
なんでも改めてレムさんが彼女を案内した衛兵や使用人に片っ端からアステリについて訊き始めたという
それを止めるためにも呼ばれたらしいが何一つとして渡せる情報はないため黙秘を貫いていたら暴れだしたらしい
怪我は無いらしいが頭痛がするとのことだ
「……なんというか凄いな」
「セリーニさんと軍隊長が早々に避難した理由が分かりました…」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……本当に面倒なことになりましたね」
聖女様が来られてから数日
私とディアスは頭を抱えながら報告書を読んでいた
セリーニとアステリが共同でまとめたものでレム様について調べた結果が記載されている
まず聖女としての能力は本物だった
ただし瘴気を浄化できるとしても現在は微々たるもの
ミヤさんと違って魔力の使い方に慣れていないから、それは仕方ない
これから学んでいってもらえれば良い
だが民たちへの治療を行なってくれるものの態度が大きく一部の民からは非難の声も上がっている
「彼女の性格については…アステリが言うには自分が主人公だと疑ってないんだろう、だからなんでも自分の思い通りになると信じ込んでいる、だそうです
それがどこまで続くか分かりませんが、すでに彼女に反感を抱いている者が出始めています
このまま聖女と認めさせるには少し危険でしょうね」
そして極め付けはアステリに対する執着心の強さだった
レムさんは暇さえあればアステリに会いに行き積極的に話しかけようとしている
だが彼はなるべくその場に居合わせないよう出会わないよう徹底している
「ミヤさんとはまだ接触していませんね」
「そうね……それが唯一の救いかしら
これからもなるべく接触は避けるようにセリーニとアステリにも共有してちょうだい」
「分かりました」




