お米
翌日
昨日のことが嘘だったみたいに平和でいつもの日常だった
雪は相変わらず降り続いていて寒さが厳しい
いつもと違って配達する箇所が多く、配達に集中してしまう
配り終えて医務室に帰ろうとした時
「ミヤさん、よろしいですか?」
カフェティさんとカスタノさんに呼び止められた
昨日、彼らは夜勤だったらしくお礼会に居なかった
だから個人的にプレゼントを渡してくれた
「あ、ありがとうございます
でも、わざわざ用意していただかなくても…」
「ミヤさんにはお世話になっていますから
気持ち程度なので気にしないでください
カスタノ共々これからもよろしくお願いします」
カスタノさんも頷いてくれて私も笑ってよろしくお願いします、と言った
少しだけ話したけどカレーのレシピを二人も買ってくれたらしい
カレーはカスタノさんでも作れるとのこと
「炒って粉にして混ぜてお湯に溶かすだけだから
野菜も適当に切って入れれば良いし」
「だとしても作りすぎだろ
最近カレーしか食べてないぞ」
「美味しいから良いじゃん」
「だとしてもな…」
「文句言うならカフェティが作れるように仕事調整したら良い」
「それができたら苦労しない…」
カフェティさんは副軍隊長
アステリに続いて多忙な人だ
毎日のように夜遅くまで書類仕事をしているらしい
休みの日は家事をやるらしいのだがカスタノさんに任せっきりになることがほとんどなんだとか
「…ミヤさんが家に来て料理作ってくれる、とかは?」
突然、話を振られて目を丸くした
だけど返事をする前にカフェティさんが叩いて止めた
さすがに厚かましい、と
「お鍋は作ってみました?
水炊きであれば、それぞれ違う味付けにできますしカレーを入れても美味しいですよ」
「…その発想はなかった」
すんなり解決しそうで良かったと思いつつ、カスタノさんのように料理苦手な人も居るだろうと思い至った
鍋は基本、冬に食べる料理
暖かくなってきてもカレーだけにならないように簡単な料理を思い出してみようと思う
そういえば、お米を見てくるの忘れてた…
カレーにも欲しい食材だっていうのに
明日休みだし行ってみようかな、神の庭
「ミヤ、出かけぬか?」
次の日、神の庭に行く準備をしていると緑髪のアステリに変身したラハニスが家に来た
たまには二人で出かけたいらしい
しろがねやグリーゾさん達のことを訊けば
「シロガネは納得してくれたわぃ
自分がミヤと二人で出かける時は邪魔せんと約束させられた
グリーゾとティルクアーズには言うておらん
絶対ついてきたがるからのぅ」
納得して、せっかくだしとラハニスと一緒に出かけることにした
神の庭に行きたいことを伝えると背中に乗せてくれた
「コメ、のぅ…初めて聞く単語じゃ
少なくとも、この辺りではない食べ物じゃな」
長命のラハニスでさえ聞いたことがないんじゃ望みは薄いかもしれない
そんなことを考えながら神の庭のエリアを回っていく
ついでに今の季節では取れない食材も採っていった
「ミヤの世界は本当に珍しいものを食べるのぅ
これはどうやって食べるんじゃ?」
ラハニスが持っているのは秋に実る栗
「トゲトゲを割って中の実を取り出して食べるの
茹でたり焼いたりしてそのまま食べたり、甘くしたり色々使えるよ」
「ほぅ、ずいぶんと万能な実じゃな」
「こっちでは食べないの?」
「人間たちが食べてるかどうかは知らんが我らは食べんな
トゲトゲが不快じゃからのぅ」
丸飲みしようとしたのかな
この分だと中身が食べられるってアステリ達も知らなそう
お米の分と他の食材のことを考えて、なるべく鞄のスペースは空けておいた
その他にも山菜や芋類を収穫させてもらった
牛から牛乳も搾らせてもらうと結構な重さになる
それでもなかなか目当てのお米が見つからなかった
「あと見てない所ってないよね…」
「ふむ…あの奥は行ったかのぅ?
ムギとトウモロコシの向こうにまだ続いておるようじゃが」
僅かな望みをかけて向かう
そこにあったのは探していたお米だった
「あったぁ…」
「これがコメとやらか、ムギに似てるのぅ」
ラハニスが魔法で刈り取ってくれた
一つ割ってみると食べたかった白いお米が見える
食べられる分だけラハニスが刈り取ってくれ、家に持って帰った
早速お米を炊いて食べたいと庭に運ぶ
ラハニスも手伝ってくれて、あっという間に精米できた
鍋に水を入れ炊いていく
「魔法って便利…」
「何を今さら」
「魔法が無い生活のほうが長いから、どうしても手動でやる方法を考えちゃうんだよね」
「そういうものかのぅ…」
炊いている間はかき混ぜたり蓋を開けたりしない
しばらく待って恐る恐る開ける
つやつやな感じに仕上がり、美味しそうなお米が炊き上がっていた
久しぶりに鍋で炊いてみたけど上手くできて嬉しい
「ラハニスも食べてくよね?」
「おぉ良いのか?」
「手伝ってもらったから、お礼としては足りないかもだけど」
水に浮かべて鍋の熱を粗方とったら、お米を丸く形成する
三角形にできたら良いんだけど私は苦手だからやらない
そこに塩をまぶせば塩おにぎりの完成
「うむ、美味い…!
素朴じゃが何度でも食べたくなる味じゃな」
「気に入ってもらえて良かった」
念願のお米が食べられて嬉しいし、ラハニスにも気に入ってもらえて安心した
ラハニスにもっと欲しい、と言われて私は笑った




