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一年

香辛料や薬草を使っているということで話題を呼び、カレーは瞬く間に広がった

見た目と匂いに慣れない人も居るみたいだけど怖いもの見たさが勝ってるらしい

カレーは煮込むだけなので特に難しくない

肉や野菜、魚を一緒に煮込める一番簡単で楽な作り方をギルドには登録してある

そのうち様々なカレーレシピを展開させてくる人が出てくると思う

そうすれば色々な種類が食べられるから私も嬉しい

そんなことを思いながら一週間が経つと医務室にアステリが訪れた


「あーと…ミヤ、明後日の夜は空いてるか?」


「空いてるけど…」


「良かった、その日空けといてくれ

仕事終わったら迎えに行くから」


何かあるのか訊くと、とりあえず空けといてくれ、と慌てた様子で出ていった

訳が分からないまま仕事をして、いつも通りの一日が終わる

そして約束をしていた日、フィトーさんとルルーディが先に帰り一人で片付けを終える

するとアステリが医務室に来てくれた


「どこに行くの?」


「着いてからの…いや、これは言って良いか、食堂だ」


食堂と聞いて首を傾げる

また何か作ってほしいのだろうか

そんなことを考えながら彼の後ろを着いていく

食堂の前に着くと中から声が聞こえ、アステリがノックをすると途端に静まりかえった

一体、中で何が行なわれているのか不思議に思いながら扉が開かれる



「「ミヤ、いつもありがとう〜!」」

「「ミヤさん、いつもありがとうございます!」」



開かれたと同時に紙吹雪が舞った

中に居たのは食堂で働いてる人たちはもちろんだけどフィトーさんにルルーディ

レモニーさんとセリーニさんに第一軍のみんな

ラハニスとグリーゾさん、ティルクアーズさん、しろがねとすみれが居た


「……」


「……」


「…なんか反応しろ!」


「え、あ…ごめんなさい、びっくりしすぎちゃって…」


アステリに突っ込まれるまで棒立ちしてしまった

私らしい、とみんなは笑い始める

そもそも何のお祝いかも分からない

帰ったと思っていたフィトーさんとルルーディまで居るんだもの


「言ってただろ、ありがとうって

今日はミヤへのお礼会だよ

あとミヤがこの国に来て、もうすぐ一年だろ?」


そういえばそうだ、と気づいた

私がこの世界に迷い込んで、もうすぐ一年が経つ

それを祝ってくれるらしい


「ありがとうございます」


そう言って頭を下げると拍手が鳴り響いた

セリーニさんに促されて椅子に座ると料理が運ばれ目の前に並べられていく

私がギルドに登録した料理に加え、この国に馴染みのある料理

どれも美味しそうで言葉を失う


「では…ミヤさんがここに来てくれて一年

日々、私たちの手助けをしてくださっていること

そして美味しい新しい料理に出会わせてくれていること

感謝を込めて、乾杯!」


レモニーさんの音頭により全員がグラスを上げた

私も慌ててグラスを上げると、みんなが笑顔を向けてくれる


その瞬間、涙が落ちた


一瞬の間の後みんなが慌て始め、私も慌てて涙を拭って隠した

だけど、どんどん溢れてきて止まらない

この世界に来たばかりの頃も、こうして泣いたと思い出した

あの頃は何で自分が違う世界にって思ったし元の世界に帰りたいって何度も思っていた

だけど多分この涙は違う

アステリが背中を摩ってくれる


「泣きたい時は泣け

言ったろ、味方でいるって」


「…うん」


彼の首筋に顔を埋め、ひとしきり涙を溢した

今なら分かる

彼らに会うために私は、この世界に呼ばれたんだ

みんなに会って、そして大切な仲間になれた

もう充分生きられるほど幸せな人生だと思う


「落ち着いたか?」


「……うん、ありがとう」


彼から離れて顔を上げると優しい微笑みを向けられる

みんなも静かに落ち着くのを待ってくれていた


「改めて、この国に来てくれてありがとう

本当に……嬉しいよ」


アステリの一言を皮切りに次々とお礼の言葉をかけられる

嬉しさでまた涙腺が緩むけど、今はみんながお祝いしてくれる

少しでも元気な姿を見せようと笑顔を向けた


「皆さん……本当に……本当に、ありがとうございます」


深々と頭を下げて心の底からの感謝を伝えると一際大きな拍手が起こった

その後は料理を食べたり、それぞれの話を聞いたりして時間を過ごす

最初は悲しくて仕方がなかったけど今は楽しい

それもこれも全部みんなのお蔭だ

そう思うと、あの頃の自分の気持ちが救われる気がする

そうしてお礼会は賑やかに過ぎていき、お開きとなった


「ミヤ、最後に見せたいものがあるんだ

ちょっと付き合ってくれ」


そう言ってアステリと一緒にマヴロスに跨る

マヴロスは暗い夜道を駆け抜け、あっという間に広場に着いた

マヴロスから降りるとアステリは少し距離をとる

魔法を使って空高く何かを打ち上げた

それは水と光の弾で空中で弾ける

まるで前の世界の花火のようで


「綺麗…」


連続で違う色のものが打ち上げられ私は目を輝かせる

近くに居た人たちも凄い、綺麗、と立ち止まって見上げていた

十発くらい打ち上げるとアステリは頭を下げ拍手が湧き起こる

彼は満足したように笑いながら、私のほうに戻ってきた


「すごい綺麗だった……ありがとう」


「喜んでもらえたなら良かった」


そう言ってアステリは小さく笑った

夜の空気が肌を撫でるように冷たく心地よい

空を見上げると満天の星が輝いていた

私は再び彼にお礼を言った

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