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腕輪

遠征から戻り、いつもの日常に戻った

今のところ大きな問題も起きてない


「ミヤさん」

「こんにちは」


変わったことと言えば第一のみんながよく話しかけてくるようになったこと

カスタノさんは料理のことを聞きたがるけど本当に些細なことしか話題にしない

それのために話しかける意味あるのかと思うくらい

だけどみんな私のワガママを聞いて黙っていてくれている人たちだ

悪い人たちじゃないと分かっているけど


…何かしでかすと思われてるのかな


よく分からないままマヴロスにブラシをかける

彼は気持ち良さそうに目を閉じている

最近時間があれば、お世話になってるからとアステリと代わってもらっている

その後も訓練したり暗がりの森(ゾフェロスフォレスト)の浄化をしたりした


「そこの女!」


今日もいつものように第一軍隊に届け物をするため長い廊下を歩いていると呼び止められた

なんとなく第三の人かなと思いながら通り過ぎる

誰を呼んでるのか分からないからだ


「おい…おい、待て! 止まれ、黒髪の女!」


「…私ですか?」


まさか私だとは思わず訊き返した

第三の人は私を見ているから間違いではなかった


「お前、第一軍隊長と付き合ってるのか?」


「…付き合ってません」


「じゃあ第一の中に恋人は?」


「居ませんが」


答えるとそうか、と嬉しそうな顔をする

それだけかなと歩みを進めようとすると立ち塞がられた

ため息を吐きながら何の用ですか、と言うと何かを差し出される


「……?」


「受け取れ! お前にやる!」


彼の手の中には金色のブレスレットが握られていた

綺麗な装飾だな、とは思ったけど何故これを私に渡すのか


「アステリ様も第一の連中もお前の恋人ではないのだろう?」


「そうですね」


「ならば俺と付き合う権利をやろう!

その証として、これをやる!」


「お断りします」


言い方に腹が立って、つい即答してしまった

第三の彼は断られると思ってなかったのか衝撃を受ける

けれど負けじと詰め寄ってくる


「な、何故だ⁉︎

俺は第三の中でも人気のある男だぞ!

お前はその中の一人に選ばれたんだぞ⁉︎

もっと喜ぶべきではないのか⁉︎」


彼の言葉に傲慢というか何様なのかとため息を吐いた

付き合ってやるという言い方が、まるで命令に聞こえてくる

ただ単に暇潰しなんだろう


「お前は俺の傍で黙っていればそれで良いんだ!」


彼の傲慢さが段々露わになり少し冷めた目で彼を見てしまう

怒りよりも呆れのほうが大きくなってる気がした

なんで付き合わなきゃいけないのか

彼と居てもストレスを感じる未来しか見えない


「私は貴方に興味がないので、お断りします」


「俺が誰と付き合おうが勝手だろう⁉︎

断れる立場だと思っているのか⁉︎

お前には拒否権などない!

黙って従え!」


そう言うとブレスレットを私の手に押しつけて彼は去っていった

あの人は何を言っていたんだろう

誰と付き合おうが私にも権利はあるはずだろう

頭痛がしてきた頭を抑え手の中のブレスレットを見る


「…なるほど、ね」


持っていても気味が悪くてセリーニさんに相談した

事の経緯を説明しブレスレットを見せる

ルーペのような物で細かく見たセリーニさんは微笑むと


「分かった、コレは俺が返してこよう

渡されてから一度も身につけてないんだろう?」


「はい」


「なら返しても問題はない

災難だったね

あとは俺に任せて大丈夫だから」


そう言ってくれたから甘えることにした

できれば、もうあの人には会いたくなかったから

セリーニさんにお礼を言って今度何か作ってこようと考えた



             ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



山積みの書類を前に座ったまま伸びをした

こうも動かないと身体が鈍る

そんな呑気なことを考えていると扉が勢いよく開けられた

そこにはセリーニが居て目を丸くする部下たちに構うことなく俺の机まで歩いてくる


「第三の金髪で女癖が悪い傲慢な男の名前」


「え、は?」


「第三の金髪で女癖が悪い傲慢な男の名前」


「えーと…金髪は十人くらい居るし、女癖が悪いのは五人くらい居る

あとほとんど傲慢ではあるな

特定するのは難しい、と思う…」


俺がそう答えるとセリーニは眉を寄せ考えこむ

その様子でただ事ではないことだけは感じ取れた

俺は部屋に居た全員と視線を合わせるが全員頭を横に振った

誰も何も検討がつかないらしい


「セリーニ、どうした

何かあったのか?」


俺が訊くとセリーニは眉を寄せたまま金の腕輪を俺に差し出した

手に取って、じっくり見ると特に目立ったことはないただの腕輪に見えた

だが微かに何かを感じ取る

何かは分からないが悪いものな気がして眉を寄せた


「貰ったのか?」


「ミヤがな

第三の男に告白されて押しつけられた腕輪らしい」


「………は?」


困惑と怒りが混ざり合い低い声が出た

持っていた腕輪を破壊しそうになるほど力が籠ってしまう

腕輪を渡されたことより告白されたことに腹が立った気がする

そんな俺を見てセリーニは腕輪を回収しながら続きを言った


「断ったって言ってたから安心しろ

会話してて怒りか呆れしか湧かなかったらしいからな

それに関しては問題ないんだが、この腕輪が厄介なんだ」


「何か悪い感じはするが…」


「隷属の腕輪だ

フィトーとレモニーにも確認したから間違いない」


話を聞いていた部下たちが驚いて数人立ち上がった


隷属の腕輪

装着した者の意思を奪い操ることができる

言葉が理解できる生物であれば、どんな種族の者にも装着させることができ術者の意のままに行動する

術者か解除の魔道具でなければ基本外すことができないため魔道具の中でも禁忌の部類に位置し、どんな事情があろうとも製造、販売することは禁じられている

もし違反すれば極刑は免れない


精神安定の魔道具を身に着けていれば多少は抗える

だがミヤは何もつけていない

もし腕輪をはめていたら、と思うと背筋が凍った


「セリーニさんに相談してくれて本当に良かったですね」


「ミヤさん娼婦みたいに扱われてたかも」


カフェティとカスタノの言葉に頷きながらセリーニは腕輪をしまった

考えただけで、はらわたが煮えくりかえる

そしてさっきの言葉を思い出した

女癖が悪いとなれば何人も同じ目に遭ってそうだ


「探すにしても俺たちじゃ無理だ

第二に頼んだほうが早い」


「確かにそうだな

頭に血が昇って失念していた」


セリーニはこのまま第二に行くと言って出ていった

それを俺たちは見送り、怒りをどう抑えるか悩み始める


「まぁまずは仕事を片づけましょうか、軍隊長」


「そうだな」


それから集中して仕事を終わらせ、セリーニを追うように第二へ向かった

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