許可
走り込みを始めて一週間
最初の数日は息が上がってヘトヘトになってしまった
それに並行して筋トレもやるから休憩を挟んでいても身体が悲鳴を上げていた
でも筋肉痛もそこまで長引かなかったから少しずつ体力はついているのかもと思う
私はさらに頑張ろうと思った
そんなある日、暗がりの森の浄化に行く準備をして城門まで急いだ
カフェティさん率いる小隊は全員揃っていた
「すみません、遅れました」
「お疲れ様です、お気になさらず
では早速行きましょうか」
私は返事をしてカフェティさんと一緒に乗せてもらう
今回はアステリは定例会議のため不在
それでも全員が歴戦をくぐり抜けてきた精鋭なので安心感がすごい
私はポーションの入った鞄を確認してからカフェティさんに掴まった
それから順調に走り森に着きポーションを配り二手に分かれて浄化を開始する
前回から間が空いちゃってたけど瘴気が広がっている様子はないな…
一回浄化したら平気なのかな…?
そんなことが頭の中に浮かびはしたが今考えても分からないことなので一旦置いておくことにした
気を取り直して浄化に集中する
実は第一軍の人たち全員が私のことを黙っていてくれている
女性隊士のリラさんに至っては、せっかく友だちになったんだから、と嬉々として黙っていると承諾してくれたらしい
だから第一軍には隠す必要がなくなり聖魔法を堂々と使わせてもらっている
そのせいか今回真っ黒な木を一本浄化しても疲れなかった
それどころか余裕すらあって、使っていくと魔力量って増えていくのか今度レモニーさんに訊いてみようと思った
もう一本浄化してみようかと思うとカフェティさんに止められる
「軍隊長からの指示です
ミヤさんはすぐ無茶するから見張りをと言われましたので」
浄化してアステリの前で倒れたからだろう
カスタノさんも最後のポーションを撒きながら無茶はダメと言った
心配かけさせちゃってて申し訳ないと思い大人しく従う
少しすると分かれた人たちも浄化を終えて戻ってきた
そこで正午になりそうだったから丁度良いと昼食にすることにし円になって座る
「…ミヤさん、それ自分で作ったの?」
カスタノさんが私が持っていたサンドイッチを見て言った
肯定するとサンドイッチを見つめたまま動かなくなった
なんだか彼は私の料理に敏感だと思いながら、食べます? と差し出しみる
小さく切ってあるからフランスパンみたいなパンのサンドイッチを二つ膝に置く彼にしてみれば味見くらいにしかならないだろうけど
カスタノさんは無表情ながら顔を明るくして、ありがとうと言い受け取った
私も一口食べて美味しくできていたことに胸を撫でおろした
味付けをしっかりしないと美味しいと言えない味になりやすいから不安だったけど上手くいったみたいだ
「美味しい」
「良かったです」
そう言って残りを勢い良く口に含むカスタノさんを微笑ましく見る
すると全員の視線がカスタノさんに向いていることに気づき察した
残りは残念だけど私のお昼ご飯なので、と言うとみんなの顔が曇る
そんなに食べたかったんだ、となんだか罪悪感が募った
カスタノさんが美味しかったと挑発的なことを言うと全員が彼を睨んだのもあり、いつか機会があれば作りますと言っておいた
「……いっそのこと、遠征でミヤさんに来てもらいましょうか…」
ぼそっと呟いたのはカフェティさんだった
それを聞いた全員が、それだ! と声を揃えて叫ぶ
話が膨らみ真面目な会議っぽくなってきたけど隊士じゃない私が行って良いのかなと他人事のようにサンドイッチを齧った
「良いんじゃないか?」
帰って早速カフェティさん達がアステリに確認すると、あっさりと了承された
というよりアステリ自身乗り気であるように見える
書類仕事をしながら彼は続けた
「遠征だと治癒が使える魔道士も一緒に行ってもらってるんだ
今までは医務室の人手も足りなかったんでルルーディを呼ぶわけにもいかなかったから
だけど文句を言う奴らが多くて辟易しててな
候補がいないか探してたところなんだ
食事が満足に摂れなくても、野営だとしても文句を言わない人間をな
劣悪な環境でも良いなら俺としては同行してもらいたいんだが、ミヤはどうしたい?」
そこまでアステリが言ってカフェティさん達は何かに気づいたような顔をしていた
多分だけど私に過酷な環境だという説明や意見を聞いていないと思い出したのかもしれない
みんなで盛り上がっていたし許可されるとも思ってなかったから口を挟まなかったのも悪かったかもなと思いつつ、構わないよと言えば全員が笑顔になっていた
わりと私はどこでも寝れるし食事は私が作るんだろうし治癒魔法もできる
空いた時間で瘴気の浄化をさせてもらえれば一石二鳥な気もする
「…って言いたいけどフィトーさんの許可を貰ってからでも良いかな?」
「あぁ構わねぇよ
こっちとしては助かるから脅してでも許可させたいけど」
「それはやめて」
「冗談だよ」
そのやり取りにみんながクスクスと笑っているのが聞こえた
アステリの冗談はたまに笑えないと思いながら部屋を後にした
医務室に入るとフィトーさんが一人で仕事していたのでチャンスだと思い扉を閉める
すぐに私の存在に気づいた彼は、おかえりと言ってくれた
ただいま戻りました、と答えてから先ほどの話を簡潔に説明した
なるほど、と考えた後フィトーさんは分かった、と言った
「ただ約束してくれるかい?
疲れていたら遠慮なく休むこと
一人で抱え込まないこと
そして必ず無事に戻ってくること……良いかな?」
私は迷わず首を縦に振った
それは元からそのつもりだし第一軍の人たちだから安全だとも思う
もし万が一怪我したとしても治せるし疲れてもポーションを飲めば何とかなるはず
危ないこともしないように、一人で行動しないように気をつける
「約束します」
「じゃあ気をつけて行っておいで」




