小話4
「先日の魔物になっていた男性だけれど身元が分かったわ」
そう言ってお祖母様は資料を渡す
そこには確かに瘴気により魔物化したと書かれてあった
「当時、婚約していた女性に会えたらしいわ
その人のことを話したら泣いて喜んでいたそうよ」
「遺留品もなかったのによく見つけられましたね」
俺やミヤからの証言だけでよく探し当てられたものだ
「…彼のことは私も知っていたのよ」
寂しそうな顔をすると、お祖母様は続けて話す
同じ学院に通っていた平民の方だったそうだ
頭が良く将来有望で国のために何かしたいと言っていたという
婚約者とも仲が良くて笑い合っているのをよく目撃したそうだ
それが瘴気によって突然終わりを迎え、自分たちでは何もできないと嘆くしかなかった
「彼は浄化されて喜んでいたのでしょう?
婚約者や家族のことをずっと気に病んでいたのでしょうね」
「そうですか……」
「もしあの時、とずっと思ってるのよ
私たちが彼の異変に気づけていたら何か変わったのではないかってね」
お祖母様はそう言って窓の外を見つめる
その瞳にはどこか後悔の念が見えた気がした
もしかして、と思った考えは言わなかった
言ったところで何も変えられない
「だからミヤさんには感謝しかないわ
もちろん、これ以上被害者を増やさない努力もするけれどね」
そう呟くお祖母様の表情はとても力強いものだった
今回の男性が魔物になったのは六十年近く前
彼を最後に、この国では魔物になった人は居ない
それはお祖母様たちの努力の賜物だろうと思う




