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夏至祭

「そういえば、そろそろ夏至祭ですね」


定期的に集まっているレモニーさんとルルーディとのお昼のお茶会

そこでレモニーさんが思い出したように言った

ルルーディは、そんな時期かぁと空を見上げる

夜に広場で篝火(かがりび)を焚いて踊ったりするというお祭りらしい

病を吹き飛ばす願いをする祭りでもあるため英気を養うため屋台も出る

この日だけは遅くまで起きていても怒られないから子ども達は楽しみにしているみたい

夜だと危ないんじゃないかと思ったけど今まで大きな騒ぎは起こっていないらしい

それは第一と第二軍の警備のお蔭なんだろうな、とぼんやり考えた


「レモニーは去年は参加しなかったんだよね?」


「ええ、研究がいいところまでいっていたので続けたかったんです

フィトーも研究に没頭してましたから、いいかなと」


なるほど、とルルーディと一緒に納得した

二人とも研究に集中すると他の事が全く見えなくなる質だから参加しなくても全然気にしなさそう


「ルルーディはどうでした?

ご家族と行ってきたんでしょう?」


「うん、でもゆっくりは見れなかったなぁ

弟たちがはしゃいじゃってて逸れないようにするので精一杯でさ」


「そうだったんですね

でしたら今年はこの三人で行きませんか

ミヤさんも初めてですし一緒に行ければ素敵だと思うんですが」


ルルーディは良い考え! と嬉しそうに言った

私も断る理由が無かった

大切な友人たちと時間を過ごせることが何より嬉しいと思う

レモニーさんは私たちの返事を聞いて満足げに微笑み


「では決まりですね」


そんなことを話しながら紅茶を飲んでいると突然雨雲が広がってきた

ぽつりぽつりと地面を叩く音が聞こえたと思ったらすぐに土砂降りになる

急いで屋根のある外廊に走ると一瞬で激しい雷鳴とともに雨が強まった

打ち付ける雨粒が痛いくらいの激しさに三人でため息を吐く

レモニーさんが火魔法で服を乾かしてくれたものの文字通り水をさされた気分だ


「今日はもうダメかな」


「そうですね

また別の日に集まりましょう

夏至祭のことも、その時に」


仕方ありません、と言いながらレモニーさんは空を見上げる

せっかく楽しく話していたのに…と私も肩を落とす

ただルルーディは私たちを見て明るく、次のお茶会が今から楽しみと言った

確かにそうかもと考えを改め私も笑顔で応じると、それぞれ別れを告げて職場へ向かった



             ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



夏至祭

年に一度行われる無病を願う祭りだ

普段であれば魔物が活発になる夜に壁の中であっても出歩かないが、この日は違う

夕暮れ時になると人々が広場に集まってくる

太陽が沈む頃には松明を持った子供たちや大人たちで溢れかえる

多くの屋台も並び、料理や飲み物の香りが漂っている


「今年もきましたね…この祭りが…!」


カフェティが拳を握り第一と第二による警備配置の地図を睨む

これまで大きな騒ぎはないし魔法で壁は作ってもらってはいるが何があるか分からない

不機嫌な顔をして周囲に暗い空気をまき散らすわけにもいかない

業務をこなしつつ民たちに祭りを楽しんでもらうことが求められている

自然と隊士たちの身体が硬くなるのも無理はない

一通り配置を確認すると各隊へ指示を出し配置へ就かせる


「俺はここから全体の状況を見る

何かあったらすぐ連絡を入れるように」


それだけ伝えると各々頷き持ち場へと移動した

今年も平穏無事に終わって欲しいな、と小さく呟きながら深呼吸をして周囲を見渡す

すでに広場にはたくさんの人が集まっていた

楽しげな笑顔と喧騒が響き渡る中、小さな不安を胸の奥底へ押し込める

今日は楽しい思い出を作ってもらう日なんだ

そう自分に言い聞かせて巡回を開始した



             ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



私たちは待ち合わせ場所で合流して広場に向かうことになった

初めてのお祭りだからか普段は見ないものがいっぱいあって見て回るのが大変だ

それでも二人がリードしてくれているから楽だと思う


「ねえ、あれ美味しそうじゃない?」


ルルーディが焼きたてのお菓子を見つけ指差した

甘い香りが漂って、お腹が鳴ってしまう

目を輝かせ足早に露店へ向かったルルーディの後をレモニーさんと私は慌ててついて行く

店主さんが差し出す串刺しのクッキーを受け取ると、ふわりと湯気が立ち昇った

表面はカリッと焼けていて店主さんがこれでもかと蜂蜜をかける

噛みつくとサクッとした食感と共に濃厚な甘味が口内に広がった


「美味しい……!」


思わず声が出てしまうほどの美味しさだった

前の世界でもっと甘いものは食べていたと思うけど、なぜかすごく美味しいと思ったのだ

ルルーディとレモニーさんと居るからかな

二人を見ながら、そんなことを考える

そのうちに時間はあっという間に過ぎて気づけば日も落ちていた

広場の中心にある篝火に火が灯される

ゆらゆらと揺れる炎の周りに集まった人々は歓声を上げながら手拍子や歌を歌い始めた

賑やかな雰囲気に包まれ、まるで時間が止まったような感覚になる

しばらく眺めてから、ふと思い立ち


「来年もまた来たいです」


そう言うと少しの沈黙の後、絶対に来よう!とルルーディが言ってくれた

レモニーさんも静かに頷いてくれる

こうして楽しい時間はあっという間に流れていった

そう思った直後


突然、大きな爆音が轟き地面が揺れた


混乱した人々は四方八方に逃げ惑いパニック状態となって叫び声や怒号などが飛び交う

一体何が起こったのか状況を把握しようと周りを見回す

二人と一緒に安全な場所へ避難したほうが良いか

そう思った瞬間、背後から何者かに腕を掴まれ、引き寄せられた


それはあの時の人型の魔物だった

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