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真似てほしくない部分

自分の感情に振り回されてコデットに対して高圧的な態度を取ってしまうナニーニに対しても、アリシアはその態度そのものを責めることはなかった。


彼女のそれは、結局、コデットに対する反感からくるものなので、これを責めるのも理不尽と言えるだろう。


コデットの態度が改まればなるほど解決するかもしれないものの、そもそも物心ついた頃にはすでに盗賊の中で生きてきたコデットに、今すぐ改めろと言ってもこれまた無理な話でもある。


一年や二年で改まるものではないと考える方が自然であることも、分かっている。


コデットについては、アリシアの振る舞いを見て倣ってもらう方向で対応するしかない。子供は身近な大人の振る舞いを見て真似ることで、人としての振る舞いを学んでいくのだから。


しかも、大人が『真似てほしくない』と思っている部分ほど真似てしまう傾向にあるという。


対外的には『いい人』と称されることも多い親の子供の態度が悪かったりするのは、結局、その親が普段は他人には見せない<裏の顔>や、親自身も自覚していない<好ましくない態度>を、子供が目敏く見抜いて真似ているという事例も多い。


『子は親の鏡』


とは昔から言われることだが、実は気付いている者は古くからそれなりにいたのだろう。


それを認めたくない者達が多数だったことで封殺されてきただけで。


自分が隠そうとしている<裏の顔>や<好ましくない一面>を認めたくないがために。


『自分の所為』であることを認めたくないがゆえに。


けれど、メイトギアであるアリシアにはその手の<体裁を気にするメンタリティ>は、多少は芽生えつつもあるものの人間ほどは強くもなかった。


自分はメイトギア。ロボットである。どんなに悪くしても『ロボットだから』という評価より下に下がることはない。


となれば、気にしなければいけない体裁も多くない。


ただただ、必要な対応をするだけだ。


ナニーニに対しても、


「ありがとう。私のために憤ってくれてるんですね。でも、大丈夫ですよ。私は生粋の貴族じゃありません。他の、歴史を持つ貴族の方々のように貶められて困る名声もありませんから」


と言いつつ。


「それよりも、今日の稽古ですが……」


ナニーニが最も望んでいることに注力する。


コデットの態度に憤る彼女も、普通であればこんな風に簡単に弟子入りなんてできないし、そもそもしつこく弟子入りを懇願するような行為は『非礼である!』として疎まれ、近付くことさえ許されなくなる場合もあるのだ。


コデットの非礼を咎められるほどナニーニの態度も褒められたものではない。


けれどアリシアは、<ただの村娘>だった彼女に貴族社会で通じるような立ち振る舞いが身に付いているはずがないことも分かっているので、それを責めたりはしないのだった。



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