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勇者と姫のそれから  作者: べるこさん
第3章 融合世界編
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 転移魔法を使い 学校の地下へと 戻ってきた。魔法を使う事に躊躇いもあったが そんなことを言っている場合でもない。

 総理は 本部や支部を襲撃させると言っていた。ここだけならば 結界を張って 侵入できなくすれば良いだけだが 支部までは 手が回らない。もし WWAの人員が捕まり 人質にされれば 俺は どうすれば良いのだろうか・・・・。


「お前は お前のすべき事をして来い。こっちのことは こっちで何とかする。そもそも WWAと お前は無関係なのだ。気にする必要はない・・・・行ってこい」


 出雲さんは 俺の考えていた事を見透かしたように言った。

 視線と視線で語り合う二人。言葉はないが 言葉よりも 通じ合う。


「ありがとうございます。すぐに片付けて こっちの応援に来ますよ」


「舐めるな。俺を誰だと思っている。お前より先に 片付けてやるさ」


「俺だって 負けませんよ。では 行ってきます」


「ああ、行ってこい。・・・・・・気を付けてな」


 硬く手をつなぎ もう一度 見詰め合う。そして、手を離し 転移魔法を行使する。






 時は タラクシャ王と日本の使節団が面会した日まで 遡る。

 使節団は直輝に対して 交渉には時間がかかるものだと 言ってのけたが その実 直輝達が帰った後 30分も経たないうちに タラクシャをあとにしていた。

 

 使節団が城を退去した後 すぐに王は 信頼のおける家臣 数名を王の執務室に呼び寄せていた。集められたある者は 困惑したように またある者は 怒りで 顔を赤くし またある者は 冷静に分析するように 机に広げられた 日本の首相からの手紙を読んでいる。

 いくつかの条件が記載されていたが 要約すると日本の隷属国になれというものであり 拒否するならば 実力をもって それを実現すると書かれていた。

 これを読んだ文官の一人は


「我が国を愚弄するにも程がある!こままでは 捨て置けん。目に物みせてやるぞ」


「陛下の御前だだぞ。控えよ」


 感情のまま 悔しさに握られた拳を机に叩きつけたものの 周囲から注がれる冷ややかな視線と ヨーヒムの 声に我に返ったその文官はは 自分の醜態を誤魔化すように話題の矛先を変える。


「陛下、お見苦しい姿をお見せして申し訳ございません。

しかし、勇者殿も何故この様な 暴挙に・・・・?」


「勇者殿は 予に会うために いいように使われたのだろうよ」


 条件には 物資や人員のことが 多く書かれていた所を見ると 日本は できるならばタラクシャを無傷で手に入れたいのだろうと 集められた多くのものは判断している。そして そのために直輝とマリアが 使われたのだろうと。


 王は 視線をマキシムに向ける。向けられたマキシムも 王の次の問いを予想し答えを模索する。マキシムは 指揮官として超が付くほど優秀で 冷静沈着でありながら 状況に応じた決断も速く その決断をすぐさま行動できる実行力も兼ね備えている。 


「して、マキシムよ。戦になった場合 守りきれるかの?」


 王の問いを予測し 既に答えを準備していたマキシムは 一拍の間もおかず答えた。


「勇者殿に聞いた話ですと 彼等の武器は金属の玉を目で見ることもできないほどの速度で打ち出したり大きな爆発を起こすような物を撃ち込んだり、しかもそれを 歩兵や あの空飛ぶ乗り物に装備させたりしているそうです。更にそれらの攻撃を 弓矢の射程の数倍から数十倍の距離から行ってくると・・・・」


「つまりは 我等が負けると?」


「いえ、これもまた 勇者殿に聞いた話ですが それらの攻撃には一切 魔力が込められていない とのことです。となれば いくら攻撃力が高かろうとも ただの物理的な攻撃ならば上手く結界を使って 接近さえできれば こちらのも勝機があると思います」 


「しかし 我等は 空を飛ぶことはできん。ボルよ、あの空を飛ぶ乗り物について 何か分かるか?」


 王の言葉に 三賢人の一人 ボルは一歩前に出る。


「陛下は 竹とんぼをご存知でしょうか?」


「子供のおもちゃのアレか?」


「はい、そうです。見た感じでは 原理は竹とんぼを大きくした物だと思われます。竹とんぼは手で 羽を回転させますが あの乗り物は 何かの動力を使っているのでしょう。ただ、ここ最近 あのタイプの他にも 翼を広げて高速で移動する 空を飛ぶ物体も目撃されています。それについては 全く 分かりかねます」


 ボルは賢人と言われるだけあって 魔法だけではなく学問に付いても精通している。魔法の威力や効率を上げるためにも 事象に付いて深く知ることが要求されるのだ。

 そのボルでさえ 全くの未知の原理で空を飛ぶ、その事実は 王の表情を険しくさせる。


「対応は 難しいか・・・・」


「いえ、対応はできる・・・・とまでは言いえませんが それでも 手はないわけではありません。例えば 鳥も突風が吹けば 落ちることはないまでも 体制を崩したりします。風や気流操作の魔法を使えば 体制を崩し 攻撃の精度を落とすくらいは できるかもしれません」


 考え込む王。

 相手は未知の軍隊。これまで 相手をしてきた魔王軍とは勝手が違う。とは言え それは相手も同じ。勇者殿の言葉を信じれば こちらが 向こうの技術を理解できないように 向こうも魔法に付いて理解できていない可能性が高い。寧ろ相手は こちらを侮っている様子。そう考えれば あるいは善戦できる。

いや、善戦できなくとも良いのだ。時間さえ稼げれば・・・・・。

 王の方針は決した。それはつまり 時間稼ぎ。

 そのためには


「時に 九柱結界の魔力はどうか?」


「向こう一年は 持続させるだけの魔力の蓄えはありますが・・・・相手の火力も未知数・・・・とは言え 魔力を持たない物理攻撃ならば・・・・」


 ボルは 王の問いに 言葉を紡ぎながら考えを纏めていく。

 九柱結界とは 王都の周りを囲む城壁の九ヶ所に 見張り台のような 塔が存在する。塔の内部には 膨大な魔力を保存できる魔石と 10層にも及ぶ立体魔法陣があり 広大な王都全体を囲む結界を張ることができる。また、この結界の秀逸な所は 段階的にではあるが結界の効果範囲を変えられるところにある。通常は城壁の外までが 効果範囲であるが 壁際 壁の内側と変化させることができる。一時的に そのどれかを2重に張ることにより 2重扉の要領で 人員を外に出したり収容したりできるのだ。ただ、攻撃を受け続けるだけでは すぐに魔力が尽き 結界が失われてしまう。そのためにも 人員を外に出し反撃できる時には 反撃しなければならない。 

 対魔王軍用の結界であったが 魔王軍との戦闘で使う事もなく 人間同士の戦争で使うとは皮肉な物だと ボルは大きな溜息をつきたくなったが グッとそれを堪える。

 相手の力が全く分からない以上 計算のしようもないのだが それでも 答えを出さなければならない。

 先程 皮肉だと嘲たものの 九柱結界を発動しなかったおかげで 魔力は 限界まで蓄えられている状況から 希望としての期間を 口にした。 


「最低でも 一ヶ月は もつかと。いえ 間に補充させてでも もたせて見せます」


 王はボルの答えを聞き しばし考える。答えは 既に決まっている。ただ、それをどう実現するか・・・・。


「意は決した。

・・・・・兎に角 勇者殿に助力を願おう」


「ですが、今回の件 勇者殿の手引きが原因。我等の力になってくれるでしょうか?」


 文官の一人が言うと また別の文官が声を上げた。


「更に言えば 勇者殿との連絡も取れないかと思われますが?」


 文官たちが言うように ナオキがタラクシャに付けば 祖国を裏切る事になり 果たして見方になってくれるのか?そもそも 連絡の方法もない。

 だが王は 心を決めていた。

 それは細いロープを渡る綱渡り。それでも 手を打たない訳にはいかなし 待って 様子を見ていれば機を逃してしまう。


「勇者殿の人となりを考えれば 非道な侵略など許しはしないだろう。最悪 見方にならずとも 停戦への協力はしてくれるはずだ。連絡方法は・・・・確実ではないが 手は考えてある。

それを踏まえた上で 開戦した際 できるだけ 敵兵を殺さないようにして欲しい。我等がどれだけ抗えるかは分からぬが それでも戦争なのだから双方に死傷者は出るだろう。勇者殿にしてみれば 同胞を多く殺されれば 快く 協力はしてくれぬだろう」


 その後 周辺の村や町への対応などを話し合い ボル以外は退室し各々の部署へと駆けて行った。


「魔力を感知する 魔道具があったな?」


「はい。ございますが・・・・それで、勇者様を見つけようとお思いなのですか?しかし 勇者様は日頃 ほぼ魔力を抑えていらっしゃるようで それを感知するのは 難しいかと」


「それは 予も知っている。だが マリアはどうだ?それに なんと言ったか、勇者殿に付いていった あの侍女や 女医はどうだ?特に あの女医やマリアはかなりの魔力を持っているぞ」


「確かに・・・・確かに それならば 可能でしょう!では すぐに その4名の魔力に反応するように調整してみます」


 ボルは 挨拶もそこそこに 自分の研究室へと急いで戻っていった。


「後は・・・・」


 王は呟きながら 机に備え付けられている ベルを鳴らした。

 その音を聴いた隣室に控える侍女が 静かに部屋へと足を踏み入れる。


「陛下 お待たせいたしました」


 恭しく頭を下げた侍女は 王専属の侍女 アンナだ。


「アンナよ、お前にやってもらいたことがある・・・・・」


 王はアンナに 国の現状と それに対する対応。そして アンナの担う役割を説明したのだった。

  





 回答期限の日がやってきた。

 使節団の ヘリは問答無用で前回着陸した王城の裏庭へと機体を止め ぞろぞろと使節団の面々が城へと向かう。

 王は 当然のように 拒否の回答を突きつけると使節団は 罵倒とも取れる言葉を王に浴びせつける。

 警備の兵は 一触即発の状態になるが 王は視線でそれを制した。ここで この者たちを殺したところで何の意味もない。


 この使節団の挑発的な言葉を聞きつつ 王は思考を巡らせていた。


 しかし、何故 我が国を狙うのだ?世界や日本の現状は 勇者殿に聞き及んでいるが ここで我が国を手中に収めたところで何が変わるというのだ?

 物資?

 人手?

 いや、どちらも戦争を起こしては かえって拙いだろうに。物資を運ぶにあたって あの空を飛ぶ乗り物を使うにしたても 限界があるだろうし あれを飛ばす燃料も入ってくる見込みがないといっていた。

 何かしらの思惑、裏があるのだろうが全く意味が分からない・・・・。

 だが 仕掛けてくるのだから 対応はしなくてはならない。

 だからこそ。

 アンナ・・・・頼んだぞ・・・・。




 王は 使節団の言葉を半ば聞き流しながら その様な事を考えていたその時 アンナは裏庭に着陸したヘリの中に行儀よく ちょこんと座っていた。

 待つこと数十分、使節団が戻ってきた事で 慌てて立ち上がり 席を譲った。しかし 譲られたものは 礼を言うのでもなく その席に腰を下ろした。まるで無視するように・・・・。


(ふぅ・・・・大丈夫だと分かっていても ドキドキするわね)


 立ち上がったアンナは 一見みすぼらしいねずみ色のローブを羽織っている。しかし このローブは優れた魔道具でこれを着た者は他者から認識されないと言う特性をもっている。しかも アンナは元王族でそれに相応しい大きな魔力も持っているため 効果や持続時間はかなりのものとなっている。通常であれば 声を上げたり触れられたりすると効果を失うのだが 供給する魔力量を上げれば多少ぶつかる程度では見抜けなくなってしまう。とは言え 長時間 大きな魔力を供給し続けることはアンナでも不可能なため 場面場面で上手くコントロールしている。王女として高い教養と魔力を持ち それだけでなく機転を利かせる賢さも併せ持つアンナは 今回の作戦にぴったりな人材だった。


 そしてアンナを乗せたヘリは東京へと飛び立った。

 

 ヘリは東京に着くも そこにはナオキは居ない。魔力感知の魔道具を頼りに アンナは数百キロの旅をする事となる。

 

  

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