第3章 異界に誘うシスター②
「なになに?新曲出来そうなの?」
空河がやってきた。すべっタローが送ったばかりの音楽データを流すと前のめりに腕を組んで聞いていた。
「何だかしっとりとしているね……早めに仕上がったら、子どもたちに教えて、今度の校内音楽会で歌わせられるかな?」
そんな空河の言葉に、休憩をしていた大河が慌ててやってきた。
「やめろって空河。また校長が保護者に謝るようだから」
必死に止める大河の様子に、音環は夏頃聞いた大河の愚痴を思い出していた。
話は一学期までさかのぼる。
空河が受け持つクラスの子どもたちは、音感がいい子が多いらしい。YouTubeでナントカ48のようなグループが歌う歌をクラスのとあるグループが歌い出した。それがなかなか良いハモリだったようで、ほかの子たちも真似をした。
振付を真似しだし、クラス全体に波及した。男子も巻き込んで48人には少ないが30人くらいの一つの曲が出来上がった。
あまりにも良い出来だったから、音楽の先生が、授業で録音したテープをコンクールに応募したら地方予選に出られることになった。
その後、県大会で入賞したところ、主催者から自由曲の変更を命じられたそうだ。それもそのはず。コンクールの主催者はNHK。
そして、その時に歌っていた歌は「わたしセゾン」……セゾンカードのCMソングだ。
NHKのルールとしてまずい。せめて「2人セゾン」であれば、アイドルの曲だから問題にはならなかったのに。
「空河、『とあるボスが倒せない』の時もクラスの子たちがYouTubeで見つけたのを耳コピでいい感じに仕上げて、校内の合唱祭で歌おうとしたみたいだが、公に歌うときは歌は選んだほうがいいぞ。変更させられて、子どもたちがかわいそうだからな。」
大河と空河のやり取りを見ながら案外きちんと先生をやっているんだな、と音環は思った。
髪が長くて先生ができるなんて音環の小学校の時はなかったが、きっと周りの先生や保護者がいい人なんだろう。髪を縛ればかまわないと言われた、と大河が言っていたのを思い出した。
この2人は、もし、曲が売れ出したら本格的に音楽をやるのかな。音環はそんなことも考えてみた。
大学の時には活動がぼちぼちになり、卒業後はしばらくお休みしていたが、中学からずっとやってきたバンドだ。とはいえ、今は再開したばかり。それを聞くのはちょっと早いかな。
その時――だまってやり取りを見ていた、すべっタローが言った。
「じゃ、次の曲は子どもたちのために作るかな。」
その言葉を聞いた瞬間、大河は叫んだ。
「絶対にやめてくれ!」
その脇で空河はニコニコと笑っていた。――また、大河の愚痴を聞くようかな。ケーキのおいしい喫茶店を探しておこうっと。音環はそっとスマホで喫茶店のサーチを始めた。
今回は、話の流れで切ったため、短くなっています。
ごめんなさい。




