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SAKIOTTE  作者: 群青 ひら
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第3章 異界に誘うシスター①

翌週。門亜は勤務だったので、4人でスタジオに集まった。


MV撮影もなかったので、音環は青のエクステは外していた。大河と空河も、今回は髪を染めていなかった。


「髪色のスプレー、染めるよりは痛まないけどやっぱりそれなりには痛むからね……」


空河がスプレーを見せながら音環に言った。へえ、こんなものがあるんだ。音環はスプレー缶をくるりと回しながらまじまじと見た。


「エクステも自分でつけるとたまに浮くからなぁ。参考にするよ。ありがとう」


音環は自分のスマホでスプレー缶の写真を2,3枚撮った。これで密林かどこかで買えるだろう。


「そう言えば、シスター服の綿入れ、どうなってるの?」


あれから進捗の話聞いていないけど。音環は気になっていたシスター服の話を大河に聞いてみた。


「うん……思ったより大がかりだよ。シスター服の中に綿を入れるとなると、きつくなってしまうからいったん解体している」


「解体?」


「そう。縫ったところを全部、糸を外してバラバラにしてさ。門亜の体格にあうようにキルティングで裏地を作って、それに合わせて上から縫い付けるとか言ってた」


何だか大がかりだな……。音環は思った。


「門亜の体格にあうようにって、門亜、大河のバ様のところ行くの?」


あの出不精が、人のうちに行くのか?


「いや……大体の体格は把握できるからバ様に伝えておいた。大体の肩幅と胸囲と身長で出来るらしい。

袖は短かったらマフ……ロシアとか見るあのモフッとしたものを上からかぶせるらしいぞ」


大河の説明に、音環は唖然とした。体格が把握できるってなんだよ。それに、バ様のアレンジ力凄い。


あっけにとられる音環の顔を見て、大河は慌てて説明した。


「いや、学校で子どもたちの体格は把握しておかなくちゃいけないんだよ。

運動会で集団演技をするときにケガが無いようにしないといけないし、見栄えはよくしないといけないし。


それに、親も忙しくて体操着とかサイズアップしているのに気が付かないとかあるんだ。子どもは言わないこともあるしな。だからだ」


30人も見るんだぞ!顔を真っ赤にして言う大河を見て、音環はそんなもんなんだ……と理解した。


「じゃ、もう少しかかりそう?来週の浅虫でのMV撮影には間に合いそう?」


「大丈夫じゃないかな……ずっと家にいるし。まあ、俺としても家にいてくれたほうが漬物が増えなくていいんだ」


そこは、出歩いて事故にあわない、じゃないんだ、と音環は変に感心した。


まあ、ここまで防寒対策してあれば、門亜も風邪をひかないだろう。



「兄ちゃん、ちょっと合わせない?」


スタジオで休憩をしていると、空河が大河に言っているのが聞こえた。ほんの少し前まで新曲の音合わせでぶつかり、絡み合っていた音が余韻として残っていた。


大河は返事の代わりにギターを鳴らし始めた。それに合わせ、空河もドラムを響かせた。


――2人が合わさると疾走感あふれる音になる。大河のギターは攻めの奏法だ。兄弟だし、ずっとそうやって2人で合わせてきたから息もぴったりなんだろうな――。


と、楽しそうに顔を合わせてセッションをする2人の姿を音環はぼんやり眺めながら考えていた。


俺のギターはどちらかと言うとゆっくり聴かせる方だ。


門亜は俺となら静かに歩調を合わせるように、時に絡み合うようにベースを弾くし、大河たちと一緒ならはっちゃけている。どちらがいい、と言うのはないのかもしれないが実際のところ、どうなんだろう。


ひとしきりセッションをしたあとの静まり返ったスタジオで静かに音環のギターが鳴り出した。


「音環、いい感じにギター啼かせるよな。」


すべっタローが音環の隣にやってきて座り込んだ。ギターに合わせるように鼻歌で歌っていだした。


さっきのセッションもだが、こんな時、新しい曲ができることがある。――すべっタローの声は鼻歌でも透き通っている。


天使の声、と言えばウィーン少年合唱団の特許だろうが、すべっタローの声も引けを取らない。なんなら、デスボイスを聴かせた直後でもこのよくとおる透き通った声は濁ることがない。


しばらくして、すべっタローの声がふふふ~んから何か意味のある言葉に代わりだした。ひまわり~ヒガンバナ、と聞こえるのは気のせいだろうか。何だか不穏だ。


すべっタローが、スマホの録音機能をオンにした。そしてそのまま鼻歌交じりで歌い続けた。音環が合わせているのか、すべっタローが合わせているのか。不思議なセッションが静かに流れ続けていた。


ひとしきり、歌うのに満足したのかすべっタローは歌を止めると録音機能も止めた。


そして、録音した音楽データをカズヤに送った。多分、そのうちカズヤから譜面に起こしたデータと作曲ソフトで作ったデモが送られてくる。それにすべっタローが歌詞をつけて新曲が完成する。


「すべっタロー…今度の曲は、普通の曲か、もし逢瀬のようにコミカルにするなら前もって言ってくれな。気持ちが追い付かない。」


静かに言う音環にすべっタローはにっと笑って返した。


この前出した新曲……逢瀬。ダウンテンポと流れるようなギターで始まるその曲は、久しぶりに弾いていてワクワクした。


同じリズムとメロディが繰り返されるのを、俺と大河が交代でギターを鳴らす。


しかも俺のパートはアルペジオだ。どうしても大河のストロークに比べて勢いが弱くなってしまうから、アレンジにとても気を使った。


真っ向から勝負をしては負けてしまうから……大河のパートと俺のパートはまるっきり違うものだ、とはっきりさせた。


そこまでしたのに……歌詞が入って愕然とした。あるショッピングモールのCMの歌だった。すべっタローとカズヤが同時進行で作ったと知ったのはその後のことだ。


今回は3回に分かれます。

次が少々短くなります。

バランスが悪くなってごめんなさい

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