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SAKIOTTE  作者: 群青 ひら
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第9章 追跡 門亜、びっくりする①

やっちゃったよ……門亜は頭を抱えた。ちょっと待って、そう言うと、門亜は伯父にメッセージを送りなおした。


「ごめん。誤爆。今伯父さんに送ったから……無駄足させちゃってごめんね」


門亜はさらりと言った。その言葉に、音環の目線がきつくなった。


その時、軽ワゴン車が駐車場を出て行こうとした。


「じゃ、大河行こう」


まるで、門亜がいないかのように音環は言った。


「待って、まさか追わないよね?」


「お前には関係ないよな」


ズンッ。門亜の心に重いものが落ちてきた。何で?何で危ないことに足を突っ込まないでって言っているのに、怒られるの?


「今行かないと見失う。お前は伯父さんと一緒に行けばいいだろ」


音環はそう言うと車に向かおうとした。その時、音環の袖を門亜はつかんだ。


「ボクの幼馴染……事件に巻き込まれて死んじゃったって知ってるくせに……」


ふぅ。音環は息を吐いた。そして、少しだけ深く息を吸うと、ぼそっと言った。


「だったら、見張ってろよ。危ないことをするかしないか。助手席なら空いているから」


ボクが乗っても乗らなくても音環は行く。なら。


門亜はさっと助手席に乗り込んだ。そして、大河たちが乗ったのを確認すると音環は車を走らせた。


「西の方だな……」


後部座席から大河は声をかけると


「門亜、大人なんだからそんな泣くなって」


と言った。


泣いてなんか……と言おうとしたが、確かにツンと鼻がいたい。


発進の時に荷室から乾いた金属音が聞こえた。物干しざおがぶつかり合うような軽い音だった。


一瞬、門亜は気になったが伯父にLINEを送るのに集中することにした。軽ワゴンが出るときにちらりと見たが、車のナンバーは門亜の予想通り変わっていた。


車道に出ると、軽ワゴンはだいぶ先を走っていた。そして、先の信号で左に折れた。


音環は加速をしたかったが、大型車が通った後の路面は、チェーンでできた氷塊が細かく音環の車を右左に揺らしていた。


こんな道、よく軽ワゴンで走れるな。音環がハンドルから来る振動に顔をこわばらしていると、赤信号に停められた。


しまった。見失う。


「こっちに曲がったなら、県道に入った先の集落に向かったかもしれない。確信はないがな。バイパスを渡った先に、車を停められるスペースがあったはずだ」


大河は言った。詳しいな、との音環の声に、家庭教師時代に行ったことがある、と大河は返した。


門亜は、この道……とつぶやいた。警察学校に行く道じゃないか。


車内は一瞬静まった。泣き虫の門亜が一応、警察官が出来るまでに泣かなくなったのだから、相当厳しいところなのかもしれない。


音環は、ナビ上にポツンと文字で記された『警察学校』の4文字に何とも言えないオーラを感じた。


「7号バイパスに出たらどうする?」


音環は聞いた。


「うーん。こっちに戻ってこなければ7号に行ったってことだから、それを伯父さんに伝えるしかないかな。まあ、消去法だ」


信号が青に変わると、横断歩道の人を渡らせた。そして、一回タイヤを空転させたあと、門亜ににらまれながら音環は車を走らせた。


一面が真っ白になった道をまっすぐ走らせていると、すぐに新幹線の高架が見えてきた。これをくぐるとバイパスが見えてくる。


「バイパスを渡ったら、頭からその空き地に入って。俺たちが後ろを向いて見てるから。


奴らが戻ってきたなら、どちらに行くかわかり次第、音環はその先の出られるところから出ればいい。市内に戻るのではなく、奴らが先に進んでも、信号もすぐに変わるだろう」


で、どんな車だったんだ?と大河は聞いてきた。返事の代わりに門亜が写真を大河に送った。音環がカズヤと一緒に送った、車の中を写した写真だった。


「運転手が……緑のジャケットな。本当に他と変わりのない白い軽ワゴンだな」


雪と同化して見づらくなるやつ、と大河はぼやいた。


さっきまで、光を通していた曇り空が次第に重苦しい雲に変わってきた。降るのかな……音環が漠然と不安を感じたとき、大河が


「来たぞ」


と言った。


音環の心臓がドクン、と大きく鳴った。これから俺は4人の命を預かるんだな。


「左だ。左に折れた。音環、その先から左に出て、まっすぐ行けば追いつく」


音環はゆっくりと走り出すと、大河の指示に従った。


「あの空き地、よく除雪してあったな」


車道に出ると、音環は驚いたように言った。


「たまに車が停まっているのを見ていたんだ。どこかの駐車場かな。もとはコンビニで、地面が舗装されていてさ。土と違ってスタックすることもないから誘導したんだが」


大河は、なんてこともないと言う風に言った。


「集落から戻ってきて、バイパスを走っている、ってことはもうお金を受け取ったっていうことだよね」


音環は聞いた。


ATMかタンス預金か。今日みたいな窓口が休みの日に、俺たちが出来ることはないのか。音環は、大分先を走っている軽ワゴンの後ろ姿をにらみながら考えた。


いずれにしても、こいつらだけでも捕まえるか、そこまでの手伝いはしたい。


お付き合いをくださりありがとうございます。

今回の章も4つに分かれています。

ゆっくりお付き合いいただければ嬉しいです。

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