↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SAKIOTTE  作者: 群青 ひら
24/37

第8章 新しい音④

一息をついた大河は、音環に聞いた。


「門亜と、何かあったのか?」


ドキリ。音環は心臓を掴まれたような気がした。何かあった、と言うか……一方的に突き付けられた、と言うか。


「何があったのかは知らないが……音が沈むんだ」


大河は無言のままでいた音環に言った。


「いや……向こうが勝手に怒ったんだよ。急に車降りて帰っちゃうし」


「ふん……。でも、この前は門亜、お前に話しかけようとして何回かしくじってたぞ」


そうなのか?気が付かなかったが……だとしても、だ。


「門亜さ……普段はおっとりとしているけど、コツをつかむと最適解まで誰よりも最速でたどり着くんだ」


だから、怖くて聞けない、と音環は続けた。そんな音環の様子をみて、大河は軽く突き放すように言った。


「まったく。お前たちは肝心な時になるとハリネズミ同士になるからな。

一回腹を割って話せ。案外、こうなんじゃないか、って想像ばかりが先行して空回りしているだけかもしれないぞ」


ああ……ホントに大河はぶれないな。大河を前にすると、つい、口を開いてしまう。音環は前かがみにテーブルに少し身を乗り出すと、声を潜めて言った。


「実はさ、ある車を怪しんでいるんだ。この前の海の時にドラレコのデータが欲しい、と言って渡したんだけどね」


そう言うと、音環はコーヒーを一口飲むと口を潤した。


「この前、門亜とカズヤとでMVの素材を撮りに行った時に寄ったコンビニで『その車』がいたんだ。


門亜が中までは見えない、と言うから、カズヤ誘って自撮りの振りして中を撮ったら門亜が凄く怒ったんだ」


なんで怒ったのか分からない、と音環は続けた。


大河は音環の言葉に、それはそうだろう、と言おうとした。


門亜にだってプライドはある。そして、友人を危ない目に合わせてまでして、何か事件を解決したいなんて矜持が許さないだろう。


そう言おうとした時だった。それまでずっと黙っていた空河が口を開いた。


「多分、門亜は先回りして何かされるのが嫌いなだけだと思うよ。この前、朝ごはんを門亜のところで食べたときもそんな感じだったし」


はい?思いがけない空河の言葉に、音環と大河は空河を見た。じっと見られた空河は慌てて言い訳をした。


「いや、前に高校の時に3-4回食べただけだって。だから、ホント久しぶり。


だって、朝ごはん作ってくれないしお小遣いで食べられるパンなんて大した量ないし。で、門亜の母ちゃん、門亜の日常を聞きたくてボクに朝ごはんくれるんだ」


たまに朝からいないな、と思ったら、門亜の家まで出かけていたのか……。大河は片手で頭を押さえた。


「空河……門亜に怒られなかったのか?」


大河は頭を押さえながら言った。やっぱり薬飲もう。空河はそんな大河の様子に気づかず続けた。


「うん。門亜には『ここまでなら言っていい』部分は聞いておいたから。それでも門亜の母さんからの追及が厳しいから僕、3回位で逃げたよ」


ズキリ。音環の心に鈍い痛みが走った。知らなかった。門亜の日常にするり、と入っていくことが出来るなんて。俺には出来なかったことだ。


その時だった。テーブルに置いていた3人のスマホに同時に通知音が届いた。門亜からのグループメッセージだった。


『オレオレらしい車。至急来てください』


そして、場所を示したマップが続いてメッセージに上がってきた。


「俺、行こうと思う。オレオレ、実はこの前、うちの銀行であったんだ」


音環はそう言うと伝票を持って、さっと立ち上がった。すると大河は


「俺んちに寄ってくれ。すまないが音環の車に乗せてくれないか。俺のは重みでわだちに沈む」


そう言うと立ち上がって、音環の背中を軽くたたいた。


「あの泣き虫が、簡単に音環から離れるわけないだろ」


音環は軽くうなずいた。




門亜がメッセージを送る少し前。


門亜はスーパーで買い物をしていた。スーパーのレジ袋には、麦わら帽子をかぶったひげのおじさんのパッケージのお菓子が、いくつか入っていた。


きっと、味がしないんだろうな……。限定発売、の公告につられて来てみたはいいけど。味がしないなら来なければよかったな。


会計を終わらせると、門亜は外のベンチに座った。


屋根の下のベンチは、雪を避けていて濡れていなかった。ちょこん、と座ると早速スナック菓子の袋を開けた。とりあえず、お腹は空いた。


その時だった。駐車場に1台の軽ワゴン車が入ってきた。門亜は軽ワゴン車を見ると、運転席を見るのが習慣になっていた。


緑のジャケット、黄色のトレーナー。まるでどこかの運送屋の服装に似ている。


でも、ナンバーは黒ではなく黄色だ。そして、ナンバーを止めるねじが、何となくまっすぐになっていない。


コンビニの駐車場にいた時に、音環にもらったデータを送ったら、予想通りナンバーは盗まれたものだった。


軽貨物なり軽乗用なら、ビス止めだけだ。もし僕だったら定期的にナンバーはつけかえるだろう。


盗まれたナンバーを新たに盗むナンバーの代わりに付け替えたら……すぐに持ち主は気づくだろうか。


時間稼ぎにはなるだろうな。そして発覚するころ、別の新しい盗んだナンバーに付け替える。ところてんだ。そうなったら、番号で配備は難しいだろうな。


そう、門亜が考えていると、少し離れたところに軽ワゴンが停まった。そして、運転席の男が何やら電話を始めた。


門亜は男の口元を見た。離れているから……はっきりとは見えないが……何やら熱演をしているぞ。あ、隣の男に電話が渡った。


……ジツハ……ガデスネ……ジコ……かな。オレオレっぽい。運転席の男は、ジャケットの前を閉めていたから気づかなかったが、緑のような黒のような……。


門亜がお菓子を食べながら、ぼんやりを装ってじっと軽ワゴンを観察していると、運転席から男が出てきて、門亜に向かって走ってきた。


一瞬、身構えたが、門亜の脇の店舗のトイレに駆け込んだ。


身長は175㎝くらいで小太り。ジャケットは緑だった。作業着、と言うよりはカジュアル服の『自由』で売っているようなジャケットだ。


応援を呼ぼう。門亜は刑事でもある伯父にLINEをした。違っていても構わない、と言っていたし。もし、上手くいけば現行犯で行けるだろう。


幸か不幸か、軽ワゴンはしばらくその場にいた。


電話を切って、またかけているからATMに誘導しているのかな。出来れば取りに行ってほしいのだけど。伯父さん、早く来ないかな。


その時、門亜の前に見慣れた車が停まった。音環?タイミング悪いなぁ。門亜は少しイラっとした。そして、音環たちが下りてくると、まっすぐ早足で駆け寄ってきた。


門亜はびっくりして言った。


「えええ、何でみんないるの?」


「お前が呼んだんだろ」


そう言うと、音環は門亜からのメッセージを見せた。


ここまでお付き合いをくださりありがとうございます。

この章はここで終了です。

次の章に移ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。