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SAKIOTTE  作者: 群青 ひら
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第5章・閑話休題 ごはん・ごはん・ごはん ―1・おとな110番②

「「「いただきま~す!」」」


音環は味噌汁に口を付けた。おっ。今日のはいい塩梅だ。そして、ちらと門亜を見た。


門亜は、つやつやとした白いご飯に、さっそくたらこを乗せて箸でくずしていた。そして、山盛りにしたたらこを嬉しそうに口に運んでいた。


空河は待ちかねたように漬物に手を伸ばしていた。キャベツとニンジンと一緒につけられたニシンの塩こうじ漬け。俺もさっそくいただこう。


音環は塩こうじに漬けたニシンを口に運んだ。口の中で、焼き魚にはない弾力をかみしめた。この味だよ。弾力がありながらトロッとした味。


「おいしいな!これ!」


思わず音環は叫んだ。


「ホントだよ。ね。漬物はばあちゃんのところでしか食べられないし、ばあちゃんのところで食べていると怒られるからなかなか食べられないんだよね。久しぶりに食べられて、嬉しいなぁ」


空河の言葉に音環は引っかかった。さっきも母親に怒られる、とか言っていたな。


「バ様とご飯て食べないの?」


それとなく、音環は聞いた。


「別々だよ。よく分かんないんだけどね、今日はばあちゃんと食べたいとか、早くに言ってあってもダメ。


ついでに言えば、僕たちがキッチンに立つのもダメなんだ。母さんが二日酔いとかで作れないときなんかは、朝ごはんはコンビニに買いに行くとかするようだし」


空河はたらこをご飯の上にのせて箸で崩しだした。


「ホントは今日、ご飯作ってなくってしかも帰りが遅いって連絡があったから、外食するか考えていたとこ。音環が誘ってくれてよかった。おいしいご飯にありつけるんだもの」


空河は空河で、ご飯問題があるんだな……。


「あ、変なこと言っちゃったね。内緒だよ。でも……たまには呼んでね」


空河はそう言うと、ご飯をほおばった。


「ああ。調理実習みたいなのもいいかもな。カレーとか、1人分なんて作らないから来てもらえると助かる」


音環の言葉に、へへへ……と空河は笑った。門亜を見ると、3切れ目のたらこに取り掛かっていた。


ニコニコとほおばる姿はみんなで食べる約束に微笑んだのか、単純にたらこご飯に夢中だったからかなのか……読み取れなかった。それでも、音環の心は温かく感じた。


「お代わりあるぞ。味噌汁もな。ご飯は自分でよそって」


音環がお盆を出すと、空河はニコニコとお願い、というように汁椀を乗せた。門亜もそっと差し出した。たらこもあるぞ、というと、返事の代わりに2人のニコニコと期待するような笑顔が返ってきた。


音環はキッチンに戻ると、少し冷めてしまった味噌汁の鍋を火にかけた。


自宅でこんなににぎやかに食べるのはいつぶりだろう。大学に入って少しして入院していたジ様が亡くなって、バ様が施設に入って……。宮城の大学に行かなくても、きっと同じだったんだろうな。


ぼんやりしていたせいか、味噌汁が沸騰しだした。音環は慌てて火を消した。危ない危ない。久しぶりににぎやかに食事が出来て、この二人には感謝だな。


冷蔵庫からたらこを出して一口大に切って小皿にまとめて並べた。そして、味噌汁をよそるとリビングに戻った。


「たらこ、まとめて持ってきたから適当に食べて」


そう言うと、門亜の箸がのびた。


「門亜、たらこ本当に好きだな」


門亜は返事の代わりにうなずいた。ご飯も、心なしか山盛りになっている。音環は2人の脇に味噌汁をそっと置いた。


ふう、ふう、と味噌汁に息を吹きかける音が聞こえた。音環が門亜のほうを向くと湯気の向こうで門亜と目が合った。


恥ずかしそうに、照れ隠しのように門亜は目線を音環から外した。そして、もう一度目線を戻すと、今度はありがとう、というようににっこりと目を細めた。


「僕、もう食べられないかも……」


ごちそうさまでした、と空河は続けた。門亜も同じようだった。空河は音環が食べ終わるのを見て、


「食器、流しに持っていく?」


と聞いてきた。音環はうなずきながら、適当に置いてきて、と言うと空河と門亜は立ち上がった。


キッチンから、食器が重なる音が聞こえて来た。そして、水が流れる音がした。しばらくすると、ふきんどこ?と言う空河の声が聞こえて来た。


「ああ、今持ってく」


音環が立ち上がろうとした、その時だった。空河のスマホが震え、画面に「大河兄ぃ」の文字が浮かび上がった。


「空河、スマホが鳴ってるぞ」


えー。空河の声とともに水の音が止まった。音環は空河と入れ替えに流しに立った。リビングに耳を傾けると、困惑するような申し訳ないような空河の声が聞こえた。


食器を拭いて、濡らした台拭きを持って戻ると、空河はちょうど電話を切るところだった。


「なんかあった?」


音環が聞くと、少し迷ってから空河は複雑な顔をして言った。


「どこにいる?って言う電話だったんだけど、じいちゃんとばあちゃんが、僕を探そうとしてソワソワしてるみたいでさ。


普段ならあと1時間は大丈夫なのに。ばあちゃんのところでご飯を食べながら大河兄ぃが押さえててくれるって言ってた」


ふぅ、と空河はため息をついた。


「これから、忙しい時期を迎えるし学年によっては宿泊学習だってあるのになぁ」


一瞬、下を向いたあと、ぱっと顔を上げて言った。


「ごめん。暗くなっちゃったね。今日はありがとう。いただき立ちになっちゃって悪いけど帰るね。……送ってもらってもいい?」


いつもの空河の顔に戻っていた。音環はぽん、と空河の肩をたたくと、


「また、いつでも来いよ。うちは大人110番の家だから」


そう言って車のカギを持った。


お付き合いくださりありがとうございます。

閑話休題、一つ目の話はこれで終わりです。

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