机の角で死んだら悪役令嬢の隣で実況してた件
「……はぁ……なんでこうなった……」
ユウは居酒屋のカウンターに突っ伏していた。
目の前には空のジョッキがずらり。
「おかわりください~」
店員が若干引き気味で俺を見てきた。
「まだいける……俺は……社会に負けたわけじゃ……」
(いや負けてるなこれ)
自分でツッコミを入れながら、ぐいっと飲み干す。
――その後。
ふらふらと自宅マンションへ帰還。
「ただいま……俺の城……」
靴も脱がずに一歩踏み出した瞬間――
つるっ。
「え?」
ゴンッッッ!!!!!!
机の角にクリーンヒット。
「ぐはっっ!!!!!!!!」
視界がブラックアウトした。
……ざわ……ざわ……
(……なんだ……?)
遠くで声がする。
女性の声だ。
しかも、なんか……怒ってる?
(夢か……?それにしてはやたらリアルだな……)
「あなた達ッ!!何度言えば分かるの!?」
鋭い怒声。
ユウの意識がゆっくり浮かび上がる。
そこにいたのは――
真紅の髪を持つ美女。
つり上がった目元、堂々とした立ち姿。
いかにも「悪役令嬢です」と言わんばかりのオーラ。
「わ、わたくしは……申し訳……」
メイドが震えながら頭を下げる。
「“申し訳”で済むなら苦労しないのよ、リリア!!」
(名前出たな)
「お茶の温度、角砂糖の数、カップの向き!全部違うじゃない!!」
(細かっ!!)
「これは“我が家の格式”の問題なの!分かる!?」
「ひぃっ……!」
メイドたちが一斉に縮こまる。
(いや怖ぇよこの人……)
(でも顔めっちゃ綺麗だな……)
(怒ってる顔すら絵になるタイプだこれ)
ユウはなぜか冷静に観察していた。
「もういいわ!全員下がりなさい!」
「は、はいっ!!」
メイドたちは逃げるように部屋を出ていく。
バタン――
静寂。
(……え、俺これどこにいるの?)
(というかなんで見えてるの?)
(え、もしかして俺……死んだ?)
(いやいやいやそんな軽く死ぬ?)
(いや机の角は結構危険だけども)
頭の中で一人会議が始まる。
その時だった。
赤髪の令嬢がぴたりと動きを止める。
そして――
ゆっくりと天井を見上げた。
「……さっきから」
(え?)
「さっきからだれよ!!」
ドンッ!!
机を叩く。
(うわビビった)
「わたしのあたまのなかでぶつぶついってるのは!!!!」
(え?バレてる!?)
「出てきなさい!!今すぐ!!」
(いや無理無理無理無理無理!!)
「隠れても無駄よ!!」
(いや俺も出方分かんねぇんだよ!!)
「……」
沈黙。
令嬢の眉がぴくっと動く。
「……まさか」
(なに!?)
「低級霊……?」
(やめろその分類)
「しかもやたらうるさいタイプの……」
(否定できねぇよ)
「……はぁ」
盛大なため息。
「最悪ね」
(こっちのセリフだよ!!!)
赤髪の令嬢「教会から聖水をいただこうかしら」
ユウ「そんなもんじゃ俺を浄化できないぜ」




