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転生したら幽閉王子でした~これどうすんの?  作者: サクラ近衛将監
第三章 貴族として

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3―17 シーゼル大陸での暗躍

 毎日夜更かしとなれば、睡眠不足になりそうなのでしないけれど、僕は隔日(かくじつ)で夜更けになるとジーゼル大陸に転移する。

 結構な魔力を消費するけれど、僕の現在の保有魔力量に比べたら微々たるものだ。


 僕と妻となったクラウディアは、同じベッドに寝ているけれど、今のところセックスは見合わせている。

 二人で話し合って、クラウディアが少なくとも15歳になるまでは、セックスをしないことで合意したからね。


 クラウディアは、どちらかと言うと前世の白人系の女性だから、日本人なんかに比べると身体は大きいけれど、やはり母体と言う意味合いでは成長しきれていないんだ。

 だから最低限15歳までは妊娠を避けるためにセックスはお預けにしていると云うわけなんだ。


 尤も、このことは公爵邸の従者達にも知らせていない。

 だから従者たちは、きっと僕たちが毎夜夫婦の営みをしていると思っているんじゃないかと思う。


 元々、僕たちの寝室は、特別な防音措置を講じてあるから話し声はもちろんのこと、仮に花瓶を床に落として壊したとしても、その音が外に漏れる心配は無いんだ。

 寝室ではキングサイズとでも云うのか大きなベッドに二人並んで寝ているけれど、僕が出かける際には、クラウディアに睡眠の魔法をかけて出て行くんだ。


 この夜更けの僕の活動は、概ね2~3時間に限定しているんだ。

 夜の間に従者たちが僕たちの寝室に入ることは無い筈なんだけれど、緊急事態等で部屋に入るようなことが有ってもすぐには気づかれないようにダミーのゴーレムを僕の代わりに寝せている。


 屋敷の中で何か異変が起きれば、従者が部屋に入る前に、僕の作った通信魔導具を妖精sが作動させてくれることになっているから、警報のヴァイブレーションが作動すると、瞬時に僕は転移で王都別邸に戻ることにしている。


 ◇◇◇◇


 僕がジーゼル大陸に転移して行う作業は、イフリートの情報に基づいて、デスマルス教団の本部、ジーゼル大陸各地に在る支部、又はそれに関連する組織の確認だ。

 このために、現地の妖精sにお願いして、詳細な調査とチェックを始めたんだ。


 妖精sから報告が有れば、必ず僕も現場に(おもむ)いて確認をすることにしている。

 深夜だから、対象者はほとんど寝ているわけだけれど、個別に対象者の意思や記憶をチェックし、罰を与えるかどうかの判断材料にしているんだ。


 単純に言えば、死罪に該当するかどうかを判断しているのだけれど、少なくとも教団で行われていた生贄の儀式の末路を知っていて加担していた者、麻薬の効能を知っていて己が利益のために麻薬を売っていた成人は、全て死罪にすることにした。

 中には、前世ならば未成年の年齢の子もいるが、どこかで切り捨てねばならないからね。


 でも、こちらの世界でも成人に達していない者は、死罪にはしない。

 但し、そうした年少者は、生きる拠り所(よりどころ)を失って、日々の暮らしにも困窮する者が出るかもしれないが、そこは切り捨てるしかない。


 いずれにしろ、その確認の際に対象者の意識や記憶をあら捜しするわけなので、脳内に微小ながらも影響が残り、対象者自身は目覚めると気分が悪かったり、悪夢を見たと感じるかもしれないね。

 ジーゼル大陸の各地を巡って調査・確認をするのに、延べ日数で十日ほどの時間が必要だった。


 上部組織が潰れると、絶対に、下部組織の構成員は逃げようとしたり、証拠隠滅を図って保身に走ることになるだろうから、そのために僕が行動を起こす前に下部組織までの人物特定が必要だったんだ。

 その上で、最初に手掛けたのは、クリフランド王国の王都にあるデスマルス教団本部の破壊と、本部に住んでいるか、若しくは、そこに勤務している関係者の殲滅だ。


 これは一晩で済ませたよ。

 僕が実行するのは、正しく人殺しであって、しかも大量虐殺ではあるんだが、信者や無辜(むこ)の人々を生贄にしてまで悪魔を顕現させようとしている教団とその関係者を根絶やしにすることには、僕としては何の躊躇(ためら)いも無いよ。


 むしろ、見せしめのために残虐な手法で時間をかけて殺害しても良いと思うくらいなんだけれど、そんなことに手間取ってはいられないからね。

 一番簡単な手法で殺戮(さつりく)した。


 全員の首を()ねたんだ。

 但し、その際にちょっとした小細工をした。


 ヴォーラ大陸で普及している宗教は、多少宗派が違っていても、きっと元は同じなんだろうね。

 宗派により多少の装飾模様の違いはあっても「丸に十字」が描かれた紋章が良く使われているんだ。


 子の紋章は、前世にあったケルト十字がよく似ているけれど、ケルト十字は縦のラインの下の部分が長い筈だけれど、この世界の教会の紋章は、上下左右の十字が同じ長さなんだ。

 一方で、デスマルス教団の紋章は、ヴォーラ大陸で普及している教会とは全く違うもので、杖に蛇が巻き付いている形なので、ギリシャ神話に出て来るものによく似てはいるね。


 いずれにせよ、僕は対象者の首を撥ねると同時に、その額に「丸に十字」の焼き印をつけたんだ。

 その上で妖精sを使って、噂を流したんだ。


 妖精sは、人の脳裏に幻影を見せることができるんだけれど、それと同様に言葉にならない言葉で人の脳裏に意味のある言葉を密かに伝達することができるんだ。

 『デスマルス教団は、神に背く行為を為したために、神罰を受けた。』とね。


 この噂をジーゼル大陸の人々が信じようが信じまいが、それは構わない。

 そうした噂が広がることが僕の狙いだからね。


 今後、同じように焼き印をつけられ、首を撥ねられて死ぬ者は、神罰が当たったと思われることになるだろう。

 これは、実在の人物が大量殺人に加担しているという事実を誤魔化すためでもある。


 こうして、クリフランド王国の王都にあったデスマルス教団の本部は一晩のうちに壊滅した。

 同じように、ジーゼル大陸の各地でデスマルス教団の支部、その関連組織を潰すのに概ね二月(ふたつき)を要した。


 特に面倒だったのは、アゴーナと言う熱帯性植物を栽培している農民の取り扱いだった。

 農民たちには、そもそも罪の意識が無いんだ。


 アゴーナと言う大輪の青い花を育てると高額で購入してくれるので、一生懸命に育てただけであり、そのアゴーナから麻薬が精製されることなど知らなかったのである。

 そうして無知の者が無知であったことを理由に無罪とならないことは刑法理念で良く知ってはいるけれど、他の悪辣な罪人と一括(ひとくく)りにして処罰するのは、僕としては気が進まなかったんだ。


 無論、今後アゴーナを栽培しても、これまでのように定まった売り込み先が無くなるわけなので収入を得る道は閉ざされることになる。

 麻薬精製の手法は、デスマルス教団所属の錬金術師が秘術として隠していたから、おそらくは今後麻薬が市井に広がる心配は無い。


 尤も、供給を絶たれた中毒患者がジーゼル大陸では相当数に上ることになるだろうから、その沈静化に時間を要するだろうね。

 特に、ジーゼル大陸の大部分の国々で麻薬が蔓延(はびこ)っていたことと、なおかつ、政府要人が種々の意味合いでデスマルス教団と深い関係にあったので、それらの人物の抹殺もあったので、多くの国々で今後数年は混乱の極みになるだろう。


 生憎(あいにく)、僕はジーゼル大陸の人々を救うために行動を起こしたわけじゃないから、麻薬中毒患者の取り扱いや、政府の立て直しについては、現地の人々に委ねて放置するだけなんだ。

 そんな中で、万が一、デスマルス教団のような悪辣(あくらつ)な組織や、他の大陸にまで波風を起こす悪の帝王が生まれた時は、状況によっては、僕が出張ってひっくり返すことになるかもしれない。


 僕自身は、ハーゲン王国を含めて国政にまで(たずさ)わろうとは思っていないからね。

 まぁ、そうは言いながらも、ブルームランドの領民のためにはできることをするつもりでいるし、ブルームランドが栄えることで、反射的に他の領地やハーゲン王国に利益を与えることについては、特に支障があるとは思っていないよ。


 いずれにせよ、概ね三月(みつき)をかけて、ジーゼル大陸の大掃除は終了したんだが、ブルームランドが抱える問題は、まだまだ残っている。

 取り敢えず領軍騎士段については、200名余りにまで人員を確保でき、鋭意訓練をさせているところだ。


 ブルームランドの領主館も未だ建設途上ではあるものの、その一部は利用できるまでになっているので、僕が二月に一度ブルームランドを訪れる際には、領主館で寝泊まりできるようになっている。

 このために、従者達の仮宿舎も作って、僕が領地へ行った際の世話をしてもらうようにもしているんだ。


 そのための従者も、徐々にではあるけれど拡充しているよ。

 ジーゼル大陸との関連では、デスマルス教団の動きが停止し、なおかつ麻薬の供給も水際で止められたから、一部の麻薬中毒患者が、隣の領内等で若干の騒ぎを引き起こしたようだ。


 ブルームランドでも麻薬を購入した者が居たようだが、中毒に至る前で済んでいるみたいで、麻薬の服用を断つだけで、正常に戻り、何ら問題を引き起こさずに済んだようだ。



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