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内幕

ベルフラウとミモザを引き連れ会場を後にする4人。

アイリスはクレムの腕の中にいた。

会場の外に出ると会場の外を警備していた騎士たちのの人垣が割れるように、ザッと左右へ整列していく。

クレムの後方にはベルフラウとミモザが続いている。


(悔しい、悔しいよ。

アイリスの今での頑張りが実を結ばないなんて。

厳しい王妃教育に耐えて、家でも無能だと言われて人以下の扱いをされて。それでも生きてきた。

全ては王太子妃になるために。

私がアイリスの今までの頑張りを無駄にできない。

できるわけない。

原作者なのに殆ど細かく物語を覚えていないから、

次の行動が読めない。

なにか、なにか策はないのかな。)


ギリリと奥歯を噛み締めるアイリス。


たどり着いたのは先ほどまでクレムが待機していた貴賓室内。

ソファへゆっくりとアイリスをおろしたクレムは、

目の前に跪きアイリスの左足へ目を向ける。

「ふむ・・・。腫脹が出てきましたね、足をやはり捻っていましたか。」


一緒に来ていたミモザはドレスのまま床へ座り込み、

「殿下の仰る通りです。」硬い表情を崩さないミモザ。だが、気遣うようにアイリスを見上げてにこやかに微笑みかける。

「アイリス、今みるね。大丈夫!殿下も私もベルもいるよ!アイリスは1人じゃないよ!」


貴賓室の中はミモザ指揮の下、サイネリア家の衛生兵たちが慌ただしく入退室を繰り返している。

あっという間に処置に必要な備品を取り揃え、早速患部を圧迫し冷やしていく。

その度に「アイリス大丈夫?」と労ってくれるミモザ。

ベルフラウはストレリチア家の兵たちに命じ、先ほどまでアイリスが履いていたパンプスを取り寄せるよう指示をしていた。


幸いにも処置が早かったおかげで大事には至らず、立ち上がることも歩くことにもさほど支障はでなかった。

「ありがとうミモザ!ミモザのおかげよ!」

「そんなことないよー!でも、びっくりしたぁ!

真っ逆さまにアイリスが落ちていくなんて思わなかったもの。」そう言ってアイリスに抱きつくミモザ。


「それについてなんだけれど、私から話してもいい?

・・・もしかしたらこのパンプス。

細工されていたかもしれない。」

アイリスもミモザも抱き合ったまま「え!?」と固まることしかできないが、クレムとベルフラウだけは違った反応を見せていた。

「私もストレリチア嬢に同意するよ。あの時、あのタイミングでのナスタチウム小公爵の登場。

そして、クロームス嬢への指名。絵図があったように感じた。考えたくはないけれど、下手人はテッセン小公爵に、クロームス嬢も噛んでいそうだ。」


「でも、それを調べる術はないのですよね?」と怯えるミモザを宥めるように背中を摩るアイリス。


(まさかここまで大胆な手段に出てくるなんて。

確かに殿下の仰る通りだわ。あまりにもできすぎている。)


沈黙の中口を開いたのはベルフラウだった。

「殿下、皆。私の力で下手人がわかるかもしれません。これがあの時アイリスが履いていたパンプスよ。」

無惨にもヒールが根本から折れたパンプスが、ベルフラウの指示で運び込まれていたようだ。


「ベルの、力?」「ベルが怪我しない?平気なの?」

「ストレリチア嬢、できる範囲で説明してくれるかな?」


「はっ! 

私の猫目(キャットアイ)は非常に視力が良く、透視能力があります。

この折れたパンプスを透視すれば下手人がわかるはずです。」


「透視? ベルが? できるの? すっごーい!!!」

アイリスから離れミモザはベルフラウに飛びつく。

そんな様子のミモザを優しく受け入れ、しかしどこか照れた様子のベルフラウ。

「い、今まで話す機会もなく、別に隠していた訳ではなくて。」

コホン!と咳払いをして気持ちを切り替え、再び説明を始めるベルフラウ。


「警察組織の仕事をするときはこの能力を使って、事件や下手人を追う。ストレリチアの血を継ぐ者は誰でも開花する能力と聞いているわ。」


「ただし時間がかかります。殿下、このままパンプスは我が家で預かり調べてもよろしいですか?」


「そう言うことならお願いするよ。ストレリチア嬢。

よろしく頼む。」

真剣な表情でベルフラウを見つめるクレム。


「承知いたしました。では我が屋敷へ持っていくように。」

ストレリチア家の護衛騎士にパンプスを預ける手筈を整えるため、ベルフラウがパンプス周囲に結界を張った。

「これでよし。運んでいる最中に誰かが細工をすることもできないわね。お父様の執務室へ持っていって頂戴。」

そのまま騎士へパンプスを預けた。


アイリスが改めてクレムに向き直るため、ソファから立ち上がる。

「殿下、先日も先ほども私を救ってくださりありがとうございます。」カーテシーをし頭を下げるアイリス。

そんな様子を制するように引き止めるクレム。

「いいのですよ。私はあなたを守る事ができてよかった。そのように神妙にならないでください。」

優しく、諭すように微笑むクレム。


「ですが、今宵の夜会は殿下の為のもの。

このまま主役が抜けていることは難しいかと思います。私はこの通りですし・・・。殿下はお戻りください。」


アイリスが大階段から転落し、広間に叩きつけられた際にドレスの裾が切れてしまったのだ。ドレスもパンプスもないので、アイリスは夜会に参加することはできない。


「ナスタチウム嬢。もし、よろしければなのですが。

私に考えがあります。」ニコッと屈託なく笑うクレム。そして遠慮がちに、アイリスの耳元で囁くように話す。


ー同時刻。広間ではカルミアとエリンジウムがファーストダンスを踊っていた。

緩やかにダンスボール全体を煌びやかに舞っていく。

「エリンジウム様、私嬉しいです!」

「あぁ。私もだ。とても美しいお前と踊れるなど、このように良い日は他にないだろう。」

熱い視線を交わし合う2人。

2人だけが見られている甘い空間。

(まさか皇弟が庇うなんて思わなかったけど、あの様子じゃアイリスは今日戻れないわね。)


(ふふふ。いーい気味。)


音楽が止み広間の中心で礼をする2人。

歓声と拍手が響く中、再び会場に音楽が鳴り響く。


「なに?なんなの?」

混乱するエリンジウムとカルミアを取り残し、2階大階段前の扉が開く。


入場してきたの本日夜会の主役クレム。

そして先ほど大階段から転落したアイリス張本人だ。

クレムにエスコートされ前へ進み出て、無事を告げるようにアイリスは貴族たちに礼をする。

大歓声に包まれる広間の中心で、カルミアはギリリと爪を噛んでいた。


(なんで?どうして? 

戻ってこられるはずないじゃない。

ドレスだってパンプスだってあの女にはない。

なにがあったっていうの?)


クレムにエスコートされ、大階段をゆっくりと着実に降りていった。

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