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蜩のキッチン(救いの手2)

暑い夏が過ぎ秋の気配が近づいた頃だった。






深澤は、父親が亡くなってから永く崇めていた伊勢神宮の御神体を粗末にしていたと言って、参拝に行くようだ。




私も賛成した。




『蓉子ちゃんのお陰だよ。これからは前向きに頑張ろうと思うんだ!』




『良かった!!元気になって。息子さんとのんびりしてきてね』




深澤は伊勢へと旅立った。

きっと、深澤のことだから厳かな伊勢の神殿で心が洗われ、生きていく意欲が備わった筈だ。



一先ず、私自信も胸を撫で下ろした。








秋も深まり、我が家にも再び、黒い影が忍び寄ってきた。




主人が管理職で迎えられた会社の雲行きが怪しいのである。


主人も慣れない仕事にストレスを息子へ向けてきた。



息子は、一歩も部屋から出ようとしなくなり、いつの間にか不登校になってしまった。




私は解決する術も分からず、原因を絶つことにした。




主人に高給が目的で厭な仕事をするより、自分のやりたい仕事をして欲しいと、


転職活動に身を翻した。

その内、収入も貯蓄も底をついた。




即ち、生活は火の車に戻り大学の授業料にも悩まされていた。





そんなある日、深澤から久しぶりのメールが入った。




『蓉子ちゃん、元気かい?今日、晴れて独身となり、気分爽快だよ!!』




離婚が成立したらしい。




『じゃ、早いとこ、若い女房を探すことだね!』




『皮肉には聞こえないが‥きついねぇ』




『私が、体でも売ろうかと悩んでいると言うのに‥あなたは、ご機嫌ですね!!』




『そっか、旦那、また何かしたのか?

蓉子ちゃんの体を買う物好きは居ないだろう〜。

僕で良ければ百万でどうだ!!』





『有りがたいお言葉。蓉子は幸福者ですわ!アッハハハハァ〜』





なんて、冗談も言えるほど元気になった深澤だった。





その年の瀬から 新しい年を迎え、深澤の仕事の年度末が三月まで忙殺な日々を送っているようだった。




ある日、いきなり、深澤はハーレーの写メを送ってきた。




『蓉子ちゃん、ハーレー買っちゃったよ。頑張ったご褒美だ』






『ほんとに頑張ったもんね!でも、気をつけてね!!若くないんだから』






『お言葉を返すようだが、ハーレーは若者は乗らないよ』





『そうなの〜おじんライダー頑張ってね』





深澤は楽しそうだった。



心機一転、深澤も趣味を王冠しているようだ。






その頃、我が家にも春が訪れ、子供たちも それぞれが自分の道を切り開くと 家を巣立っていった。




あの不登校で引きこもりだった息子は日本でも有数の新学校に入学した。





そして、横浜へ行ってしまった。




甘えん坊の末息子を手離す時の寂しさは娘の時より格別の苦痛を感じ、しばらくは、ぼんやりとした日が続いていた私だった。




すると、暫くして




『蓉子ちゃん、息子が居なくなって寂しいだろう?明石焼きが食べたくなったんだけど‥今から、付き合ってくれないか?』




深澤は山里から一時間半の道のりを私に会いに来てくれた。




ある時は、


『しゃこを腹一杯食いたいなぁ〜』


そう言って岡山の漁港へ。



そして‥


今年の夏は冷夏になりそうだと予報は予想していたが‥やはり夏は夏、

毎日 暑い日が続き避暑地に逃げたくなりそうな夏まっさり。




深澤は、




『蓉子ちゃん、毎日、暑いだろう。涼みにおいでよ』




深澤の住んでる山里は冬にはスキー客で賑わい 夏には避暑地として都会人が休暇を利用して別荘暮らしを楽しんだりするのである。





『蕎麦を打つよ!!来ないか?』





『誰が蕎麦を打つの?』





『僕が旨い蕎麦を蓉子ちゃんに食べさせてあげるよ』





その頃、不動産を売却した私は、ずうっと気になっていた百万円を持って山里に向かった。






実は、昨年、冗談で体を売ってお金を作ると言った三日後、深澤は百万円の大金を私の目の前に持ってきた。




「会社に関係の無いタンス貯金だから気にせずに使えよ」



と、私を救ってくれた。

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