表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/19

蜩のキッチン(救いの手1)




『今夜、行ってもいい?』




いつの間にか初夏になっていた。





もうすぐ厭な梅雨の季節になる。




私は深澤の住む里山へと夢中で車を飛ばした。





私が行くと言っても深澤は拒まなかった。拒むどころか‥




『気をつけてね!!』




普段の深澤なら こんな夜中に何を血迷っているんだ。大人しく寝なさいなんて説教されるのが大路だ。





それだけ、深澤は寂しく心が病んでいるのだと理解した。





峠を一つ越し、また一つ越し山道越しの脇道から鹿の親子連れが私を見ていた。



そっか、そう言えば近年山に潜む動物たちは山里に下りてきては食べ物を漁っていると聞いたことがある。



可哀想な鹿の親子連れなんだと思うと可愛さもある。


ともかく 山道を歩いているわけではなく、小さいながらも鉄の塊にエンジンが常備しているのだから勝ち目はある。





そんなこんなで私は深澤の住む山里に着いた。



そして、25年振りに深澤の家の玄関を入った。




深澤は私を座敷に招き入れた。座卓の上には何本ものウイスキーが転がっていた。




薄明かりの中でいろんな話をした。






そして、私は深澤の体を指圧で施行した。




確かに脛椎に歪みがある。それと肝臓辺りが腫れている。





気持ちが良かったのだろうか?深澤はされるが儘に私に体を預けた。




それは、私にとって好都合だった。




何故なら、私は今夜人目を忍んでこんなに遠い山里にまで何をするために来たのかというところに意味があるのだ。




人間というものは、古来より医学が発達していたわけでもない。


ならば、病気になれば死への道しか選択肢がなかったのか?


いやっ、そうではない。



古来より人間には三つの技を備わって‥修行が叶ったのである。



第一の初の技として手当てである。

患部にてを当てて治す方法。

これは、幼い頃に何となくであるが記憶の中に誰しも残っているのではないだろうか?



「お母さん、お腹が痛い!」

と、幼い子がお母さんに訴える。


すると、母が先ず 最初にやることはなんだろうか?


「どこへん?この辺り?」とかなんとか言って、よしよしと痛いお腹を擦ってやったに違いない。


これが手当てである。




また、第二の技としては息吹きの技である。


勢いよくその患部に「フッと」息を吹き掛けて治した技だ。




そして、第三の奥の技としては、手かざしの技である。


患部に手をかざす。




そう、キリスト様や、お釈迦様が施されていた技である。




私は深澤の体に神さまからの光を手かざしによって射光した。






「もう、これ以上、体を苛めないで労ってあげてね!!」


そう言いながら全身全霊で思いの念を傾けた。




「分かってる、分かってるよ」


深澤は、そう言いながら涙を拭いているように思った。



「安定剤も、睡眠薬も止めてね。体に良くないんだから‥」




「分かってるよ。なるべく飲まないよ」





早朝、深澤のところから戻った私は、台所でお弁当作りをしていた。



メールの着信音が鳴った。


深澤からだった。



『蓉子ちゃん、僕に何かしただろう?体がだるくて全く動けないんだ!!』




しめしめ、魔力が効いてきたのだと思い、




『そっ、それは良かった!今日は、ゆっくり休養してください。明日の朝には、体が軽くなり 精神共にすっかり楽になっているから心配しないで!』




『何をしたんだ』




私は、それ以上答えなかった。




その後、深澤は 嘘のように みるみる回復した。





あの日、あの時‥


あの私に与えられた僅かな時間、渾身の思いを振り絞ったことを深澤自身も感じ取ってくれたに違いない。



私が日頃から言っている目に見えない力が‥この世に存在していることを少しは理解してくれただろう。




なぜなら、この後の深澤の行動で説明が着く。




大学に行っている長男が跡を継ぐと言ってくれたらしく仕事も再開した。




何に対しても意欲的に確かに前に向かっている。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ