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【第四章】明日は雨具を
その男に声をかけられたのは、その日の夕方だった。
「明日は、絶対に雨具をつけたほうがいいよ」
私は男の顔を見た。
どうして、と聞こうとした。
けれど、男はそれ以上何も言わなかった。
ただ、当たり前のことを言ったような顔をしていた。
私は家の中に戻り、子どもたちの雨具を探した。
黄色。
青。
透明。
一つずつ確認していく。
袖は大丈夫か。
フードはついているか。
足元は濡れないか。
子どもたちがすぐに着られるように、玄関の近くにまとめた。
その時、ふと屋根を見た。
黒い雲が、屋根に張りついていた。
浮かんでいるわけではない。
屋根そのものに貼りつくように、薄く広がっている。
厚さは十五センチほど。
それなのに、そこだけ空気が重く見えた。
玄関には、母がいくつもの袋を用意していた。
水。
食べ物。
着替え。
必要になりそうなものを、すぐ持ち出せるようにまとめている。
それを見て、少しだけ安心した。
――これで準備はできた。
――あとは明日を待つだけ。




