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雫物語 Rewrite  作者: クロプリ
レンヴァル村の戦い
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風と稲妻の激突 〜黒き龍の影〜

「まだ、戦意が落ちていない……さすがは、黄金の聖騎士。けど、真剣勝負に水を差す視線がある。あの、丘の方角からか。それと……」


 フードの男は、眠っているロータの肩に乗っているリスを睨む。


 小さな影が、緑の瞳を細めた。


 戦場の熱気と血の匂いの中で、その存在だけが異質に静かに浮かび上がっている。


「そこから、見ているのか? もし見てるなら、消すしかないな……」


 フードの男の一睨みに、リス……ラタトクスは、更に瞳を緑に光らせる。


(無礼を、お許し下さい。しかし、我々は協力できる筈です。フェルグス殿の母を守り、村人を救う策……提案させて下さい)


 頭に流れる声を聞き、フードの男は丘の方に視線を向けた。

 遠くで揺れる、木々の影。

 そこに、確かに「何か」が潜んでいる気配を感じ取る。


「風のMyth Knight……随分と、余裕だな。だが、まだ終わらん! カラドボルグの力があれば、戦いの中で勝機を見つけることが出来るはずだ!」


 余所見するフードの男に向けてフェルグスは咆哮し、神剣を振り上げる。


 しかし、瞬間……フードの男は、すでに次の動きに移っていた。


 風が渦を巻き、フェルグスの周囲に無数の刃を生み出す。


 風の刃はまるで生き物のようにフェルグスを包囲し、四方八方から襲いかかった。


 フェルグスはカラドボルグを振り回し、風の刃を弾き返そうとする。

 しかし、その数はあまりにも膨大だった。


 風の刃はフェルグスの鎧を削り、肉を裂く。 

 その勢いは、骨にまで達するほどの圧力で襲いかかる。


 一撃が肩を切り裂き、別の刃が太腿を抉った。

 血が飛び散り、フェルグスの鎧は徐々に赤く染まっていく。


 地面は血と土で染まり、風は血の匂いを運ぶ。


「まだだ! 致命傷さえ避ければ、戦える! この程度で、ゲッシュを破る訳にはいかないんだ!」


「凄い気迫だ……村人の全てを救い、スリヴァルディを倒す。その為には、やはりフェルグスさんの力は必要……黒き龍の策に、乗るしかないか」


 カラドボルグの一撃が大地を割り、エアの剣が大気を切り裂く。


 両者は互いの攻撃を寸前でかわし、空間そのものが震えるほどの激しさでぶつかり合う。


 フェルグスはカラドボルグを振り下ろし、光の奔流が広場を焼き尽くす。

 フードの男は風の渦を纏い、その全てを回避する。


「フェルグスの野郎が、強いのは知っていたがなぁ……あのチビ、強過ぎるなぁ! あれだけの男が、今まで無名なんて事があるのかぁ? どちらにしても、ここで死んでもらうがなぁ!」


 スリヴァルディは、高みの見物しながら叫ぶ。


 フェルグスが負けるにしても、一矢は報いるだろう。

 どのみち、自分が有利なのは変わらない。


 余裕の表情で、スリヴァルディは戦いの行方を見守る。


 二人の戦いは、フードの男が明らかに優勢に見えた。


 エアの剣が一閃し、フェルグスの胸甲に深い傷を刻む。


 金属が裂ける音が響き、フェルグスは後ずさった。


「くっ……攻撃が当たらん! カラドボルグのスピードは、光を越えている筈。なのに、何故ここまで躱わせるんだ!」


 フェルグスは叫び、カラドボルグに全霊を込める。


 フードの男は、答えない。

 ただ風が囁くようにその身を包み、フェルグスの攻撃を全て無効にしていく。


 エアの剣が再び一閃し、フェルグスの肩を深く斬り裂く。

 血が噴き出し、フェルグスは膝をついた。


 だが、その目は諦めていない。

 母を救うため、フェルグスは諦めるわけにはいかなかった。


「まだだ! まだ……終わらん!」


 フェルグスは叫びながら立ち上がり、カラドボルグに力を込める。


 カラドボルグが放つ光は、まるで星の爆発のように輝き戦場を白く染めた。

 地面が震え、大気が裂ける。


 フードの男はカラドボルグの軌道を見ながら、エアの剣を構えた。


「信じ難いが、カラドボルグの攻撃を確実に躱わせるらしい……ならば!」


 フェルグスはカラドボルグを握り締め、フードを被った男に鋭い視線を向ける。


 剣の柄に込めた力が、刃先に宿る稲妻を呼び覚ます。

 空気が震え、戦場の緊張が一気に高まった。


「ただの突きならば、貴公の風の力で逸らせるだろう。だが、これならどうだ!」


 カラドボルグが閃光の如く伸び、フードの男に襲いかかる。


「同じ様な単調の攻撃……閃光の如き、光速の攻撃も読まれてしまいますよ」


 フードの男が、風を纏う。


「カラドボルグは、神剣! 雷の力を纏った時こそ、真の力を発揮する!」


 カラドボルグが、風のバリアに迫る。


 そして今までと同じで、カラドボルグの軌道が逸れた。


「線で捉えられないのならば、攻撃範囲を広げるまでだ!」


 カラドボルグの剣先が、稲妻のスパークを発生させる。

 雷鳴が大気を震わせ、地面を焦がす。


「うおおぉぉぉ!」


 カラドボルグが、稲妻を纏いながら元の長さに戻っていく。


 フードの男は、攻撃の体勢に入っていた……その背後から、稲妻が襲いかかる。


 フェルグスの咆哮と共に、カラドボルグから放たれた稲妻が荒々しくフードの男を飲み込んだ。


 刃が縮む瞬間、大気が悲鳴を上げる。

 当然、フェルグスも電撃に晒された。


 だがフードの男に攻撃を当てるには、自分のダメージなど考えてはいられない。


 激しい電撃が、二人を飲み込んでいった……

お読みいただき、ありがとうございました!


今回は、フェルグスとフードの男の一騎打ちをさらに深く描きました。


裏切りの聖騎士編で描いた強キャラ、フェルグスが圧倒される。


その一方でフードの男は、戦いながらもすでに次の策を考えています。


丘の影、小さなリス……戦場の外から向けられる視線に、フードの男は何を感じ、何を選ぶのか?


カラドボルグが放つ稲妻は、果たして風を貫けるのか?


そして、黒き龍が示した「策」とは?


次回、この一騎打ちの決着と、レンヴァル村の運命が動き出します。


感想やブックマークなど、いただけると励みになります!


今後とも、よろしくお願いいたします!

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