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雫物語 Rewrite  作者: クロプリ
7国の騎士の戦い
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始まりの物語2

 雷を纏った風が、Sword of Victoryから生み出される。

 太い両腕を上げ防御したバロールだったが、巨体ごと身体を押し下げられた。


 アーネの瞳は、先程より濃い赤へと変化している。


「バロール! お前の相手をしている暇はないんだが……どうあっても邪魔をするならば、ここでシクステンの仇をとらせてもらう! レーヴァテインを奪ってシクステンを殺した貴様らの非道、忘れてはいないぞ!」


 アーネの声は、闇を切り裂く叫びだった。

 その声には怒りだけでなく、深い悲しみが滲む。


 背中の炎の翼が、まるで自らを焼き尽くす鳳凰のように強く揺らめく。

 炎は、夜を照らす……その光はどこか儚く、希望と絶望の狭間で揺れていた。


「アーネ、限界を見極めて! バロールと決着をつける事が、ゴールじゃないのよ!」


 フレイヤの言葉に、アーネは頷いてみせる。


「分かってます……けど、バロールを倒さなければ、どっちにしても次にはいけない。恐怖に打ち勝つのは、今だ!」


 アーネは一瞬にしてバロールとの距離を詰め、Sword of Victoryを振り下ろす。

 炎を纏った神剣が空を裂き、バロールの右腕を切り裂いた。


 先程とは、まるで違う一撃……飛び散る火花は、まるで彼自身の心の欠片が散るかのようである。


「鳳凰覚醒、この強度で使うとは……命を縮める様なモノじゃぞ。まぁ、いつまで身体が持つか……じゃな」


 バロールの声は冷たく、嘲笑に満ちている。


「魔眼の呪縛をものともせず、ここまで動けるとはのぅ……さすがは、Sword of Victoryに認められた男じゃ。じゃが、まだまだじゃのぅ……その力も、所詮は儚い命の最後の輝きに過ぎんじゃろ」


 切り裂いたはずの右腕が、まるで悪夢のように瞬時に再生したかの様に見える。

 血が一滴も流れておらず、傷の痕跡すらない。


「幻影……だわ!」


 ミルティが、息を呑む……そのの声は震え、恐怖と絶望が交錯する。


「3つの魔眼が全て、開いている……それに、色が……」


 フレイヤが、魔眼の色を確認する……それまで薄い茶色だった魔眼が、色付いている。


 バロールの魔眼……3つ全てが、それぞれ朱、蒼、涅に染まっていた。


「そんな……朱も、蒼も、完全に涅に取り込まれてしまったの?」


 ミルティの瞳に、光るモノが見える。


 3つの魔眼が禍々しく輝き、バロールの哄笑が森を震わせる。


「取り込まれたじゃと? そんなんじゃないのぅ……魔眼が、元の形に戻っただけじゃ。本来、人間などと馴れ合う事の方が異常だったのじゃからなぁ……」


 魔眼の力が大気を震わせ、アーネたちの魂を締め付ける。


 見るだけで、人の命を奪うと言われる魔眼の力……アーネ達が生きていられるのは、凰の目や皇の目という特殊な能力を使っているからだ。


 しかし、これらの力は時間制限付きの力……

 人の身で使うと、代償が付きまとう。


 凰の目は、徐々に心を奪い……

 皇の目は、徐々に身体機能を奪う……


 人の身では長くは耐えられず、時間はアーネ達を無情に追い詰める。


 女神であるフレイヤは皇の目の力を常時発動できるが、更なる高みには踏み込めていない。


 フレイヤの瞳には、仲間たちを守るための悲痛な覚悟が宿っていた。


 バロールが、冷たく告げる。


「終幕の時間じゃ……そろそろ終わりにしてくれると、助かるんじゃがのぅ。Sword of Victoryも、ミステルテインも、その子供も、我々に必要なモノじゃからな。早々に引き渡してくれれば、命までは奪わんのだがなぁ」


「渡せるわけ……ないでしょ!」


 ミルティの声は涙に濡れ、だがその中には燃えるような決意があった。


「ロキを出し抜くためだけに……大切な人を……神剣を……希望を……渡せるわけがないわ! 私の全てを失っても、譲れない!」


「その通りだ! オレ達は今、ここにいる! この状況を作る為に、犠牲になった仲間がいる! 希望を託して逝った仲間がいる! だからこそ、オレは屈しない! たとえ、この身が……心が、燃え尽きようともな!」 


 アーネの瞳が、紅く燃える


 言葉の強さが……

 心の強さが……


 剣気となり、森から現れたヨトゥン兵を一閃で両断する。


 その刃は、まるでアーネ自身の心を切り裂くかのように儚く震える。


「凄まじい気迫じゃのぅ……少し、厄介そうじゃ。スルト殿、協力してはもらえんか? レーヴァテインを贈った恩もあるじゃろ?」


「確かに……良い剣を頂いた。この程度の協力ならば、やらねば罰が当たるというモノだ」


 白き炎を纏い、烈火の化身のような存在感を放つ男……魔神スルトが、森の闇から現れる。


 その威圧感は大地を震わせ、空気を焼き尽くす程だった……

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