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第26話

『勝手に殺すな』

 



 は?

 俺たちは揃って振り返った。


 そこには口から血を流しながらも、こちらを睨みつける竜王の姿があった。

 ば、馬鹿な……。


「心臓、止まってただろ」

『心臓? あぁ……確かに先の一撃は驚いた。思わず心臓が止まるほどだった。……それがどうかしたか?』


 いや……普通は心臓が止まったら死ぬんですけど。

 ちょっと寝落ちしちゃったみたいな感覚で言うなよ。

 お前、ふざけるなよ。

 どういう耐久力してるんだよ。

 HP無限か?


 それとも、これ、負けイベントか?

 俺たちが負けるまで、永遠に続くのか?


「クルシュナ。エリクサーの残りはあるか?」

「……粗悪品なら、あるよ」

「致し方なしか」


 変な病気に掛かるかもしれないし、中毒になるかもしれない。

 とはいえ、今、ここで死ぬよりはマシだろう。


『ここまでの傷……マリウス以来だ。認めよう。お前たちは強い。遊びはこれでおしまいだ』


 どうやらここからが本気らしい。

 はぁ……。


 いいよ、やってやるよ。

 掛かってこい!!


『致し方なし。気は進まんが……』


 竜王は翼を広げる。

 俺たちは竜王の攻撃に備え、身構える。

 そして……。













『降参だ』








 ……は?

 はぁぁぁぁぁ!? 




「「「え……?」」」


 ファルティナ、ララ、クルシュナ。

 三人は拍子抜けた顔をする。


 俺も似たような顔をしているだろう。


『何を驚いている』


 竜王は翼を身動ぎさせた。

 人間で言えば、肩を竦めるような動作だ。


『そもそも我にはお前たちと戦う理由は大してない』

「……我が国に対する天罰は諦めてくださったということで、よろしいでしょうか?」


 恐る恐るという様子でクルシュナは竜王に尋ねる。

 竜王は首を僅かに下げた。


『然り。これ以上、戦えば殺し合いになろう』


 ……俺は最初から殺し合いしているつもりだったんだけどな。

 どうやら、竜王にとってはそうではなかったようだ。

 だから「遊び」はおしまいと。


 なるほどね。


『たかだか五十年生きるか生きないかの貴様らとの殺し合いなど、馬鹿らしくてやってられんわ』


 要するに死ぬのが怖いらしい。

 神のくせにビビリだなと思ったが、臆病だからこそ今日まで長生きして来たとも考えられる。

 それにこいつの命を脅かす存在なんて、数百年に一度現れるかどうかだろう。

 久しぶりの命の危機に恐怖を感じるのも無理はないか。


『我はアルコーンの生き残りとして、この翠星の行く末を見守る責務がある。このような場で死ぬわけにはいかん』


 まだまだ長生きしたいらしい。


『何より……そこのオス……エルミカだったか。貴様は勝算もない戦いをやるようなタイプではあるまい? まだ奥の手を隠していただろう?』

「さて、何のことやら」

『そして命の危険を理由に引くタイプでもない。死を覚悟した人間は厄介だ。我はマリウスとの戦いでそれを学んだ』


 そして竜王は目を細めた。


『真の勇者は割に合わん』


 俺はニセモノだが……まあいいか。

 そういう意味で言っているわけでもなさそうだ。


『もっとも、貴様が『使い手』なら話は別だが。……その剣は貴様が持っておいた方が良いだろう。しっかりと守れ』

「言われなくとも、元よりそのつもりですよ」


 ……『使い手』なら別?

 ふむ、少し引っかかるな。


『我と貴様らの魔力の衝突は、大陸にも届いているだろう。真の勇者の勇気に免じて、今回は爪を降ろす。人間共にはそう伝えて置け』


 今回の戦いで面子は保たれたということか。

 ……まあ、俺にも戦う理由はないし。

 これで手打ちにしよう。


 このまま戦い続ければいつかは倒せる気はするが、こちらの集中力が持たない。

 竜王の攻撃は一度でも喰らえば即死だ。

 勝てるかどうかは五分五分だろう。


 この戦いにそこまでの価値はない。


「信用できません」


 口を挟んだのはファルティナだった。

 おい、やめろ。


「私たちが撤退し、聖王国を去った後、また襲撃しないとも限りません。粗悪品とはいえ、エリクサーは残っているのでしょう? まだ戦えます。今、ここで撃ち滅ぼすべきです」


『エブラムの末弟子め。相変わらず好戦的だな』


「我らは担保のない約束はしません。特にアルコーンとは」


『クハっ……賢しいやつめ』


 意外なことに竜王は怒ることなく、愉快そうに笑った。

 そして大きな唸り声を上げた。


『我、竜王スワラータはエルミカ、クルシュナ、ファルティナ、ララ。以上、四名を真の勇者と認める。以後、貴様らが生きている限り、大陸に手を出さないことを誓う。ただし、人間が我とその身内に手を出した時は別とする。……『不戦の契り』だ。望みはこれか?』


「ありがとうございます。先ほどのご無礼、お許しください……陛下」


『ふん、今更畏まっても遅いわ。……エブラムの弟子共に伝えて置け。貴様らが生きているのは我の寛大さ故であると』


「ははっ……」


 なるほど。

 エブラム教会の安全を確保したかったのか。


『早く失せろ。目障りだ』


 こうして『聖王国の惨劇』は未然に防がれ、死者を出すことなく平和的に解決した。

 ま、まぁ……その、あれだ。


 ちょっと、アドリブは入ったけど、おおよそ俺のチャート通りだったな!!




『良かったな、シメオン。剣ではなく、その勇を継ぐ者が現れて』


 最後に竜王は呟くように息を吐いた。

 

 








 これは、いつかのどこかの記憶。


「クルシュナさんが二人……なぜ?」


 ■■■■とその仲間たちは、驚きを隠せない様子だった。

 無理もない。

 邪神となり、聖王国を滅ぼしたアマティア神の暴走を止める。


 そのために彼らはクル山までやってきた。

 僕と戦いに来たわけじゃない。


「呆れた。騙して連れて来たのか? 君は」


 もう一人の僕は僕を侮蔑した様子で見下ろした。

 そして吐き捨てる。


「偽善者が。また隠し続けるのか? 学習しないな。……いいだろう。そこにいる僕の代わりに僕が教えて……」

「君は黙っていてくれ」


 僕はもう一人の僕を睨む。

 そして■■■■に向き直り、彼らに告げる。


「アマティア神の正体は僕、クルシュナだ」


 僕は『聖王国の惨劇』と贄巫女というシステムの真相を彼らに告げる。


 贄巫女というシステムは、贄巫女を依り代とし、アマティア神をこの地に顕現させる儀式であること。

 贄巫女はアマティア神と一つになること。

 贄巫女は一時的にアマティア神の権能を扱えるようになること。

 故に贄巫女の願いが叶えられること。


 つまり……。


「グズ共を殺し、この地を滅ぼしてやったのはこの僕というわけだ」


 もう一人の僕は笑いながらそう言った。

 ……人の台詞を奪うなよ。


「でも、ど、どうしてクルシュナさんが二人……」

「厳密には僕はクルシュナじゃない」

「え?」

「僕は……クルシュナのコピー、分霊だ」


 アマティア神はクル山の下敷きとなっており、身動きは取れない。

 アマティア神と合一した贄巫女も、クルシュナも同様だ。


 だから実際にアマティア神として大地の上に顕現するのは、贄巫女の人格のコピーだ。

 生贄にされた瞬間、その時の贄巫女の記憶と精神がコピーされ、分霊が作られる。

 分霊という器の中にアマティア神の力が注ぎ込まれることで、大地にアマティア神が顕現する。


「本来、顕現する分霊は一つだ。でも……」

「どうやら本体は矛盾する二つの願いを持っていたらしい。結果、僕とそこの偽善者の二体が生まれた」


 聖王国を滅ぼし、報いを受けさせる。

 クルシュナは最後に国民を恨みながら死んだ。


 でも、聖王国を愛する気持ちは、国民を守らなければならないという義務感を全て失くしたわけじゃなかった。

 

 クルシュナの願いは二つあったんだ。

 だから僕ともう一人の僕が作られた。


「普通ならあり得ないんだけどね。……クルシュナの贄巫女としての資質が高かったからかな。聖王国を守ると共に、聖王国を滅ぼす。二つの願いが同時に叶えられたわけだ」


 もう一人の僕はケラケラと楽しそうに笑う。

 そして僕を見下ろした。


「でも、どちらの願いが強かったかは言うまでもない」

「そんなこと、知っているよ。でもね、僕を生み出した願いも、本物なんだ」


 聖王国を守る。

 僕という存在はその願いを成就するために作られた。

 だから僕はそのために全力を尽くすだけだ。


 目の前の僕が、聖王国を滅ぼすという願いを成就するために、全力を尽くしているように。


「以上だ。……騙して申し訳ない。でも、どうか、僕に力を貸して欲しい。これ以上、僕は僕が人を殺す様を見ていられない」

「冒険者、君は黙ってみているといい。僕はただ、この世界を、この星を蝕む害虫を駆除しているだけだ。君たちが僕の邪魔をしない限り、僕は君たちに危害を加えないことを約束する」


 僕たちは■■■■を真っ直ぐ見つめる。

 彼は、彼らは迷った様子を見せず、答えてくれた。


 ……ありがとう。


 そして僕は残った力を振り絞り、■■■■たちと一緒に戦った。

 激闘の末、僕はもう一人の僕を倒すことができた。


「まさか、偽善者に倒されるとは。……当然か」


 もう一人の僕は自嘲する。


「君は偽善者だが、僕は悪だ。悪は打ち倒されるのが定めだ」

「君は……」

「勘違いするな。君が本物の願いであるのと同様に、僕もまた本物なのだから」


 もう一人の僕はそう言って消えていく。

 ……その気になれば、僕は聖王国の人間を皆殺しにすることくらい、簡単だったはずだ。

 でも、そのすべてを殺すことはしなかった。


 きっと、彼女も……。

 そこまで考えて、僕は■■■■たちに向き直る。


「ありがとう。君たちのおかげで、僕は……僕を止めることができた」


 体の力が少しずつ、抜けていく。

 僕という存在が失われていくのを感じる。


「この一週間、楽しかったよ。……この先、きっと君たちには様々な困難が待ち受けているだろう。でも、どうか、道を違えないで欲しい。先走らず、一人で抱え込まず、誰かに相談するんだ。君たちには……仲間がいるんだから」


 一緒に笑って、泣いて、肩を並べて戦って。

 支え合って、命を預けて。

 僕にもこんな仲間がいれば……。


 違う結末に辿り着けたかもしれない。


「僕のようにならないで」

「く、クルシュナさんも……」


 ■■■■は涙を脱ぎながら、叫ぶように言った。


「仲間ですよ!」


 ……そうか。

 僕にも仲間がいたのか。


「ありがとう!」


 あぁ、そうだ。

 最後にこれだけは伝えないと。


「もし君が、魔王の下に辿り着くことがあれば……」


 ――魔王を殺してはいけない。


 その言葉は彼らに届いただろうか。

 どうか、届いていて欲しい。


 間違えないで……。



 ………………

 …………

 ……。


 そんな景色を、何やら満足して消えていく分霊を、僕はクル山の下から眺めていた。

 仲間? 願い?

 馬鹿馬鹿しい。


 そんなこと、どうだっていい。

 そんなことよりも……。


 ――熱い。

 痛い、苦しい、痒い。


 両手両足を万力のような力で引き延ばされる。

 全身の筋肉が、骨が、腱が、引き千切られ続ける。

 灼熱に熱された鉄の杭のようなものが、体を貫き、ネジのように回転し、ぐちゃぐちゃと僕の肉を抉る。

 体は大地に押しつぶされ続け、時折、穴から内臓が零れ落ちる。

 惑星の中心から吹き上がる炎は僕の体を焼き焦がし、蒸発させる。


 それでもなお、僕は死なない。 

 死ねない。

 損傷した側から修復される。


 生き地獄だ。

 

 ――誰か、助けて!!!



 あまりの激痛に、僕は叫ぶ。


『ゴォォォォ!!』


 しかしそれは人の言葉にならず、大地を揺らすだけ。


 クル山の地震。

 その正体は僕の……僕たちの悲鳴だ。

 歴代の贄巫女たちの、絶望と苦痛の叫び声だ。


 この星はすでに、死んでいる。

 この死にゆく星を繋ぎ止める役割を科せられたのが、アマティア神だ。


 星の回転と物理法則を維持し続けるために、その四肢を引き延ばされ、灼熱の炎に焼かれ続ける。

 すでにアマティア神の精神は破壊され、意識を持っていない。

 故に星神としての権能を扱えない。


 だから僕たち贄巫女がいる。

 僕たちはアマティア神となり、星神としての権能を一時的に使うことができる。


 その代償として、僕らはこの苦痛を、地獄を受け続ける。


 次の贄巫女が来るか。

 それとも、世界が滅ぶ、その瞬間まで。


 あぁ、なるほど。

 これは確かに割に合わない。


 だって、これは無限に続くから。

 一つの命に無限の時間が掛けられ続ける。

 何を掛けても、この苦痛に見合うような願いはない。


 唯一助かる方法は、次の贄巫女が来るのを待つこと。

 そうすればこの苦痛を押し付けることができる。


 しかし、次の贄巫女が来ることは、絶対にない。

 なぜなら、聖王国は僕が滅ぼしてしまったから。


 僕は僕を、父を見捨てた彼らを、彼女らを、みんな殺してしまった。

 アマティア神の子孫は殆ど、生き残っていない。

 生き残っていたとしても、その力は贄巫女となるには不十分だろう。


 だから僕の代わりとなる贄巫女は、永遠に表れない。

 それはつまり、この地獄が永遠に続くことを意味している。


 死ぬこともできず、永遠に……。

 世界が終わる、その瞬間まで。


 ――嫌だ。

 ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ、ヤダ。


 こんなの、耐えられない、

 一秒だって、耐え難いのに。


 こんなのが、永久に続くなんて……。


 想像しただけで、目の前が真っ暗になる。

 恐怖と絶望に支配される。


ごめんなさい、お母様。

 せっかく、お母様からいただいた命を……こんなことで無駄にして。

 こんなくだらない復讐のために使ってしまって。

 助けてもらった命なのに、こんなことを願うなんて、間違っている。

 これは守るべき国民を殺してしまった僕への罰だということも。

 全部、分かっている。


 でも、それでも……願わずにはいられない。


 お願いだから、早く終わって。

 誰か、殺して!!


 僕を殺して!!! 終わらせてくれ!!!


 もう、聖王国なんか、どうでもいい。

 世界なんて、どうでもいい。


 この世界ごと、星ごと、全部、全部……。


 僕を殺して。

 全て、終わらせてくれ!!!


 ――誰か、誰か助けて!!!!


『ゴォォォォ!!』


 今日も僕は悲鳴を上げる。


 誰も、助けてくれない。

 助けられるはずがない。


 ここは星の心臓部。


 どれだけ強大なアルコーンですらも、干渉できない。


 はずなのに。


 ――タスケテ、ヤロウカ?


 その時、僕は確かに声を聞いた。








 竜王スワラータとの戦いから一週間後。

 聖王国の王宮にて。


「クルシュナ、お前……顔色悪いけど、大丈夫か?」

「う、うん……」


 俺はクルシュナの顔を覗き込み、尋ねた。

 彼女は力なく頷く。

 あまり体調は良く無さそうだ。


「まだ万全じゃないなら、明日は休んだほうがいいんじゃないか?」

「……戦勝パーティーに主役が不在じゃ、恰好が付かないだろ」


 明日は竜王スワラータの討伐、その勝利を祝うためのパーティーが開かれる予定になっている。

 ……あれを討伐したと言って良いか分からないが、少なくとも大陸に手を出さないと約束できたのだ。

 祝って良いだろう。


 なお、クルシュナは再び王子としての地位を与えられた。


 まあ、パーティー四人中三人外国人だし。

 そのうち一人は仮想敵国の司祭だし。

 

 唯一の自国民が「元王子」では恰好がつかないだろう。

 政治的な都合である。

 大人って、汚いよねぇー。

 俺もだけど。


「と、ところで……この後、予定はあるかい?」

「うん? いや……明日に備えて、夜ふかしせず、風呂に入って寝るつもりだが」


 ここ最近は国王や第一王子たちと交渉したり、各地からやってきた戦勝祝の手紙の処理に追われている。

 後先考えず、根回しせずに行動すると後が大変になる好例である。


「そうか! お風呂に入るんだね!!」


 あ、うん……。

 それがどうした?


「実は我が国は温泉が多いんだ。王宮にも天然の温泉のお風呂がある」

「あぁ……うん。知っているけど」


 入ったことあるし。

 何を分かり切ったことを急に言い出すんだ?


「せっかく、来たんだ。是非、入ってくれ!」

「そ、そうか……分かった」


 昨日も入ったけどな……。

 どうしたんだ、急に。






「……別に変ったことはないよなぁ」


 温泉はいつも通り。

 昨日と同じだった。


 気持ち良いが、普通だ。特別な要素はない。

 どうしてクルシュナは急に温泉を進めてきたのだろうか……?


 ガチャ。


 疑問に思っていると、ドアが開く音がした。

 誰かが入ってくる。


 一応、俺の貸し切りと聞いていたのだが。

 誰だろう?


 国王とか、王子たちとか?

 なるほど!


 俺と人目に付かない場所で、密会したかったんだな?

 裸の付き合いで、腹を割って話すと。


 だからクルシュナは俺に風呂に入るように勧めたのか。


 風呂で裸になって政治の話なんて外交のやり方は初めてだが……。

 聖王国では、一般的なのかもしれない。


「や、やぁ……」

「……うん?」


 しかし湯煙の奥から聞こえて来た声は、国王の物でも、第一、第二王子たちの物でもなかった。

 というか、男の声じゃない。

 聞き覚えのない、女の声だ。


 いや、聞き覚えが全くないわけではないのだ。

 この声を少し低くすれば、俺が良く知っている人物の声になる。


 きっと、こっちの声の方が本来の地声なんだろうなという気はする。

 でも、脳が理解を拒む。


 いや、嘘だろ。

 ここ、男湯だぞ。


 俺、全裸だぞ。


「ご、ご一緒していいかな……?」


 現れたのは、第三王子……否、王女クルシュナだった。

 一応、タオルで体を隠している。 

 が、しかし女性らしい体の膨らみが隠せていない。


「……ここ、男湯だけど」


 間違えたのかな?

 女湯と間違えて男湯に入るほど、アホじゃないと思うのだが。

 いや、俺が間違えて女湯に入っている可能性もあるのか?


 だとしたら、大問題だが……。


「ぼ、僕は……男の子だ! お、男の子の僕が、男湯に入って、何が悪い!!」


 クルシュナは腰に手を当て、堂々と宣言した。

 胸の先端から、鼠径部の窪みまで、全てが露わになる。


 へぇ……下はそういう感じか。


「それは無理があるだろ」

「う、うるさい! 僕は男の子……っキャ! み、見ないで!!」


 そして恥ずかしそうに体を隠した。

 どうやら全身を見せたのは想定外だったらしい。


 アホか、こいつ。


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