67「ようやくか、といった感じなのです」
性欲というものは遺伝するのだろうか、ふと私は疑問に思う。
当然私にも性欲はあるし、お姉様達にも性欲はある。とはいっても、他の人達に比べれば希薄なものなのだろう。
ネビリナお姉様は一般人程度にはあるだろうが身体が弱いのでどうも婚約者と発散出来ないみたいで、エクレールお姉様は割と奥手らしい。んで私はそういう関係を結ぶ前に逃げられてしまう星に生まれている。
トータルでの性行為に関して言えば、ラストは姉妹3人の数を余裕で上回る。まるで性欲がラストに集中しているかのように。
しかしもし性欲も遺伝するというのであれば、ラストこそがまともなのでは、と私は、どこかの小国の王女が持ってきた手紙を読みながら思うのだ。
「バルカ様、なにが書いてあるんです?」
「お父様がようやく第2王妃を迎え入れるんだと」
「ようやく……って、これまでいなかったんですの!?」
「まあ、私の母親って事はラストの母親って訳で……なあ?」
アリアンローズが驚くのも無理はない。むしろ王族だというのに妻が私の母親以外いなかったこと自体おかしかったのだ。
王族にとって一夫多妻制なんてのは当たり前のものだ。理由は様々ではあるが、確実に男児の後継者を残すために子供を量産する為だったり、貴族への忠義を深めさせる為に麗しい娘を嫁がせたり、毒や病気で死んでしまった際のスペアを作っておいたりとまあ、こんな感じだろうか。
では何故、今まで王妃が私の母一人だったのかというと――下世話な話だが、性欲が強かった。強すぎたのだ。
私が自我をはっきりさせたのが2歳の頃だから覚えていないが、姉2人曰く「かなり乱れていた」らしい。多分だけど繋がったまま移動とか食事とか当然のようにしていたのだろう。
もはやセックス依存症とも言えるくらいだったのだから、当然そんな状態では、他の女を妻に迎え入れるなんて無理な話だ。であるからに、これまで王妃は我が母1人だったのだ。
まあそもそもとして、お父様の恋愛論が平民そのまんまっていう理由もあるらしいけど。これは兵士から聞いた噂だ。
そんな訳でようやく第2王妃が現れる訳だけど……正直に言おう。
「くっそめんどくさい」
「バルカ様、その反応は娘としてどうかと思いますの……ワタクシもちょっと、分かりますけれど」
分かってくれるか、アリデレス! お前見た目は面倒くさい悪役令嬢なのに、やっぱりいい娘だな!
冷ややかな目を向けてくるアリアンローズとは大違いだ!
「私は……お父さんとか、お母さんに会いたいです……」
「そういえば、ここに来てもう3ヶ月になりますわね……これだけ長い間離れていたら、寂しくなるのも当然ですわね」
「そういうもんか?」
アリアンローズの言葉は、どうも私には理解出来ない。
昔から親離れが早かったせいだろうか。いや多分前世の親が私の趣味を完全否定してきたせいだ。だから親を邪魔者としか思えなかったんだ。そのせいかこの世界でも、正直親に対する愛情っていうのかしら、それが抜けているのよね。
「まあ、アリーシュが帰りたいってなら私は止めない。……アリデレス、私の国に興味あるなら付いていっても良いわよ。王女が許可する」
「確かに、良い機会かもしれませんわね。ワタクシもちょっと気になっていましたし」
良し、これでアリーシュへの護衛と、ついでに国際外交の伝手も手に入れたとアピールも出来る。人気あるのは良いんだけども、どうも私の同期の冒険者、かなり結婚しはじめているみたいで……それに囲まれるのは流石に、その、キツい。
であれば不参加しちゃえ、という子供らしい理由であーる。正直貴族の義務とか十分果たしたと思うのよ。植民地増やしてーの、外交してーので。
「あの、バルカ様……」
「ん、どったの」
「ここ、ここをちゃんと読んで下さい」
他国の王女に急かされたので、仕方なく手紙の1文を読んでみる。
何々……『なお、バルカ・ド・モンテクルズは絶対に出席すること。出席しなかった場合冒険者登録を抹消する』……ねぇ。
ほほう、あのクソババア……。
「ばっ、バルカ様? 表情が恐ろしいですわバルカ様!? 王女様が気絶していますわよバルカ様!!」
「……アリーシュ、バルカ様はどうしてここまで怒っておいでですの?」
「冒険者登録を人質……? に取られているせいだと思います」
なにもしてない腐れ王妃のくせに偉そうにしやがって……上等だ。私を嘗め腐ったらどうなるか、その身にきっちりと教え込んでやるわ……!
「アリーシュ、行くわよ。第2王妃候補とやらも私が寝取ってやるわ」
「ちょっ、バルカ様!? お父上を不幸にさせてどうなさるおつもりなんですの!?」
「止めるなアリアンローズ! このバルカ・ド・モンテクルズは、1度嘗められたら徹底的に痛めつけなければならないという信念がある!」
「それ貴族の信念じゃなくて不良の信念ですわ!! ああもうアリデレス、貴女からも何か言ってやってください!!」
「アリーシュさん、モンテクルズ国の料理って美味しいんですの?」
「はい、それはもう! バルカ様が2番目に力を入れたのは料理と言っても過言ではありませんから!」
「アリデレスさんなに呑気なこと言っているんですの!? 止めなさいな! 蛮行を止めなさいな!!」
「1度寝取られを経験するのも大切なことだと思いますわ、ワタクシ」
「駄目ですわこいつ不幸を増やしたがるタイプの人間ですわ……」
ふっふっふっ、待っていろよクソババア!! 私の右腕が火を噴くぜ!!
……後、ちょっとダイエットがてら手軽なクエストクリアさせなきゃな。畜生私のお腹の馬鹿野郎。




