68「まさに修羅の国、なのですわ」
船で2ヶ月、馬車で2日。随分長い移動時間を経てわたくし達6人は、バルカ様の故郷であるモンテクルズ大陸の、王都モンテクルズへとやって来ました。
ドラゴンが人を乗せて空を飛び、海辺で見かけた魔物はどれも超危険生物ばかり……修羅の国、という言葉がこれ以上にぴったりな土地は無いと断言出来るくらいには、恐ろしい土地。
オーラス大陸しか知らないわたくしにとっては驚異であり、恐怖であり、そして同時に面白そう、と純粋ながらに思いました。
「ワタクシ、冒険者というものをやってみたいですわ! バルカ様、やってみたいですわ!!」
「落ち着きなさいアリデレスさん、冒険者ギルドは逃げないわよ」
「久しぶりに男娼行ってくるねお姉様!」
「毛虫が……いっぱい……」
……もう少し落ち着きのあるメンバーであれば、もっと楽しかったでしょうが。
「取りあえず私とラストは城んとこに顔出しに行くから、その間4人で適当に回っておいてくれる?」
「ええ、構いませんわ」
そう言ってラスト様の襟首を掴み、お城の方へ行ってしまわれました。ラスト様が「ボクのおちんぽ~……」と悲しそうに言っていましたが、正直彼は淑女としての嗜みをもう少し身につけるべきだと……そういえば男でしたわね、彼。
「絶対! 絶対冒険者ギルドに行かせてくださいましよバルカ様!! 冒険者ならイケメンも……グフフ」
「了解、私は私を探す」
「アヘン、それは通じづらいと思いますわ」
「……アヘンジョーク」
アヘンのギャグは大体ブラックジョークですわね……。
正直、わたくしにはたまに分からない時があります。今回のは簡単でしたわ。
「で、どうする。今日はなにする」
「そうですねぇ……アリアンローズ様、どこか行きたいところあります?」
「冒険者ギルドは……どうせならそこそこ上のところからやりたいですから、アリアンローズさん、今日は好きに決めてよろしくてよ」
ものすっごい無茶ぶりが来ましたわ。
そもそもわたくし、全く土地勘なんてものありませんのに……アリーシュが案内した方が確実だと思いますのだけれど……。
いえ、何でしょうこの妙な不安は。アリーシュに案内させたら、確実に厄介ごとに巻き込まれそうな気がしてきましたわ。
「そういえば、アリーシュはご両親と会わなくても大丈夫なの?」
「はい。どうも今日は忙しそうだったので、邪魔にならないように外で待っておこうと思います!」
「あら、アリーシュさんのお家って何のお仕事をされておりますの?」
「頭絡とか、鞍とか、竜具を作っています!」
「竜具……? 何ですのそれ?」
名前からして馬具のドラゴン版、みたいなもの……? オーラス大陸にはまずドラゴン自体が少ないから、どのようなものか想像出来ませんわね。
でも何となくですが、このモンテクルズではかなり重要な道具だとは容易に予想出来ますわ。
何せ、他の国に伝わっていないということはつまり、軍事機密に関わる道具とも考えられますから……いえ、その割にはアリーシュ、結構あっさり言いましたわね。
「アリアンローズさん、1人で納得していないでワタクシにも分かるように説明してくださいまし!」
「馬具みたいなものですわ、きっと」
「大体そんな感じですね」
「なるほど……?」
しかし、そんな道具で竜を操るなんて、本当に出来るのでしょうか? わたくしにはどうも想像出来ないといいますか、したくはありませんわね。
竜といえば絶対的強者、圧倒的な暴力であらゆるものをなぎ倒す存在。神にすら牙を向ける恐ろしい存在。それがわたくしにとっての竜のイメージですわ。
それが人間の道具で使役されるのはどうも……イメージ崩壊という感じですわね。
……あら?
「そうだ! バルカ様が9歳の頃に退治したドラゴンの顔が飾ってあるところがあるんですけど、見に行きませんか?」
9歳の時にドラゴン退治って、バルカ様はいったいどんな幼少期を過ごしたと言うんですの!?
いえ、昔から強かったと考えれば、あのバルカ様の実力も納得出来ますが……。というか、飾っておりますのね、生首を。剥製にしたのかしら?
「それはちょっと気になりますわね、ワタクシ、ドラゴンというものを見たことがありませんの。アリーシュ、連れて行ってくださる?」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいまし」
私の言葉に、アリーシュとアリデレスさんの2人が首を傾げる。
……なんでこの2人は気付いていないんですの? いえ、いなくなるまで気付かなかったわたくしもわたくしですが。
「アヘン、何所へ行きましたの?」
「へっ? あっ、本当だいなくなってる……」
「きっと何所か買い食いしに行ったんですわ」
気のせいかしら、アリデレスさんの知能、前より落ちているような……。




