36「まさかの同じクラスだったのです」
席もほぼ全員埋まっている状態の教室、私も前の席に座っているアリーシュをガシガシ撫でながら時間を潰している。ケツァルコルトニー? なんかギター鳴らしてるわ。
ラスト? ほかの男誘惑してるわね。姫サーってやつかしら? 女じゃないけど。サークルでもないけど。
「おっ、おはっ、おはようございます……」
始業五分前に恐々と扉を開けて、きょろきょろと辺りを警戒しながら入ってきたのは、まさかのアヘンである。まさかの、アヘンである。
……まさか、毎年1年生を留年してるのこの子!? 逆に凄いわね……いや、阿片買えるんだからお金は持っているか。
でもメンタル凄いわね!?
おどおどしながらアヘンは、私の方に小走りに走り寄ってきた。
「ばっ、バルカさん。おはようございます」
「おはよう、アヘン」
私が挨拶を返すと、花が咲いたように笑顔になるアヘン。何かしらこの子あざとい。保護欲が掻き立てられるわね。
アリーシュがぴょんと顔を上げ、アヘンの顔をじーっと見る。アヘンは先ほどの笑顔はどこへやら、おどおどと顔を青くしながら、視線で私に助けを求めてきた。
「アヘン……さん?」
「ひゃっ、はいっ!?」
「おはようございます!」
「へっ……あっ、おっ、おはようございます」
「顔色悪そうですけど、大丈夫ですか?」
「あっ、だっ大丈夫です……すみません」
あらすんごい天使。正直アヘン、長袖着てるけど手も首も傷だらけで、所見だと怖いわよね。
……ああそうか、私で慣れてるのか。私も傷だらけだもんね、傷物だもんね。処女なのに。
「そういうときは『ありがとう』って言うんですよ、アヘンさん」
「あっ、ありがとう……ございます」
「どういたしまして♪」
天使かな?
いや、本当凄いわねこの子。ルームメイトである私が言うのもあれだけど、あれにああいう笑顔向けられるってすごい才能よね。
へっ、私も十分怖いって? いや、女受けはいいから……良くてどうするんだって話だけど。
そう思っているとアリーシュ、突然アヘンの手を握った。びっくりして目を丸くするアヘン、そんな彼女に笑顔でアリーシュが一言。
「アヘンさん、今日学校来るの初めてですよね? 席、案内しますね♪」
「あっ、すみま━━ありがとう、ございます」
天使ね。
「……うん、いいよ。ならサボっちゃおっか」
「やりい」
「出さないまま?」
「勿論」
おいこらそこの小悪魔、男子生徒に悪魔の実を食べさせようとしてるんじゃあない。




