35「視線を感じるのです」
ケツァルコルトニーのあまりに馬鹿すぎる行動に私が唖然としていると、彼の背後から私を見る視線が━━昨日から何なのかしら、これは。
敵意や殺意とは違うわよね……というか、ここ三階なんだけど。勿論木もここまで生えていないし、天井? 無駄に大理石よここ。どう加工したんだこれ。
「ん? どうしたんだい姫様? ……飲むかい?」
「飲まないわよ」
というかどこからでも出すわね石油を。あと不味いんだから飲もうとしない! 絶対それ体に悪いから!
「いえ、ただ視線を感じてね……」
「視線? ストーカーかい?」
「まさか、それは無いでしょ流石に」
私をストーキングするなんて、そんな奇特で蛮勇で命知らずな奴なんて……あれ、私の自己評価、物騒すぎ?
いや、まあ母国でもストーキングとかあったし……主にジョイク教狂信者と戦闘狂に。あと弟子入り志願。志願理由? 彼女を守りたいとかが多かったわね。あら、なんだか涙が……。
「まあ姫さんをストーキングするような男はいないわな」
「不敬罪で処罰するぞ貴様、いや実際そうなんだけど」
女からはよくストーキングされたのよね私。告白もされたわ。男らしさに惚れました! ってね。ええ、婚約破棄してきて私に告白してきたのが多かったわね。
……あれはあれで心が折れそうだったわね。嫉妬の視線がキツくて、そして決闘挑まれても楽に勝っちゃうし私。おかげでついたあだ名が『婚約破壊鬼』って……せめて姫って入れなさいよって思ったわ。
えっ、そういう問題じゃない? そういう問題と思わなきゃやってられなかったのよ殴るわよ。
「あっ、お姉さま~……あれ、その人は誰?」
「あらラストおはよう、こっちの方は━━」
私のアイコンタクトにケツァルコルトニーはうんと頷くと、どんと右手の握り拳で自分の胸を叩き、
「俺ァお節介焼きのケツァルコルトニー!」
「かっ、変わった人だね。ボクはラスト、よろしく」
うんうん、性欲の絡まない純粋な友情ね。ラスト、いきなり誘惑とかしなくて本当によかったわ。ラストがなぜかケツァツコルトニーの隣を見ているけど。
えっ、なんでラスト顔逸らしたの? なんでうつむいて笑っているの? ちょっ、何が起こっているの!?
「こいつは俺の精霊だ、結構愉快な奴だろう?」
「うっ……うん、そうだっ……クッ、プププッ」
精霊、見れるようになりたいわねぇ。あっ、もしかして視線の正体ってこれかしら。




