長堀の一撃!
車が停車するとジムさんが振り返った。その視線の先は若原さん。リチャードさんも、振り返って三人で頷きあった。
「降りたらいいんですよね?」
三人の緊張した雰囲気に違和感を覚えながら、俺はそう言って、ドアの取っ手に手をかけた。
「気を付けてね」
いつもとは違う真剣な表情で、若原さんが言った。俺はドアを開けて、外に出た。雨が俺の頭の上から降り注ぐ。俺は外で優奈が出てくるのを待った。
優奈が出てくると、手を取って雨の中、駆け出して病院の正面入り口を目指しはじめた。道にできた水たまりに足を踏み入れるたびに、ぴちゃびちゃと音を立てた。
「あれだ!
あの女にお前たちの手で、神の裁きを加えてやれ!
男の子には手を出すな」
そんな声が雨音に混じって聞こえてきた。聞き覚えのある声。飯田の声だ。
なぜ、ここにいる?
よく見ると、あの教団の白服姿の者もかなり混じっている。
「おぉ!」
そう思った時に、信者たちから喊声が上がり、俺たちに向かって走り出してきた。俺は立ち止まり、辺りを見渡した。逃げる場所も何もない。立ち向かうにしても、人数が多すぎる。ただ、救いは俺には手を出すなと飯田が言った事だ。
俺は優奈をフェンスの所まで連れて行くと、俺の背後に回して、手を広げて優奈を守ろうとした。俺の服の背中の部分を握りしめている優奈の拳から、震えているのが伝わってくる。俺たちを取り囲む男たちの背後で声がした。
「どきなさい」
その声にも聞き覚えがあった。長堀の声だ。長堀のために、男たちの壁が割れた。その空間を通って、長堀がやって来た。
「その子を大人しく、渡してくれないかしら」
俺たちの味方のはずだ。この状況なので芝居をしているはずだが、俺はどんな反応をすればいいのか分からない。長堀は目の前までやって来て、立ち止まった。
「二人して、私に付いてきなさい」
俺は頷くと、優奈の手を取って、長堀の後を追った。長堀のために空けられた空間。その両横には、俺たちを、いや正確には優奈を睨み付ける男たちの壁ができていた。
男たちの壁を抜け、飯田が立っている場所を目指して歩き始めると、俺たちを取り囲んでいた男たちが、後について歩き始めてきた。
「そこで、待っていなさい」
長堀が振り返って男たちに言った。男たちはその言葉に立ち止まり、雨の中じっと俺たちを見つめている。飯田に近づいて行くと、その表情が不機嫌そうな事に気付いた。
「どうして、連れて来たんだ。早く、その子に神の裁きを」
そう言った瞬間、長堀がダッシュして、飯田に向かって行った。
何だ?
そう思った瞬間には、飯田は膝を折って崩れ落ち、地面に横たわった。
長堀は一撃で飯田を倒していた。




