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CIA?

 俺はその日、教団本部の中にいた。今日は表向きは長堀にではなく、豊島に呼び出されてだった。8畳ほどの部屋の真ん中にガラスの応接テーブルが置かれ、それを挟んで豊島と向き合っている。


 「なぁ、高橋君。

 さっきの話だが、どう思う」


 豊島は長堀たちの組織の者に裏からたき付けられているとも知らず、教団を破滅に追いやる計画を俺に持ちかけてきていた。理由は簡単だ。この前の富士の計画を持ち出したのは豊島。そこをやくざ者に待ち伏せされ、襲撃された。計画が無くなっただけでなく、飯田の命にかかわる危機を招いた事で、教団の中で立場が悪くなっていた。それを挽回しようと焦る心を揺さぶる壮大な計画。

 国家転覆計画。


 「そうですね。

 いいんじゃないですか。

 今の政府なんか、国民の事考えていなさそうだし、飯田さんがこの国のトップになられると言うのは素晴らしい事だと思います」


 俺は心にもない事を言った。俺の言葉で、またこの人も命が危うくなるかも知れないと言うのに。


 「じゃあ、これから尊師にそれを奏上する。付き合ってくれないか」

 「ええ。いいですよ」


 俺が快諾すると、豊島は嬉しそうな顔をして、立ち上がった。豊島が部屋のドアを開けると、この本部の事務所で働く人たちの姿が目に飛び込んできた。

 長堀が俺の方に目を向けたのが分かった。長堀は目の前の電話に手をかけて、電話をかけ始めた。俺の目の前の豊島は近くの女性信者を手招きして呼び寄せた。


 「尊師に今後の教団の為すべきことに関し、提案があるので、話をする時間をくれるよう話を通してくれ」

 「承知しました。スケジュールを確認します」


 そう言うと、その女性は机に戻って、パソコンのキーボードを叩き始めた。パソコンの画面に映し出されたスケジュール表。すでに夜と言う事も手伝って、飯田の予定は何も入っていない。


 「空いておりますので、予定入れさせていただきます」


 そう言った後、女性は電話を手にした。飯田に電話をかけているのだろう。しかしだ。俺は知っている。長堀が先にかけている。


 「話中ですね。

 連絡がつきましたら、お伝えします」

 「分かった」


 豊島がそう言って、俺をちらりと見て、片隅にあるソファを指さした。そこに座って待っていろ。そう言う意味だと受け取った俺は、ソファに向かい、腰を下ろした。豊島は自分の机に向かったので、一人でソファに腰掛けて、辺りを見渡す。真っ白なこの教団の装束に身を包んだ人たちばかり。その異様さにため息をつき、うなだれた。


 「優奈ちゃん」


 俺の口からその名前が出た。二人の仲がこのまま終わってしまいそうな予感がもたげてくる。

 俺は今日、この作戦のため、部活をずる休みした。校門を出た時、優奈がスマホを手に、知らない若い男と楽しそうに話をしていた。あれは警護の者なんかじゃない。


 「あの日は野球部の試合を見に行ってたんです。

 そうそう、そしたら、赤いスカーフの」


 誰だ、あいつは。何の話をしていたんだ。

 赤いスカーフって、俺たちの学年の女の子の事か?

 俺はあの日の事を思い浮かべていた。優奈に俺が告った。なのに、優奈は訳の分からない事を言っていた。岩下に襲われたのはその後だ。

 優奈との関係がこじれ気味な事に、苛立ってきた俺は激しく足をゆすり始めていた。そんな時、飯田が部屋に入ってきた。

 豊島はすくっと立ち上がり、飯田の所に駆け寄ろうとした。さっきの女性も飯田に近寄って行く。


 「尊師、豊島さんがお時間をいただきたいと」

 「尊師。教団の為すべき事で提案があります」

 「ごめん。もうちょっと、待って」

 飯田がそう言って、長堀のところに向かって行く。豊島はがっかりした表情で、自分の席に戻って行く。飯田に気付かれれば、鬱陶しい。背中を向けている今がチャンスである。俺はソファから立ち上がると、こそこそとさっき飯田が入ってきたドアを目指す。豊島は不安そうな表情で、長堀と話をしている飯田を見つめている。

 俺はそのまま姿を消す。これで作戦は終わりだ。

 その後の事は、長堀から連絡があった。

 豊島は飯田に話があると言った以上、引っ込みがつかず、政府転覆の話を持ち出したらしかった。本気の国を相手に勝ち目は無く、それは教団を滅ぼす愚策だと長堀だけでなく、鍵山にも言われ、完全に教団内での力を失ったらしかた。

 それと、もう一つ、その話の途中に、突然飯田が、「CIAめ!」と叫んで立ち上がったらしかった。そんな自分自身を失った飯田の右頬を鍵山が平手打ちして、怒鳴り散らして、その場を収めたらしかった。

 CIAもこの力を探っているって事なんだろうが、飯田が言った言葉の意味は何なんだ?

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