優奈を使って、テストですか!!
俺が入り口に立ったまま呆けていると、優奈のお兄ちゃんが言った。
「今日の事を知りたいのか?
誰に聞いた。俺が家にいるって」
「はい。長堀さんに聞きました」
「困ったもんだな。そんな事を言うとは」
優奈のお兄ちゃんは呆れ顔で、そう言いながら、机の上の装置を触り始めた。
机のど真ん中にあるモニター。そこにどこかの映像が映り始めた。
「映像を見せてやるよ。
こっちに来い」
俺はその言葉に優奈のお兄ちゃんのすぐ背後まで近寄った。モニターの中の映像はどこかの道路のようである。何台かの車が通り過ぎて行く。その先には一台のワンボックスカーが停車していて、さらにその先には信号があって、大きな道路に交差している。
二車線幅だが映る車は全て、右側から左に流れて行く。その二車線幅の向こうにも植栽の中央分離帯で隔てられた道路があって、そこの車は左から右に流れている。
「東名の出口だ」
優奈のお兄ちゃんがそう言って、ワンボックスカーを指さした。
「これに神龍興業の生き残りが乗っている」
まじっすか?
警察がやくざを利用しているって事ですか?
いや、この人の本職は警察じゃなかったっけ。
そんな事を思っていると、映像の右端に黒い車が映った。
それに合わせて、停車していたワンボックスカーが動き始めた。
黒い車がその先の交差点に出るのを塞ぐようにワンボックスカーが停車したかと思うと、後部座席の窓が開き、鈍く黒光りする銃口が突き出された。
俺が目を見開いている内に、銃口が火を噴いた。
放たれた銃弾が黒い車の窓や車体に命中し、甲高い音を立てるのが、スピーカーから聞こえている。
黒い車は進路を塞がれたため、一度後退した。
ワンボックスカーからの銃撃は執拗にその黒い車を襲い続けているらしく、甲高い音が聞こえ続けている。黒い車のボディにもガラスにも銃痕が見て取れる。全体的に防弾仕様なのか、銃痕を浮かびあがらせながらも、ガラスは砕け散るのを必死に耐えている。
やがて、黒い車は急加速して、ワンボックスカーの前部に突撃し、封鎖を突破すると、その先でUターンして、反対側の車線に移動して、映像の中を左側から右側に消え去って行った。
「これが全てだ」
優奈のお兄ちゃんはそう言って、モニターの電源を切った。
「つまり、神の結界が無いって事ですね」
「それだけではない。
あんな目に遭わせられたのに、何の報復もしないで逃げ帰った。
つまり、あの力は使えなかったことになる。
この場所とあの力は密接な関係がある。あの力の源はこの地にあるに違いない」
その言葉に俺はちょっといらっとした。
「で、今度は優奈ちゃんを使って、この場所でまた別のテストをするんですか?」
ちょっと感情が出てしまった俺の言葉は少しきつい口調だった。優奈のお兄ちゃんが、何か文句でもあるのかと言う視線で、黙ったまま俺を見ている。
「妹が大切じゃないんですか?
そこまでして、あの力が欲しいんですか!」
俺の感情はさらにたかぶって、大げさに腕を振り、わめくように言った。
「お前は何も分かっていない。
俺はあの力を手に入れたいんじゃない。
一つだけ、言っておく。
俺は優奈を守りたいんだ。そのためには、あの力の正体を掴まなければならない。
そう言う事だ」
俺は納得なんかできやしない。実際、意味分かんねぇし。俺は優奈のお兄ちゃんを睨み付けたまま、立っていた。




